「探偵」 探偵小説の悪影響といえば、近界民が襲来する以外のごくごく普通の毎日さえそれが侵食しているということだ。例えば刑事ドラマを見ていれば犯人を無意識のうちに先読みしてしまう。ああいったドラマというのは大抵の筋書が著名な小説や映画からのオマージュも少なくなく、トリックや犯人への道筋がとても分かりやすく、子供の頃はその推理をよく考えもせず披露しては母親をがっかりさせた。
その度に「ああいうのはね、自分で推理する人もいれば道中の道筋なんかどうでもいいっていう視聴者もいるんだから、例えあんたが前者でも、なんでもかんでも口に出せばいいというものじゃない訳。おわかり?」と本当に面白くなさそうに言うので、諏訪はほんの数回の失敗で母親の楽しみを奪う事はなくなった。
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