サボテンの花順番に時計回りに一人一人名乗っていく。そこに偽名しかないことは全員分かっていてあえてそうしてる。
「おう、暗いの。お前はなんてぇんだ」
幾つか年上であろう男は言葉にする。俺は返した。
ミルクボム、と。
砂漠で生まれ育ち、辺境の貧しい里では食べていくことも大変だった。両親を手伝い必死に生きていたが、ある日母は言った。
「お前の売り先が決まった」
淡白な振りを装っているくせにひどく顔は歪んでいた。
翌日には出発するとのことで、弟妹たちと窮屈な寝床の中静かに一人ずつ心の中でだけ別れの言葉を告げた。
早朝に働く馬に引かれ他の里の少年たちとともに運ばれる。呆然とするものと、未だ泣くもの、それとオレ。平等に劣悪な環境の中運ばれていった。
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