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    絹豆腐

    DONE💙💜
    薄明と染まるカチャカチャと物の触れ合う音がする。
     途切れた集中に目の前の原稿から顔を上げる。カーテンの隙間から漏れる光が朝の訪れを知らせていた。思い切り伸びをすると固まった筋肉と関節が悲鳴をあげる。疲労にため息をつき、軽いストレッチを続けながら原稿を見やる。ここ最近のスランプが嘘の様に筆が進んだ。この恋物語の佳境は過ぎ、後は終幕に向け畳んでいくのみでプロット通りのものだ。まだオチは決まっていないが、この調子なら締切にかなりの余裕を持って終えられるだろう。早々に提出しようものなら何を言われるかわかったものではないので、ギリギリまで温めるが。
     スケジュールの更新をしていれば、食べ物の匂いがほのかに鼻をかすめる。愛しい恋人が活動するには早い時間だが、今日は朝から昼にかけて仕事があると言っていた。会いたいが今行けば朝食を追加で作らせてしまいそうだ。悩みあぐねていればスマホが通知を告げる。『軽食作っておくから、休憩時に食べてね』あまりの人間性に一瞬天を仰ぐも、彼と食事を共にすべく直ぐに立ち上がる。原稿を片付け、カーテンと窓を開け換気を行う。駆け足気味でリビングに向かえば音で気づいていたのであろう、エプロンを着けたシュウがこちらに身体を向け手を広げている。勢いもそのままハグをすれば腕の中の存在は肩を揺らした。
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