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    ぴー@なっつ

    @pn2_freaky

    i7。ヤマナギとナギ受(右ナギ)
    主にえろいのと、かきかけ。性癖強め。
    心の中のモブおじさん「ナギちゃんにえろい事がしたい!!!!!!!」

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    ぴー@なっつ

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    2部後~3部映画撮影前の大和さんモダモダ期の付き合ってないヤマナギちゃんのある夜のSS(/・ω・)/大和さん+ナギっちかも。

    本当はあとに続けたいのだけどいつになるかわからないので、とりあえず書き上がった(と思ってる)所まで。後半がどうにもならなかったら、もうちょっと加筆修正して支部にあげる予定にしてます。文章難しいねー!うひー!

    ##ヤマナギ

    夜の公園にて。たまたまビールが冷蔵庫になかっただけ。
    たまたま飲み足りないと思って、コンビニに缶ビールを買いに行っただけ。
    たまたまスマホを部屋に忘れていただけ。
    たまたま見上げた夜空の星が綺麗で、もっと見たいと思っただけ。



    深夜、近隣の家のあかりがぽつぽつとだけ灯る時間だった。


    大和は右手に缶ビールを持ちながら、公園のベンチの背もたれに肩を組むように両腕をひっかけて天を仰いでいた。
    酔っ払いが潰れてしまっているようにも見えるその様だったが、幸いここに居座ってからは通りすがる人もおらず、巡回しているかも知れない警官に会う事もなかった。頭上では空がやけに澄んでいて、そんな中でも見当たらない月のかわりに星がやたら瞬いている。既に缶ビール2.5本分のアルコールが入っているほろ酔いな大和は、一人で星空の鑑賞会……とも言えない、ただ何も考えずぼーっとそれを眺めている時間を過ごしていた。


    ドラマの撮影が長引き、大和が寮に戻ったのは22時をまわった頃だった。
    リビングではナギと陸が並び座ってハーブティーを飲んでいたが、おかえりなさいの挨拶と共に2人が準備してくれた(レンジで温める程度だったが)夕食をとった。それから、風呂に入るのを渋る環の代わりに先にシャワーを浴び、誰もいなくなったリビングで冷蔵庫から缶ビールを取りだして一気に煽る。勢いよく息を吐き出し、2本目、と冷蔵庫を漁ってみるが見つからない。いつもなら諦めて他の飲み物を手にするが、今日は何故か飲み足りないなと思った。明日は仕事が午後からなのを自分の中の言い訳にして、ポケットに財布を捻じ込むと、たまたま廊下ですれ違った三月に「コンビニでビール買ってくる」とだけ言って寮を出た。まだしっかりしている足取りでコンビニに向かう道中、ふと空を見上げると星がとても綺麗に見えたのが印象的だった。コンビニに着いてからも先程見た光景になんとなく惹かれて、缶ビール2本とたまたま目に入ったここなちゃんウェハースが入った袋をひっさげて、星空がよく見える場所を求めた結果がこの公園のベンチだった。


    ふいに、ザリ、と砂を踏む音がした。自分の名前を静かに呼ぶ声が聞こえ、意識だけがそちらに向く。誰、とも思わない。もう聞き馴染んでいる独特のイントネーションと声だった。それに向かって「こんな時間に未成年が出歩いてたら、おまわりさんに捕まっちまうぞー」と言えば、近付く足音と共に「こんな時間に外をふらついている酔っ払いの大人を、おまわりさんの代わりに捕まえにきました」と答えが返ってきた。と、急に大和の視界が何かで遮られる。
    「……ナギ……驚かせんなよ」
    大して驚いた訳でもないのにそう言うと
    「驚かそうと思いましたので」
    そう柔らかく声が降ってくる。
    夜目に慣れていたとは言え、大和を逆さから覗き込むナギの表情は、逆光になっていてはっきりとは見えない。けれど、きっと金髪碧眼でオマケに整った顔のいたずら好きの美人はきっと得意げな顔をしているはずだ。今の小さないたずらも、表情も、容易に想像できるくらいは深い付き合いになっていた。

