【神王本編】金色の瞳を持つ意地悪な神様が王子と出会って愛を知るまでの話とある寂れた城で暮らすレギ王子は、思慮深く芯のある少年ですが、内気さも併せ持っています。そんなレギ王子の元に、突然やってきた神様で意地悪なユウがいます。神様である意地悪なユウは、「愛」についてはどういうものかよく分かりません。人間の感情を面白がりつつ、人をからかうように話します。意地悪なユウの服は黒ずくめで、瞳は金色に輝いています。
錆びついた重い城門の前で、レギ王子は「お前は誰なんだ?」と、突然の意地悪なユウの来訪に困惑します。意地悪なユウは、「なんだか面白そうだから、お前と友達になろうと思ってな」と、からかうように答えます。そして意地悪なユウは、その日からレギ王子を茶化したり、皮肉を言ったり、楽しそうに同じ時間を過ごしていきます。意地悪なユウは、内心ではレギ王子との再会をとても楽しみにしていました。
意地悪なユウには、レギ王子に隠していた事情があります。昔、若かった意地悪なユウは、レギ王子の父を、民を苦しませた神罰として、命を奪いにきていました。城の片隅で、たまたま幼いレギに出くわし、幼いレギは、自分の父が若い意地悪なユウに命を狙われているとは知らず、無邪気に、彼の金色の瞳を気に入り、かっこいいと褒め、親しくなりたいと懇願します。王子という立場上友人がおらず寂しかった幼いレギは、「大好きだよ。俺と友達になろう」と、若い意地悪なユウに抱きつきます。その幼いレギの無邪気な笑顔と、純粋な信頼に、若い意地悪なユウはただ戸惑います。小さく「わかった」と返し、一緒に遊びます。それは僅かな数日間でしたが、若い意地悪なユウは、一緒に遊んでいるうちに小さな彼との約束を守りたいと、考えるようになります。
一緒に遊んだ最後の晩、幼いレギは父の死とその原因を知り、若い意地悪なユウは胸を痛めます。「レギ、ごめんな」と言いながら、神のルールに従って、幼いレギの記憶から自分の存在を忘れさせます。若い意地悪なユウは、幼いレギとした約束のことが、胸に残ります。そして、その誰かとの再会の約束だけは、レギ王子の心にも希望として灯ります。ただし、その希望のせいで、意地悪なユウは神々の偉い存在から、本来なら早くに絶望のあまり死んでしまうはずだったレギ王子が、まだ生きているとして責任を問われ、殺すように命じられてしまいました。
意地悪なユウは、レギ王子を殺さなければいけない立場ですが、彼への懐かしさもあり、もうしばらくレギ王子と一緒に城での生活を共にしていきます。意地悪なユウは、成長し日々読書などで公務を覚えようと努力しているレギ王子の傍ら、その公務を手伝うこともあり、頭の回転が速い意地悪なユウは、レギ王子へ適切なアドバイスをしてくれることもあります。またある時は、レギ王子の様々な悩みに、「そんなことまで考えるのか」と面白そうに耳を傾けることもあります。レギ王子の横顔が、遊びに夢中になっていた幼いレギの面影と重なり、静かに胸を痛める日もあります。意地悪なユウは、そんなレギ王子と過ごす日々の中で、彼の持つ内面に触れてゆき、その芯の強さや考え方に惹かれていきます。
数か月経たある日、意地悪なユウはレギ王子を探し、城の一角で、懐かしい見覚えのある小さな庭を見つけます。そこは、自分が幼いレギと過ごした思い出の場所でした。そこにレギ王子は眠っており、夢から覚めたレギ王子は、ここは誰かと約束した思い出の場所だと、意地悪なユウに伝えます。「また会いたいんだ」と零すレギ王子の言葉に、意地悪なユウは約束が息づいていたことに、強い喜びを感じます。意地悪なユウは、「もう会えてるかもな」と優しく目を細めて、レギ王子に応えます。レギ王子は、彼の金色の瞳をゆっくり見つめ、それにずっと感じていた懐かしさの正体を理解します。
それから、亡き父や民を想うレギ王子が涙する度に、意地悪なユウは何も言わず、ただ傍に寄り添います。レギ王子の方も、意地悪なユウの姿を探しては隣に寄り添うようになります。
レギ王子は、意地悪なユウの存在に強く救われ、日々自分を助け、からかいながらも優しく見守ってくれる彼の金色の瞳に惹かれるようになります。やがて、レギ王子は意地悪なユウと共に生きていきたいと願うようになります。
そして意地悪なユウも、レギ王子への想いを深めながらも、殺さなければいけない使命の重圧に、毎晩苦しむようになります。
