Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    sheep_lumei

    @sheep_lumei

    ボツにしたプロットとかをおいていく 年齢指定ものは一週間経ったら公開範囲を狭くする

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 24

    sheep_lumei

    ☆quiet follow

    支部にあげてたハリポタパロの後日談①(サンポがホグワーツを卒業したあと)
    開心術と閉心術の練習をしてほしいねという話

    たぶん本編加筆が終わってないので時系列が微妙に分かりにくいのですが、サンポは魔法界で商人やってて星ちゃんはホグワーツ7年生ラストイヤーになります。※加筆終わってない部分は全部「あの件」のようにぼかしているので流してください謝罪筆遅

    細かい前提抜きに
    ・ハリポタパロでも相変わらず意地悪なことしてるサンポ
    ・学生時代から続く無意識な振り回し言動のツケが回ってくる星ちゃん
    くらいの、本編に書くと蛇足な落書きの①



    商売に関するスケジュールに合わせて計画的に昼夜を逆転させることが多々あるサンポは、すっかり薄暗くなった部屋の中で目を覚ました。杖を手繰り寄せようとするがどうにも息苦しい。真冬でもあるまいし、薄い毛布しか被っていない筈なのに。眠気を振り払うように瞬きを繰り返すこと数秒、サンポは考えるまでも無かった答えに気付いて呆れ笑いのような溜息を零した。

    ルーモス、と部屋の灯りをつける。

    「貴女ねえ、寮のベッドでもないんですから……いい加減に僕の寝台を自分の寝台だと思うのはやめましょうよ」
    「んぅ……」

    眩しさに顔を顰めた星は、なおもサンポから毛布を剝ぎ取ろうとしていた。お世辞にも広いとはいえない寝台へぎゅうぎゅうと身をねじ込んでくる星に、どうせもう仕事に行くからと毛布を譲り渡せば、もぞもぞと我が物顔で寝台を占領されてしまう。

    「魔法を教える約束、明日の朝じゃありませんでした?」
    「寮だと絶対起きれない無理……今日みっちり実戦形式でしごかれて眠くて眠くて……」
    「だから此処で寝ればいいと。まあ理屈は分かりますけどねえ」
    「ごめんもう目開ける元気ない……」

    猫のような唸り声をあげた星は数秒もしないうちに眠りについてしまった。これは懐いたというより、星のパーソナルスペースにサンポが入り込んだぶんだけ逆のことも起こっている……といったほうが正しいのかもしれない。サンポがホグワーツを離れていた二年を差し引いても、二人が知り合ってから既に五年の月日が流れているのだから。

    あの件以来、気ままに商人として暮らすようになったサンポと星の間に何か変化があったかというと大して何も変わっていない。星はホグワーツを卒業したサンポの元にも相変わらず魔法を教わりにくる。仕事の都合があることは理解しているのか、スリザリン寮にいた時のように問答無用でサンポを叩き起こすことはしなくなったが、警戒心のけの字もないまま寝台に潜り込んでくることには変わりない。

    それに落ち着く気持ちがないとは言わないが、ここは星を気にかける大人の目があるホグワーツではなくサンポの家だ。すうすうと穏やかな寝息を立てる姿に思うところが無いというのは、どう足掻いても嘘になる。

    「……このひと、こんなに単純で大丈夫なんですかねえ」

    明かりをすこし落としてから仕事に向かうべく着替え始めたサンポは、つい最近の“魔法の練習”を思い返していた。

    開心術と閉心術の訓練について。



    元はと言えば開心術と閉心術……というより、精神に干渉する魔法についての話題を出してきたのは星の側だった。元からそれはそうだと思っていたが、星の育て親である大魔女カフカは精神に干渉する魔法が得意らしい。だが難易度が高いだけでなく、闇の魔法使いである大魔女カフカが得意とするだけあって複雑なものになればなるほど普通の書籍には記されていないものである。そう、普通の書籍には。

    「サンポのことだから、ホグワーツの禁書読み漁ってた時に勉強したでしょ?」
    「していないとは言いませんけど、他の魔法みたいに無機物で練習できないぶん面倒ですよ」
    「いいのいいの。どっちかっていうと、防ぎ方教えてほしいかな」