    ナギは覗き込むのを止め、大和がベンチに置いているコンビニ袋を隔てた隣に座る。はずみでベンチがキィと乾いた音を立てて少しだけ軋んだ。
    「コンビニに行ってたのではなかったのですか?ヤマトの帰りが遅いので、どこかで酔い潰れているのではないかと、ミツキが心配していました」
    顔をこちらに向けてナギは声をかけてくる。声色からして咎められている訳ではなさそうだ。
    「そんな時間経ってないだろ?大丈夫だって。そこまで飲んでないよ」
    まだ余裕ですー、と大和はナギの方を見ずに缶を振って答える。ちゃぷちゃぷと中身の揺れた音のするそれをちらりと見たナギは続ける。
    「スマホも部屋に置いてあったので、連絡がとれませんでした」
    「あれ、そうだっけ?」
    大和がポケットを触るがどこにも感触がなく、忘れていた事に今更気付く。ほんとだ、と言うとナギが少しため息をついた。それを払うように明るくナギに話しかける。
    「それで?ナギが探しに来たんだ?」
    「ええ、アニメのお供に飲み物を取りに行ったところ、ミツキからそのように話を聞きましたので。もしもの事があればミツキが寮にいる方がいいと思いました」
    もしもってなんだよ、と小さく茶々を入れる。
    「どうせミツが大袈裟に言ったんだろ?ミツは心配性だよなー」
    「ワタシも、心配しました」
    「お前さんまでそんな事言うの?お兄さん、そんなに過保護にされると困っちゃうんだけど」
    ふはっと笑いながら大和は言う。ナギの纏う空気がだんだん重くなっている気配がしていた。真っ直ぐ見つめられているであろう視線がジリジリと刺さる。
    ナギが一呼吸する音した。

    「ヤマトがこのままどこかに行ってしまうのではないか、と、思いました」

    淡々と言われた言葉に、ひゅぅ、と喉から音がして大和の笑いと時間が止まる。しかし、それは一瞬の事で大和が再び肩を振るわせて笑いだす。
    「くく……なんだそれ」
    「……ヤマト、寮に帰りましょう」
    「ははは、はー……ふはは」
    「ヤマト、」
    窘められるように名前を呼ばれるが大和の笑いは止まらず、しばらくして落ち着いた頃に大和はナギに言う。
    「はー……ごめん、ナギ、俺はもう少しここにいるよ」
    「何故です?……ヤマト、帰りたくはない?」
    ナギが大和にそう聞くに至った理由に検討はつく。その事で、ナギを悲しませた事だって何度もある。

    でも、例え無意識で選んでいたんだとしても、
    たまたまビールが冷蔵庫になかっただけ。
    たまたま飲み足りないと思って、コンビニに缶ビールを買いに行っただけ。
    たまたまスマホを部屋に忘れていただけ。
    たまたま見上げた夜空の星が綺麗で、もっと見たいと思っただけ。
    今日は本当にそれだけだった。

    「考えすぎだっつーの」
    大和は空いてる方の手を空に伸ばして指差す。訝しげにしていたナギだったが、大和の指す先へ顔を向けると、WOW、と小さく感嘆の声をあげた。
    「もうしばらくこれを見ていたいからって理由じゃ、足らない?」
    大和はナギに向かって明るく笑いかける。
    「いいでしょう、許可します」
    ヤマトはワガママさんですね、そう言ったナギがこの場所に来てはじめて笑顔を見せた。



