〚駄が持ってきたゲームがどう見てもホラゲ。むり。〛配信をスタートし、画面に“NowLoading”と映す。いつも通りの時間に始めた配信。音楽がいつもより短く感じるのは気のせいだろうか。そんな画面もすぐに切り替え、夢の、自分のVが映る。
「君たち、こんむぅ。早速だが、配信を辞めても良いだろうか?」
そんな自分の発言に“ホラゲ嫌いすぎだろw”とか“そんな夢ちゃんも可愛い”とか、しまいには10万ゲソのスパチャで“やろうか”の4文字。
「君、イカノカンさん。スパチャは嬉しいんだが、ホラゲはやりたくない。絶対。残念だが駄は天日干しの刑だ。」
そうキッパリ返しても“天日干しwww”や“大丈夫、お母さんがいるからね”、“悪魔とオバケは同じ”とかいう暴論まで。どうやら、今の自分に味方はいないようで…
「………あぁ!!やる!!やるから!!!」
自分はリスナーの圧に折れてしまった。うぅ…やればいいんでしょ!やれば!(泣)
「じ、じゃあ、探索系ホラゲ、始めます…」
そう言い、ゲームを起動する。BGMの無いスタート画面から怖く感じる。やだ、もう辞めたい。
夢、既に泣きそう。チュートリアルとはいえ、動きもグラフィックも綺麗すぎる。つまりホラー演出も…考えただけで身震いが止まらない…
「…この作者、やりおる…」
と、呟いていたようで、“何処にビビり散らかしてるの?”だったり“この作者さんホラゲで結構有名だからね”だったり…え、今«ホラゲで有名»って書いてあった?
「あーやばいやばいやばいもう無理自分ショック死する…」
…これは嘘じゃない。マジでシンプルに頭抱える。こんなときでも画面上で自分の周りをくるくると、楽しそうに回る駄が羨ましくて妬ましい。今すぐにでも縛って吊し上げたい。
「…ちょっと予定変更して雑談配信でもするかーアハハー」
画面をホラゲから雑談配信時の背景に変える。“逃 げ る な ”とか“じゃあ次の配信に延期ってことか!”みたいなコメントが来てるが見なかったことにしよう。
「今度このゲームの実況動画出すからぁ…」
……嘘です。思い切り失踪しようと思います。そんな自分の心を見透かしたかのように、リスナーさん、特に古参リスナーさんたちが“嘘つけー!”や“失踪に全ベット”というコメントが目立つ。なんでバレてるんだよ。
「…君たち、今からASMRしても良いんだぞ」
そう言うと“ごめんなさい”や“すみませんでした”と、謝罪のコメントが多く届く。どうやら自分のやるASMRは、声が良すぎて10分くらいで人が居なくなる上に、アーカイブが残らない。それが嫌なのか、リスナーさんたちが全力で謝ってくる。そんな状況が少し面白くなり、
「………面白い奴らだな」(笑)
と、笑いながら言う。…と、コメント欄はいつも以上の異様な速さで過ぎていく。そう、これは〝自分、夢が笑ったから〟だ。リスナーの中では『悪魔なりのエンジェルスマイル』と言われているらしい。自分は、配信上あまり笑わないため、笑った途端に、ほぼ全ての夢の配信切り抜きchが即座に切り抜き、永久保存版と称して投稿する。自分も見たことはあるが、とある、夢専門とする切り抜きchの再生数は驚異の250万回以上を達成していたこともあった。
…さて、話を戻すが、今現在自分はとんでもない問題がある。
「……コラボ、したいんだけどなぁ」
そう、自分は登録者数が92万人ほどだが、一度もコラボというコラボをしたことがない。しかし、自分は極度のコミュ障。コラボが叶った暁には配信が無言と化す。
「急募、人見知りを治す方法〜イカマロに投稿しておいて〜」
「後で見るわ」と付け足し、匿名メッセージが送れるイカマロでコミュ障改善方法を募り、その間に雑談の輪を広げる。
「そういえば、今日バトルでさ〜……」
「……って事があってね、楽しかったよ。」
“やばい、くだらないのに笑いが止まらない” “敵さん泣いちゃうw”
…今日も平和だな。優しいリスナーさんや、荒らしなどの対処をしてくれるモデレーターさん。そして、自分を創ってくれたパパ(Live2Dモデラー)とママ(絵師)。今日も感謝して配信に臨んでいます。
「…おっと、話してたら2時間半も経ってたね。そろそろ終わりにするか。」
コメント欄は“僕はまだ舞えるぞ!”とか“やだ!”とか、多くのコメントが寄せられるが、自分が無理なんだ。朝起きれなくなる。
「自分が朝起きれなくなるからむーり!」
そう言い、夢として、リスナー皆に言い放つ。
「ちゃんと寝ろよ。おつむぅ〜」
口に出した後、“Thank You for watching”の画面に切り替え、後に配信を閉じた。