    星の将来の進路はまだ決まっていない。というより、本人の交友関係上あちらこちらから勧誘されているため引く手あまたすぎて答えがいっそう分からなくなっているらしい。闇祓いになるのも良さそうだと思っているらしいが、言い切れない理由も大魔女カフカとの関係を仕事においてどうすればいいか分からないためだろう。まあしかし、だ。決まっていないとはいえ闇祓いになるのであれば確かに高度な精神干渉を防ぐ術は身に着けておいて損はない。

    「必然的に、僕が貴女にそういう魔法をかけて貴女がどうにか防ぐ……という実践で無理やり学ぶ形式になると思いますけど。開心術と閉心術のように明確な対抗手段があるものから始めて、完全に防げるようになったら新しい呪文を試すということで」
    「はーい」

    そんなやりとりから始まった開心術と閉心術の練習は、最初はまだ星の側に「心を閉じる! よくわからないけど心を閉じるか別のことを考える!」という強い意思があったため、干渉を防ぐという感覚を星もうまく認識できていたように思う。

    それに綻びが生じたのはホグワーツの試験期間が終わったばかりの頃だった。眠たいと集中力も散漫だろうと別の魔法をやることを提案したサンポに反して星は強情で、はやくマスターしたい! と駄々をこねるため仕方なく練習を始めたのだが。

    「ぇ……!?」

    眠気で星の注意力が完全に途切れてしまった瞬間、サンポは本当にうっかり“深すぎる”ところまで侵入してしまった。今まで星の防御がうまく行かなくとも浅いところで引き返せるくらいの力加減でやっていたことが、星の一瞬の無防備によって事故を引き起こしたのである。自分の中にだけ存在する記憶を他の人間に探り当てられて、覗き見られて、心を直接指でなぞられる感覚。そのせいで震えた声に名を呼ばれて我に返れば、机を挟んで向かい合っていた星がふらりと床に倒れ込んだ。

    「ワーーーッ星さん!?」
    「ご、ごめん……」
    「だから今日は他の呪文にしましょうって言ったじゃないです、か……」

    何をやっているんだと席を立って星のほうへ駆け寄ったサンポは、派手な音を立てて床に倒れ込んだ身体を支え起こしてやろうとして、それで。

    「開心術、って、うぇ、なにこれ……本気で記憶覗こうとしたらこんなにきもちわるく、鳥肌やばいんだけど、防ぎ方知ってなきゃ詰みじゃんか、」

    サンポがうっかり記憶を(大半がカフカやゴミーとの記憶であったため覗き見たことは許してくれるはずだ)深く漁ってしまったとき、心をこじ開けられる感覚が慣れなさ過ぎたのか、星は無意識に息を止めていたらしい。酸欠でほのかに赤くなった顔と、気持ち悪い感覚のせいで潤んだ瞳が――まあ、それはもう、良くなかった。

    建前をおいて少し噛みつくくらいなら許されるだろうと言い訳をしてしまうくらいには。

    「……じゃあちょっとだけ違う方法で練習しましょうか。眠気だけは飛ぶと思いますよ」
    「へ?」

    サンポは星を支え起こして椅子……ではなく机に座らせると、額同士をぴたりとくっつけたまま呪文を唱えた。開心術に対抗して星もまた心をどうにか閉ざそうとするため普段通りの押し引きが始まったが、今回はそれだけで終わらせる気はない。サンポは星の目をじっと見据えたまま、

    「っん!?」

    いつかのように、唇へ噛みついた。

    「ほら、集中してください。頑張って心を閉ざして……」

    無責任な言葉を投げかけながら舌までねじ込めば、肩をびくりと跳ねさせた星が開心術へ必死に抗いはじめる。見えかけてはまた見えなくなる記憶の断片を追いかけながら、星の唇に噛みついたのはホグワーツを卒業した日以来だなと何気なく思い出した。机に置かれている星の手に重ねていた掌へ知らず知らずのうちに力を込めてしまっていたらしい。