    ナギがスマホを軽快にタップしている。
    おおよそ、大和を発見した事を三月にラビチャで報告しているのだろう。メッセージのやりとりをスタンプで締めくくると、ナギはスマホをスリープにして胸のポケットにしまった。
    「ミツキからの伝言です。”おっさん、明日の朝飯頼んだわ”だそうです。おめでとうございます、ヤマトは明日の朝食係に任命されましたよ。そうですね……ワタシはオムレツが食べたいです」
    ナギがにっこり笑って大和に伝える。顔をしかめて「リクエストは受け付けません」と言う大和の言葉を無視して「楽しみにしていますね」と言うナギはベンチにもたれて空を見上げた。
    「今日は本当に星が美しいですね」
    「だろ?寮出て空見たらこんなだったからさ、よく見えるとこで見たくなったんだよ」
    「確かに、そのように思えるほど、素晴らしい星空です。Starry night……月のない星空の事を日本では確か……ホシツキヨ?と言いましたっけ」
    「そうそう、さすがナギ、よく知ってんじゃん」
    「ありがとうございます」
    ナギは微笑んで目を細める。暗さにすっかり慣れた目の先で、星だけが瞬いている。
    「しかし、ヤマト一人きりでこのようなロマンチックな夜を過ごしていたとは……」
    「寂しいって?今はナギも一緒に見てるだろ?」
    「Oh……男2人で見ると更に哀愁が増してしまいます……」
    そう嘆くナギに「ま、それもそうだな」と返すと、どちらかともなく笑いあう。ひとしきり笑った後、ナギがまた空を上げたので大和もそれに倣おうとした……が、大和はそのままナギを見つめていた。

    目鼻の整った輪郭を、宝石のような瞳を、柔らかな金糸の髪を、穏やかな表情を。
    太陽よりも月明かりよりも暗い星月夜には、いつもハイテンションのナギが時に纏う「凪」がよく似合う。
    美人だ、美形だと思うし、言うことはある。しかし、今こうして過ごしているナギを形作るものを、純粋にただ美しいな、と大和は思った。
    それは容姿だけではなく、ヤマトが何ものでも愛している、と真っ直ぐ向けて来る光も。
    大和にはそれが眩し過ぎた。
    だから、適当にはぐらかして、目を背けたり遠ざけたり、向けられる愛情を受け流したり押し返したり、時にはそれも出来ずにただ傷つけたりもしていた。ありのままに受け取る資格も勇気もない。信頼してくれているメンバーの気持ちが大きければ大きいほど、自分が抱えている秘密や自分自身を拒絶されて失うのを怖いと思ってしまっていた。しかし、今夜の暗さと酔いの中では、向けられる光や自分が抱えている後ろめたさに霞がかかったような気がして、ナギをやっとまともに見つめられる気がした。

    「ワタシに見とれてどうしましたか?」
    視線だけをヤマトの方に向けてナギが言う。
    「んー?……お前さんを見るには、これくらいの明るさがちょうどいいなって」
    ナギの質問に否定もせず、大和は呟いた。
    「Hm……?どういう意味です?」
    「そのままの意味だよ」
    「太陽の光の下ではワタシが美しく輝きすぎている、と言う事ですか?」
    「はは、そういう事かもな」
    なんという事でしょう、美しいとは時に罪ですね、とナギが額に右手をあてて大きく首を振って大げさに嘆く。それに軽く声を出して笑って、気が抜けた。
    「はは……ナギも、他のメンバーも、俺には眩しすぎるよ」
    吐き出す息と共に、そう口に出していた。喋りすぎた。
    音に乗ってしまった言葉を誤魔化すように炭酸が抜けかけている残りのビールを飲み干すと、苦みだけが喉を通る。舌打ちしたい気持ちすら無かった事にしたくて、大和はまた星空を見上げる。ここに来た時よりも星がぼやけて見えた。

    ヤマト、と、名前を呼ばれた声がひどく優しくて、思わず視線を向けてしまった。
    見なければよかった。
    ナギが、泣きそうに微笑んでいた。
    体の中が一気に沸き立つようで、思わずナギから視線を外した。ドクドクと心臓の音がうるさい。
    わずかの間だったであろう沈黙をナギが破る。

