いつか出せたらいいなジンピン心中話の導入愛と情熱の国、ブラジル。
リオデジャネイロで開催されるカーニバルは世界最大の見せ物のひとつとして愛され、無礼講のもとに行われる祝祭を人々は自由気ままに楽しんでいた。カーニバルが無くとも、日頃から街には陽気な音楽が響き渡り、強い自然光をスポットライトにダンスを踊る人々や、客を呼び寄せる店主の張り上げた声に包まれ、活気に満ち溢れていた。
都市だけでなく、のどかな田舎もそれは同じだった。広大な土地を利用して行われる放牧飼育の牛の鳴き声が自然の音と合わさり、音楽として奏でられていた。
そんな明るい街を少し進むと、陽気な雰囲気は一変する。
違法住居が隙間無く立ち並ぶスラム街、通称ファヴェーラ。
ブラジル全土に点在する愛も情熱も無縁なその場所から抜け出すことは容易ではない。ファヴェラドスと呼ばれる住人達は差別や偏見の目を向けられながら見えない檻に捕らわれ続けなければならなかった。捕らわれている感覚もないまま十分な食事を与えられ清潔な環境で飼育されている分、家畜の方が幸せなのではないかと誰もが考えていた。
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