期待はずれの温泉旅行 5口にしておいて、仲間を飲みに誘う文句としてあまりにも不自然だったかとドキドキする。こんな言い方では、きっと自分の下心が趙に伝わってしまう。
趙が立ち止った春日をゆっくりと振り返った。
「いいけど、どこで飲む?」
春日に向けられた趙の顔がいつも通りで少しほっとする。
「俺たちの部屋はどうだ? どうせ、このままあっちで寝る奴もいんだろ」
「まぁ、ジュンギはともかく、ナンバは確実にそうだろうね」
趙が共犯者めいた笑みを浮かべて「じゃあ、そうしようか」と春日に腕を伸ばして、春日が手に持ったビニール袋を手にとった。
「春日くん、先にお部屋行ってて。俺、これだけ置いてくるよ」
「お、おう」
宴会部屋の方に行く趙を見送って、カードキーで自室の扉を開ける。案の定、こちらに帰ってきている人間はおらず、皆はまだあちらで宴会の真っ最中のようだった。
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