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    ぴー@なっつ

    @pn2_freaky

    i7。ヤマナギとナギ受(右ナギ)
    主にえろいのと、かきかけ。性癖強め。
    心の中のモブおじさん「ナギちゃんにえろい事がしたい!!!!!!!」

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    ぴー@なっつ

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    付き合いたてのヤマナギが1歩進むお話(/・ω・)/
    タイトルつけるの苦手すぎる。
    近所の公園登場させがち。(当社比)
    ナギっちのはじめての誕生日、かつ3部以降。

    ナギっちの悲しかった事とか辛かった事を、アイナナちゃんと大和さんがどんどん上塗りしていってくれたらいいなと常々思ってます。

    ##ヤマナギ

    ヤマナギちゃんと近所の公園の話(仮)つい最近、二階堂大和と六弥ナギは紆余曲折あった結果、恋人になった。
    とは言え、メンバーとの時間も仕事も心から大切に思っている2人とって今の生活が大きく変わる事はなく、しいて言えば近くのコンビニへ2人きりで行く事が増えたくらいの、本当に些細な変化だけだった。

     
    はじめてのコンビニ”デート”は、日付が変わろうとする頃だった。
    翌日がオフな事もあり、少し飲み足りない気持ちを満たそうと追加でお酒を買いに行こうとする大和に、リビングでアニメを見ていたナギが「一緒に行きます」とついてきたのだ。今まで2人で行くことは何度もあったのに、先日そういう関係になったばかりで距離感がわからず、意識しだすと一緒にいられる嬉しさよりも気恥ずかしさが勝ってしまった大和は、それを表面に出さずにあくまで自然に、ナギから距離を取って歩こうとしていた。
    しかし、それはナギの指が大和の指に絡み……いわゆる”恋人繋ぎ”をしてきたことで失敗に終わった。隣に並んだナギは口元にうすく笑みを浮かべ、視線だけで大和を見ていた。自分の気持ちなんてとっくに見透かされているだろう事が少し悔しくて、大和は「誰が見ているかもわからない」と咎めようとした。しかし、それを口にする前に
    「誰もいません、大丈夫です。それに、言い訳なんていくらでもできます。今の所ヤマトはヨッパライですから」
    と、ナギは笑う。街灯の薄暗い明りの中でもはっきりと見えたナギのはにかんだ笑顔にあっけなく絆された大和は「店までな」とだけ言ってそれを受け入れた。
    今まで付き合ってきた彼女とだってこんな風に手を繋いで歩いた事がなかったから、くすぐったいような甘酸っぱいような、思春期の学生のような気持ちになったのを覚えている。それはナギも同じだったようで、女性の手を取りエスコートする事はあっても、こんな繋ぎ方をするのは初めてだと笑う。そんな雰囲気に当てられたのか、繋いだ手のあたたかさを離したくなかったのか、コンビニからの帰りもナギからの恋人繋ぎを許した大和の足は真っ直ぐ寮に向かうことを拒んだ。同じ寮で過ごしているのだから、戻れば何の心配もなく2人きりになれるのはわかっているけれど、もう少しだけ、この深夜の静まり返った外気の下でナギと過ごしてみたいと思った。
    丁字路で元来た道とは別の方向に導くように手を引いてみれば「ヤマト?」とナギから小さく呼びかけられる。「酔い覚まし」と一言だけ伝え、顔でその先に見える公園を指すと、そちらを見たナギが一拍置いてoh……と声に出す。ためらっているように思えたが「ヤマトの望むように」と、ナギはそう言ってクスクスと笑い、繋がれた手をきゅっと握り直した。そんな小さな動きにさえ舞い上がりそうになった大和は、黙ったままナギの手を引いて公園にあるウッドベンチまでを歩いた。
    少し軋む音を鳴らすベンチで、缶ビールとここなちゃんウエハースが入ったレジ袋分の距離をあけて交わす言葉は甘ったるいものではなく、今の現場がどうとか、今見ているアニメがこうとか、なんてことない他愛のない話をするくらいだったけれど大和はじんわりと胸に広がっていく凪いだ幸せを噛みしめていた。きっとナギも同じ気持ちでいてくれてると、大和はそう思っていた。
    その日以来、言い訳がなくてもコンビニデートの時にはどちらともなく手を繋ぎ、公園に寄る事がほとんどになった。いつもナギから繋いできた手を大和から繋いでみたりした事もあった。酔いにまかせて突然ナギを後ろから抱きしめて驚かそうとした事もあった。
    アイドリッシュセブンの仲の良さや、メンバーを好きだと公言しているナギを知ってる人ならば、日常の延長線上にあるやり取りだと思うだろう。実際に「好き」「愛してる」そんなくすぐったい本心を秘めやか伝えあっていても、2人の触れ合いはハグやエアキスまでに留まっているくらいに、幼い。大和自身は恋人としての「この先」を求めたい気持ちはある。しかしそれよりも、今ここで確かに感じられる特別な時間や戯れが、大和は泣きそうなくらい愛おしくて仕方がなかった。
     

