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    いとう

    @itou_pr

    フォガパンを書きます、書きました。

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    いとう

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    欲しがるだけではダメだと思ったので次回出す本のちゅっちゅしてるだけのやつ上げます

    #邪フォ本パン

    ワンカップ酒まだ上手く身体の動かない俺に無理せず家にいるよう告げ、彼は扉の外に出て行った。こんな寒冷地に放り込まれた俺にとってここは限りなく平穏で優しい空間だった。ベッドから身体を起こしながら周囲を見渡しても使い古されたストーブ、色濃くなっているテーブル、金属の剥げた簡素な台所、道具を手入れするため薬剤の並ぶ机。ただそれだけしか無かった。せめて掃除でもできれば良かったのだがそんなものの必要のないほど全ては片付いていた。おぼつかない足取りで少しだけ歩くと、古びた布に隠されるようにして埃を被った小さな本棚を見つけた。タイトルは様々で野生の狩猟、解体、薬剤製造、そんなものばかりの中ひとつ目を引くものがあった。赤の鳥と黒の鳥の鳴き声と地獄。
    地獄、とその言葉を口にして繰り返した。
    あの日俺から髪留めを奪った赤い鳥は確かに鳴いた。嫌な予感がしながらもその埃まみれの本へと手を伸ばしかける。
    途端扉が鈍い音を立てながら開く音がして全身が強ばった。
    「今日はすぐ取れたよ」
    明るい声音がするがその場から動けず、どうしたらオレがこの本を手にしようとしたと隠しとおせるかで頭がいっぱいだった。もし必要なことであればきっと話してくれた。だが、ここに来てから彼は一度たりとて鳥についての話はしなかった。
    背後に近づく足音を感じはぁはぁと呼吸を荒らげると優しくその本を手の中から剥がされた。
    「その本は、ある日頭がおかしくなった人間が書いたものだよ。読む価値はない」
    何も言葉にできなかった。このしらけた小屋の王は目の前で陽気な雰囲気を持ちただ微笑む男だった。

    それまで破れたソファーの上でフォガートは器用に寝ていた。そして今日始めて、オレを背後から抱き締めるようにして寝ている。オレがある程度体力を取り戻したので共寝くらい大丈夫だと思ったのかもしれない。そもそも家主にソファーで寝させるなど失礼なことをしてしまった。変なことを考えすぎているのかもしれないと自身を律した。突然手が時折身体の表面をまさぐるようにして動かされる。手のひらが腹の上にやってきたと思えばそのままなので寝ぼけているだけかとほっとしていると、薬指と小指が下生え近くにまでに触れ気づかれぬよう揺れる吐息を吐き出す。陰茎の根元だけを優しく撫でられ続ける時間が長すぎてもういっそ乱暴に全て暴いて欲しくて理性と欲望の間を揺れ続けては微かに震えた。だというのに理性は明らかに反応してしまっている自身を知られたくなかった。
    「ひとと一緒に寝れるなんて夢みたい」
    「え……?」
    呟かれた言葉に声だけで反応するとさらに身体にまわされた力が強くなる。
    「ひとりだったから……」
    ぎゅうと身体を抱き締められ耳元に囁かれ。不安、それが彼の中を覆っていることが理解できた。筋肉質な腕に手を這わせてはさらに力がこもるのを感じる。
    「オレだって……お前に拾ってもらえなかったら死んでた」
    「それは、君の命は俺のものでもあるってこと? 」
    そう問われると現在の姿勢に微かに迷ったが、命を救ってくれた相手に感謝をするのは当然だと思えた。
    「そうかも、しれない」
    「そっか」
    微かな沈黙は苦しくはないが次に何が起きるのか分からなくて怖かった。不意に首筋に息がかけられ肩を揺らした。
    「だったらキスしていいよね?」
    「え、それは……」
    もしかしたらキスは彼にとってたいしたものではないのかもしれないし、からかっているのかもしれない。そもそも、キスをオレと彼がすることを神は罰するだろうか?なぜ?ぐるぐると頭の中を疑問が回り続ける。静かにくちびるが動いた。
    「嫌なら拒否して」
    柔らかなくちびるが落とされ、オレは初めてキスというものをした。ロマンチックな妄想を広げてきたが、実際には他人の温度を教えこまされる行為だった。幾度も角度を変えながら合わせられ固まっていると、ふいにその舌先がくちびるの間に差し入れられて、開くことを求められているのだと察した。
    「舌、入れたい」
    「なんでそんな」
    言葉にした直後に入り込んできた舌は生ぬるくて人の体温をしていて、唾液でぬめっていて動けないオレの舌を根元から丁寧に撫で上げてくる。絡め取られながら熱い腕が背中に回され思わずその首筋へと手を回した。舌の先端だけを細かに撫でられ声を上げたいのにどこにも隙間が無い。
    「んんっ……んっ……」
    くぐもった声を上げるとその舌がより強く絡め取ってくる。舌のざらざらとしてした表面と裏側の滑らかな感覚を自らの舌で教え込まされる。こんな生々しいまじわいだなんて考えてもいなかった。雪の中から救ってくれて温かいスープを与えてくれて。そんな男と今深く深くくちづけあっている。訳が分からない。
    腕が動いてくちびるがようやく解放されたが身体に上手く力が入らない。ぜぇぜぇと呼吸を繰り返す間に不意に落ちてしまった涙を指先で優しく拭われる。救いを求めて見上げたフォガートは、不規則に息を荒げまるで獲物でも見る肉食獣の空気をまとっていた。このままでは頭から食われるのではないかと怯え微かに震えると、それを察したのかこちらに背中を向け横になった。
    「乱暴にしてごめんね、寝るよ」
    その背を見つめながら上手く眠れなくて、舌を伸ばしては己の親指と人差し指で挟んでみた。この行為の前と後で何か変わってしまった気がした。
    結局彼が寝息を立てている間にひっそりと勃起しかけた己のものを無視してなんとか寝ようと努力した。己の臆病さになんだか泣きそうになった。
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