    「ヤマト、ワタシは美しいです」
    「あ、あぁ……うん」
    自信満々に言った予想外のナギの言葉に大和の体から少し力が抜け、呼吸ができた。
    「そしてワタシはいつも美しく輝いています」
    「そう、だな……」
    ……もしかしから、ナギはいつかのように誤魔化されてくれようとしているのかも知れない。だってこんな星空の夜だから。
    それを期待した大和は軽口を叩く。
    「……そうそう~、お前さんはキラキラしてて、お兄さん、嫌になっちゃうくらいだよ」
    「そうです、キラキラしていますよ!」
    ナギが乗ってきたと思い大和はナギを見た。
    しかし、ナギの大和を見る感情は変わらないままで、大和はまた後悔した。

    「ヤマトも、ワタシと同じように」

    ナギが言い放った言葉が大和に光をさす。

    「ワタシたちはアイドリッシュセブンという1つの星座です。ヤマトもその中でワタシ達と共に同じ光で輝いています。眩しく思う必要はどこにもありません」

    暗闇で急にスポットライトを浴びた感覚。真っ白で何も見えない。

    「ヤマト、覚えていて」

    恐怖さえ感じる強い光に目を閉じて、それでも感じる光から背を向けて、また暗闇の中へ戻る事しかできない。今の自分は、光の先は踏み出せない。



    「ヤマト?」
    急に立ち上がった大和にナギは不思議そうに声をかける。
    「帰るぞー。ずいぶん遅くなっちまったし、明日は朝食係だし?」
    コンビニ袋をひっかけて大和は歩きだす。
    「Oh……チドリアシです、ヤマト」
    追ってきたナギに両手で腕を掴まれた。そのあたたかさで体が冷えていたことを知る。
    「いやいや、1人で歩けるから」
    「遠慮しなくてもいいんですよ?」
    「おにーさんは大丈夫ですー。それより、ナギ、靴ひも解けてる」
    「Oh……」

    適当に言ったが本当に解けていたらしいナギが靴ひもを結び直している間に公園の出口へ素早く歩きだす。
    「待って下さい、ヤマト」
    後ろでナギの声がするが、大和は歩みを止めない。

    「やっぱ、どうあがいてもお前さんは眩しすぎますよ、ナギ」

    小さく、小さく呟く声は風に乗ってすぐに散る。
    ずいぶん綺麗だった星空の事も、大和はもう忘れようとしていた。

    #

    解けていなかった靴ひもを固く結び直したナギは遠くなる大和の背中をじっと見ていた。

    「ヤマトがこのままどこかに行ってしまうのではないか、と、思いました」

    大和に軽くあしらわれた一言。
    ナギにとっては言葉にする事を躊躇ってしまうほど、自分の愛する人が急にいなくなってしまう事はナギにとって耐え難い事だった。喪失感も深い悲しみも虚無感も、自分も他のメンバーにだって味わわせたくない。自分勝手で傲慢だと言われても、ナギはナギのやり方でしか大和に寄り添えない。けれど、いつかそれが大和の幸せに繋がるはずだと、ナギは信じていた。信じたかった。

    「ヤマト、ワタシは……ワタシたちは待っていますよ」

    小さく、小さく呟く声は風に乗ってすぐに散る。

    1度だけ深く瞬きをしたナギが軽く駆け出すと、先を歩いていた大和にすぐに追いついた。
    「チドリアシの酔っぱらいをタイホです!」
    と、勢いのままその背中にハグをすると、ぐぇと大和が崩れる。
    恨めしい顔をする大和の腕を引っ張って立ち上がらせると、そのまま腕を絡めて繋ぐ。
    「ショまでご同行願います!」
    「えー……事情聴取は明日でいい?」
    「許可します」
    深くため息をついた大和にナギは笑って返す。
    明日でもいい。明後日でもいい。大和が話してくれるなら。

    だから、どうか、どこにも行かないで。

    ナギの願いと共鳴するように、星空は静かに瞬いていた。
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