メノトレ♀「ボス 遅くなってしまい申し訳ありません」
慌ただしいノックのあと返事も待たずに開いたトレーナー室のドアの向こうには、マグカップを手にしたまま目を丸めて固まるトレーナーの姿があった。
しまったと思った次には、居住まいを正し「失礼しました!」と頭を下げる。
謝意を表す最敬礼で床を見つめて、ものの数秒。くすくすいう笑い声の中に「そんなに気にしないで」という言葉を聞いて、フェノーメノはおずおずと顔を上げた。
「し、しかし……いくら急いでいたとはいえ、いきなりドアを開けてしまうなんて」
「いいの。足音が聞こえていたから、なんとなく予想はついていたし。たしかにノックが聞こえてすぐにドアが開いたのには驚いたけど、そんな大げさに謝ってもらうほどのことじゃないから」
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