[メノトレ♀]傘の下のノスタルジア 放課後。トレーナー室へ向かう途中の廊下で、フェノーメノは開いたままのビニール傘が中庭に落ちているのを見た。
その日は朝から風が強かったから、どこからか飛ばされてきたのだろうと初めはたいして気に留めなかった。しかし視界の端のそれがふいにのそりと動いた気がして、よくよく注視するとビニール傘の中にしゃがみ込んだ人の背中が見えてぎょっと目をむいた。
なぜあんな場所に──という疑問に対する答えを、フェノーメノは持っていなかった。だって空からは今も細かな雨が降り続いていて、庭仕事をするには不都合でしかない。あるいは探し物をしているのかとも思ったが、それにしてはその背中はじっとして視線をさまよわせる気配すらなかった。
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