愛の鎖ミーンミンミンミン……
あの夏の日、幼い私は父と母、そして大好きな兄と一緒に旅行に訪れていた。
海水浴場もある旅行先で、旅行前に母と選んだ花柄のワンピースの水着に着替えて海辺へ辿り着くと、一足早く着替えていた父と兄が待っていた。シロクマが描かれた浮輪を持った兄がこちらに手を差し出してくる。
海を背に立つ兄を見て私はどういうわけか、これ以上海に近づきたくなくて、兄を海に近づけたくなくて、ここへ来て帰ろうと駄々を捏ねた。父も母も、勿論兄もそんな私に困惑し、きっと海怖がっているとで思ったのだろう。三人揃って、私が怖がらないようにいろいろ声を掛けてくれた。それでも、私はどうしてもここから離れたくて、一刻も早く兄ここから遠ざけたくて、思わず小さな足で駆け出した。私を説得する為にしゃがんでいた両親は咄嗟に手を伸ばすが届かなくて、私は簡単に海の反対側の山へと足を踏み入れた。後ろからは必死に私の名前を呼ぶ両親と兄の声が聞こえていたが、私は決して足を止めなかった。
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