意地悪なユウとレギ王子が両想いとなってからは、食事はレギ王子の部屋で、二人きりでとるのが習慣になっています。真面目でおちゃめな騎士のシエルは、「レギ王子!今日も僕と仲良くお食事ですよ!!」と、レギ王子と食事をするために、勢いよく乱入します。いつものようにレギ王子の隣に陣取ったシエルは、スプーンで食べ物をすくっては「どうぞ…レギ王子、おくちあーん」と言って、何度もレギ王子に差し出します。レギ王子はいつものことなので、「わかった」とそれに応えます。レギ王子が食べ終わると、シエルは「幸せそうに食べるレギ王子大好きです!!」と暴れます。意地悪なユウは、げんなりしながら「今日もシエル母ちゃんがいるな…」と、シエルを茶化すものの、ほぼ毎日の光景なので、いい加減レギ王子と二人だけの食事を過ごしたいと思っています。
シエルは、城の前でお腹をすかしていたところをレギ王子に助けてもらってから、心から惚れ込んでおり、いつも「レギ王子と永遠に一緒です…」とくっついています。シエルは、突然現れた意地悪なユウが、レギ王子と一緒にいるのを面白く思っていません。勝手に居候しておいて、城の主であるレギ王子へ感謝をする様子もないからです。なので、常に邪魔しようとしています。意地悪なユウの方も、表面上はシエルの行動を面白がってはいますが、レギ王子との時間を邪魔されているので内心は面白くありません。レギ王子は、騎士のシエルとは旧知の仲で、心から信頼できる相手です。
そんなレギ王子本命のシエルは、城のてっぺんでたそがれています。レギ王子がここしばらく、これからの未来のことを進んで話さない様子が気になっています。意地悪なユウとの将来について尋ねた時に、レギ王子が「ユウは、悩みがあるらしい」と、寂しそうな表情を見せたのが頭から忘れられません。シエルは、将来が描けず不安定になっているレギ王子を放置する男に、真摯さを感じられません。焦りの気持ちがぐるぐると沸き立ち、全身が震えます。レギ王子の幸せのために自分がちゃんと聞かなければいけないと、強く決意を固めます。
そしてある晩、シエルは意地悪なユウのところへ来て、「ユウさん、レギ王子との将来を考えてるんですか?レギ王子のために、神様を辞める覚悟はあるんですか?」と、神妙に質問します。振り向いた意地悪なユウは、金色の瞳を鋭く細め、背から黒々とした大きい翼を広げます。意地悪なユウは、逆に尋ねます。「シエルじゃないか。お前は、もしレギの命が懸かってるとして、神様の立場だったらどうするんだ?お前は、神様の立場を捨てて人間になれるのか?」と問いかけます。シエルは怯みません。迷わぬ真っ直ぐな瞳で「なれます!!僕なら真っ先に神様の立場を捨てますよ!レギ王子の命と人生が最も大事なものです。僕はレギ王子と生きていきます!!!」と、意地悪なユウに向けて宣言します。
意地悪なユウは、言葉を失います。意地悪なユウは、神の力を失くすことで、感情も記憶もすべて消えてしまい、レギ王子を守れなくなることが何よりも辛く感じています。そして、レギ王子からの愛を失うことも酷く恐れています。意地悪なユウは、「全部失う俺を、レギはまた愛してくれるのか」と涙をにじませます。シエルは「愛してくれます!!レギ王子はとてもお強い方ですよ!!ユウさんは、自分が人間になっても、レギ王子を守りたい気持ちはあるでしょう!?」と言い、「ユウさんが持っている感情や思い出は確かに消えてしまうかもしれませんけど、また一から増やせばいいじゃないですか!レギ王子だって、ユウさんの記憶がなくなってましたけど、今はまた心から好きになって、思い出を重ねて愛になったじゃないですか!」と、意地悪なユウへ訴えます。シエルは、「レギ王子は、ユウさんがどんな状態になっても、同じことを言うと思いますよ!ユウさんはレギ王子のこと一番知ってるでしょう?」と、真摯に伝えます。シエルは、「ユウさんの心の中の記憶は、決してなくなりませんよ!だって、レギ王子の中にもありますから!!」と、意地悪なユウへ熱く語ります。
部屋に戻った意地悪なユウは、帰りを待ってくれていたレギ王子に、静かに話します。