    そんなささやかなデートを繰り返していたある日、今日もいつものベンチに座って話していると
    「突然ですが、ここで第206回打ち明け話大会をします」
    とナギが言いだした。ツッコミたい気持ちも多々ありつつ、何を発表されるのかも気になる大和は手を出して”どうぞ”と促した。
    「実は、ワタシは、この公園の事を好きではありませんでした」
    「え?」
    唐突なナギの告白に大和は驚く。何度もここへは来ているはずなのに、ナギが今までそんな素振りを見た事がなかったからだ。
    「ワタシのバースデイの事を覚えていますか?みなに祝福され、世界一幸福になるはずの日が、幻になってしまった日の事です」
    「……あぁ」
    あれはナギがはじめてメンバーと共に過ごすはずだった誕生日の直前の事だ。
    6月に入ってからメンバーに祝われる事をずっと楽しみにしていたナギに、当日はノースメイアに帰国しないといけなくなったと泣きながら伝えられた。
    確かあの日は、泣いているナギをよく出前を取るTRIGGERの八乙女似のお蕎麦屋さんが寮まで送ってくれたのだった。あの時のナギの悲しみようは本当に酷かった。いつものオーバーリアクションでなく、ただただ静かに涙を流すナギは痛ましく、メンバーにもナギの悲しみは十分過ぎるほど伝わっていたから、ノースメイアから出されるナギからの連日のムチャぶりに全員で応えたんだった。寮に帰ってきたナギから『一番連絡を下さっていたヤマトの優しさがとても嬉しかったです』と、はにかんだ笑顔とハグと共に伝えられて、照れくさくて仕方がなかったなと大和は当時の事を思い出す。
    「覚えてるよ。ナギがお蕎麦屋さんに送ってきてもらった日だろ?ノースメイアに帰ったお前さんに、体操のお兄さんをさせられた事も覚えてる」
    「Yes!あの時の動画、しっかり保存していますよ。見ますか?」
    「見ない、やめて、消して……」
    「ノー、ヤマトの勇士を消したりなんてできません」
    ナギは目を細めて大和に微笑んでから、曇りがかり星の見えない空を見上げる。
    「あの日、ワタシはこの公園の前で祖国からの連絡を受け取り、このベンチに座ってワタシの運命を呪いました。……非常に、悲しかった。ですから、あの出来事が思い出になってからも、この公園の前を通るとあの時の不幸を思い出してしまう事があり、たびたび胸を痛めていました」
    頼りなく照らす外灯の明るさが落とす影の中で、ナギは困ったように笑った。親切なお蕎麦屋さんが送ってくれたのは知っていたが、連絡をうけた場所がここだという事は知らなかった。今まで自分の事も含めて散々悲しい思いをさせてきた分、できる限り遠ざけたかったし守りたいと思っていたのに、知らなかったとは言え毎回デートの度にナギにそんな思いをさせてしまった可能性を思い、大和は眉をしかめた。
    「悪い、俺……」
    「ノーノー!謝らないで。今は違うのですから」
    「違う?」
    Yesとナギは強く頷いてから微笑む。この顔を大和はよく知っている。メンバーといる時、ふと気付くと少し離れた所からこちらを愛おしそうに見ている時の、慈愛に満ちた女神のような笑顔だった。
    「イオリにリフレッシュして頂きたい時には、この公園に誘います。ミツキと買い物に行った帰りに、ここでこっそりアイスを食べたりしました。タマキとはここまでゲームのモンスターを捕まえにきましたし、ソウゴの音楽講座でつい話が盛り上がってしまい流れるようにこのベンチで長話をした事もありました。穏やかな晴れた日には、ここでリクと読書をしていて居眠りしてしまった事もありましたね」
    ひとつひとつ大切そうに語られる言葉を、それに、と区切ったナギは、ベンチの座面に置かれていた大和の左手に自分の右手をふわりと重ねた。
    「ヤマトとはじめてコンビニまでデートをした帰り道、デートの終わりを惜しむ気持ちが、ワタシもヤマトも同じだと知れたのがこの公園でした。はじめてヤマトから手を繋いで下さったのも、突然のハグに驚いたのも、この公園でした。……とても、嬉しかったです」
    ナギは握っていた大和の手を両手で優しく包んでやわく力を込める。
    「起きてしまった不幸を消す事はできない。しかし、油絵のカンバスのように、不幸を幸福で上塗りする事はできます。みなと、ヤマトと、ここで同じ時間を過ごしてきた事で、深い悲しみの色に染まっていたワタシのカンバスは、再び美しく鮮やかに彩られたんですよ」
    大和はたやすく想像できた。
    春の木漏れ日のような穏やかな陽射しが照らす中で、ナギがメンバーとにこやかに過ごす光景を。
    澄んだ空にかかりきらめく七色の虹を。
    それはメンバーの事が大好きな、とてもナギらしい絵だと思った。

    少しだけ、ほんの少しだけ。
    他のどの色よりも、自分の色を多く残せたなら。

    「…………っ」
    「…………」

    瞬きほどのわずか、羽のようにそっと。
    ふっと湧いた小さな欲に体が動かされて、大和はナギに口付けていた。自分の心臓の音だけが耳に響いているような沈黙の中で、ナギの宝石のようなロイヤルブルーの瞳が潤む音が聞こえた気がした。

    「……大変です」
    低くぽつりと呟いたナギのかすれた声で大和は我に返る。
    「ヤマトの色でいっぱいです」
    「あ……」
    大和の衝動にまかせた行いのせいで、ナギが大切に描いてきた絵画に不躾にペンキをぶちまけたような、取り返しのつかないことをしてしまった気持ちに一気に襲われた。ナギの言葉に咎められたように感じた大和の視線が自然に下を向くと、繋がれていた手がほどかれていくのが目に入った。離れていく体温にたまらなくなり、大和は「ごめん」と口を開こうとしたが、それは立ち上がったナギに頭ごと抱きしめられたことで阻まれる。けして柔らかくないナギの胸に押しつけられた左耳から、大和と同じように早い心音が聞こえる。
    「今までも、みなの思い出とともにヤマトとのデートを思い出していました。明日からはもっと、甘く、胸が疼く事になるのでしょう」
    大和がナギの背に腕をまわす事をためらっている間にハグは解かれ、一度大和と視線を合わせたナギは大和の所在のない手をとった。
    「帰りましょう、ヤマト」
    そのままナギに手をひかれるままに立ち上がり、公園を後にする。
    大和をエスコートするナギの手から、一瞬触れた唇から、今さら痺れを伴った熱がじんわりと体中に広がっていくのを感じながら、前を歩くナギを見ながら大和は考える。大和にとって寮から近い場所でしかなかった公園も、深夜のただ暗く味気ない路地も、あの日から重ねてきたナギとの時間でたくさん彩られている、ナギの色が多めの大和の大切な思い出になっていた。
    「なぁ、ナギ。俺も同じだよ」
    「何がです?」
    「ナギでいっぱいってこと」
    「OH……はは、それは大変です」
    ナギは幸せそうにずっとふわふわ笑い、大和はそんなナギを愛おしく見つめていた。

    寮の玄関までもうすぐのところでナギの足がピタリと止まった。
    「ナギ、どうした?」
    不思議に思った大和が声をかけると、背中を向けたままでナギは話し出す。
    「先ほどヤマトが"ここ"に触れるまで、"ワタシ"はまだ何色にも染まっていない、まっさらなカンバスでした。……もっとヤマトの色で染めあげて下さっても構わない」
    「それって……」
    大和がナギの言葉の意味を理解しきる前に、振り返ったナギは大和の唇に口付けた。さっきよりもしっかりと重なったそこから確かにナギを感じて、大和の心臓は一気に湧く。動けない大和に「グッドナイト、よい夢を」と、はにかんだナギは走って寮に入っていった。
    しばらくして、ひとり取り残された大和はようやく呼吸を思い出し、深く深く息を吐く。騒ぐ心臓に煽られ、ナギの言葉を反復した今、なおさら顔は真っ赤になっていることだろう。大和が密かに望んでいた「この先」が意外にも近く訪れるかも知れない期待感と、同時に今のナギを守りたい気持ちとが沸き上がり、早くも葛藤しているのに気付いて大和は笑う。
    「ははは、ほんと、大変だわ」
    思い出どころか、今の大和の頭の中はナギの事でいっぱいになっているし、今のナギもきっと同じだろう。でも、不幸よりずっといい。これも幸福の色のひとつで、二人を彩ってくれるはずだと、大和はナギの唇に触れながら寮に戻った。
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