レギを殺す命令を受けていたこと、人間になれば殺さなくても済むこと、その代わり全て忘れてしまうかもしれないこと。意地悪なユウは、「人間になっても、レギと一緒に生きていきたい」とレギ王子に伝えます。黙って話を聞いていたレギ王子は、ふわりと温かい笑みを浮かべます。「お前だって、俺の記憶を消して。そのまま殺してもよかったのに、俺との約束を守ってわざわざ会いにきてくれて。ずっと傍にいてくれた」レギ王子は、揺れている金色の瞳を、優しい眼差しで見つめます。「今度は俺がユウを守る番だ。何度忘れたって、一生かけて思い出作ろう。俺が好きになって、愛したのは神様であるユウじゃなくて、今ここにいる「ユウ」だ」と、意地悪なユウの手を包んで、レギ王子は応えます。意地悪なユウは、彼の芯の強さを感じて、涙を流します。それは、変わらぬ愛を持つ彼への感謝のものでした。「ありがとう…俺も、何度でもレギを愛する」と嗚咽する彼を抱きしめて、「話してくれてありがとう」とレギ王子は静かに寄り添います。
翌日の朝、意地悪なユウはレギ王子に、「俺と一緒になにか植物を育ててみないか?シエルから、レギは植物が好きだって聞いたんだよね」と、誘います。レギ王子は、意地悪なユウが自分の興味に関心を持ってくれたことが嬉しくて、照れたように笑います。レギ王子は、「じゃあ…金色の花がいい。俺が好きになったユウの瞳の色だから」と呟きます。意地悪なユウは、胸の中に熱いものがこみ上げます。レギ王子を抱き寄せ、意地悪なユウは愛を実感します。
またある日のこと、シエルが意地悪なユウと城の廊下ですれ違います。意地悪なユウは、立ち止まったシエルに「こないだは、ありがとな」と、レギ王子との未来について真剣に話してくれたことに感謝を述べます。シエルは「レギ王子を泣かしたら1000回お尻ペンペンですよ!!僕は死ぬまでレギ王子を狙ってますので!!」と、ふくれっ面で意地悪なユウに応えます。それを見て意地悪なユウはふっと笑み、「それは面白いな?」と、挑戦的な笑みで返します。意地悪なユウは、レギ王子への愛の示し方について色々と考えます。
夕方、シエルがまた意地悪なユウの部屋に来て、「僕も活躍しましたし、ユウさんからの僕の好感度上がったことかと思います!僕たちってレギ王子大好き同盟が組めちゃいますね!!最近思ったんですけど、レギ王子ってスカート似合うと思いません?!」と暴れています。シエルの提案に対して、意地悪なユウは「ちょっと面白いかもな」と意外にも乗り気な様子でした。レギ王子がスカートを履くことに抵抗があるかどうか、さっそく昼間の食事の時に、意地悪なユウはレギ王子に軽く話してみます。レギ王子は「最近、ユウとシエルが仲良しだ」と嬉しそうです。レギ王子はスカートの話に「俺、一応男なんだが…」と戸惑いますが、意地悪なユウがあまりに前向きな様子なので、「ユウとシエルのために一回だけならいいか」と苦笑します。
夕方頃、シエルがスキップしながらレギ王子の元に飛んできて、「ご承諾ありがとうございます!!!ほんとスカート楽しみです!!これはユウさんと僕による、レギ王子大好き同盟の第1回目の記念になります!!」と、レギ王子にすりすり抱きつきます。レギ王子はシエルの頭を撫でて、「犬みたいだ」とまんざらではなさそうです。その横で意地悪なユウは、困ったように笑っています。そうして夜、レギ王子の部屋に意地悪なユウ、レギ王子、シエルが集まり、スカートのお披露目会をします。シエルが胸を張りながら持ってきます。真っ白なロングスカートで、裾に金色の刺繍がされています。シエルが満面の笑みで「なんて素晴らしい日でしょう!!ユウさんと一緒に選びましたよ!刺繍はレギ王子から教えていただいたユウさんのおめめの色です!!」と叫びます。意地悪なユウは、シエルからスカートを受け取ると「はい、プレゼント」とレギ王子に優しく手渡します。恥ずかしがりながら登場したレギ王子のスカート姿はあまりに似合ってて、シエルは大粒の涙を流しながら「まるで僕だけの天使です!!!レギ王子は宇宙で一番最高です!!!」とおいおい泣いています。レギ王子は慣れないスカートの裾を広げ、ふたりの期待の眼差しに応えて、遠慮がちに一回転してみせます。シエルがさらに感激する横で、意地悪なユウは満足気な様子で「レギ、似合ってる」と愛おしく見つめます。レギ王子は、「ふたりとも、ありがとう。…恥ずかしいけど」と、はにかみながらも心から楽しんでいるようでした。