    「流石に無茶、―――――!」

    星は恨みがましげにサンポを睨みながらも渋々閉心術で対抗し始めてくる。

    理論で行くと、完全に会得してさえしまえば、閉心術の使い手は開心術に破られることはない。そもそもサンポは開心術のスペシャリストという訳でもないのだから、閉心術を本当に完璧にしたければ星自ら大魔女カフカに特訓してもらった方がいいに決まっている。今の星は意識的にどうにか抗っているだけだ。動揺ひとつで崩れる閉心術は開心術士の前では何の意味もなさないだろう。

    なんて。
    言葉を切り取れば正論だけの、実の所は建前ばかりの理由付けで唇を奪った。

    「キスしたいならキスしたいって言えばいいじゃん、」

    息を切らしながら星が呟いた言葉の意味を誤解しないように訳せば、「もっとマシな魔法の練習方法くらい考えつかないの?」になる。こんな無自覚に煽ってばかりの言動にも何年振り回されてきたことか。サンポはすこしだけ性急な手つきで星の頭を引き寄せて、微かに後ずさろうとはするが拒もうとはしてこない唇を塞ぐ。したいといえばさせてくれるのか、なんて言葉は今更野暮だった。

    二人の間には言葉で説明ができない事ばかり起こっている。

    純血で、両親が幼い頃に殺され、闇の魔法使いである大魔女カフカに育てられた星。
    混血で、純血主義のそれなりに地位のある家で、一年遅れでホグワーツに入学したサンポ。

    どちらも身を置いた境遇故にネジが一本、二本外されたまま育ち、どうやらそのネジを拾わなくても大した問題にはならないらしいと前向きに自己解決して、足りないままの自分で生きてきている二人だった。欠けたものを埋め合っているわけではない。埋めなくて良いことを互いに知っているから、気楽だというべきだろうか。

    だからホグワーツで過ごした時間の終わりに、考えるよりも先に星の唇を奪ったことも、強いて言えば教える側と教えられる側というだけでその他の名前がどうにもつけられない関係も、そういうもので良くて。世の中にはどうしたって曖昧になるものもあって、案外二人にはそれが丁度良かった。

    「……閉心術マスターしたらさ、カフカの秘密とかを無理やり同僚に覗かれる心配はなくなるよね? 実はコートの手入れにこだわってるとか、そういうの」
    「知りませんよ……コートの手入れがどう秘密につながるんですか」
    「え? うーん、コート屋に潜入してカフカを待ち伏せるとか? 私しか知らないカフカのことって、秘密って言えると思うんだけどなあ」
    「じゃあこの部屋で起こることも、僕と星さんしか知らないわけですから、全てが秘密という訳ですねえ。貴女には閉心術をマスターしてもらわないと。僕の商売の機密が流れてしまうかもしれませんから」



    なんて軽口を叩いたんだったか、と思い返しながら身支度を終えたサンポは寝台の横にしゃがみ込み、瞬きの間に眠りに落ちた星のことを何となく見つめていた。もうじき試験だからか目の下には隈ができている。

    「……あれこれ建前をつけてもキスしかしないのは、無防備な誰かさんがホグワーツという庇護下にあるからで、別に貴女を取って食うつもりが無いわけではないのに。吞気ですよねえ」

    心地良さそうに寝ている頬を掴んで、起きない程度に弄んでみた。

    どれだけ鈍かろうと、“その日”が確実に訪れることだけは多分星も頭の奥底で気付いている。それでも星はここにいて、サンポの手が届くところにいて、他愛もない話をしているということ。この部屋にいる間だけは、サンポの星だ。大魔女のいとし子でも、他の何者でもない、サンポといる時の星。

    今は、このささやかな秘密の共有が心地良い。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖💖💖👏👏😭😭🙏🙏💖💖💖💖💖💖💖💘💘💘
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    sheep_lumei

    DOODLE星がサンポと端末越しに仲良しになっていく話

    本国のすた~れいる公式がビデオ通話してるサン星を供給してくれたから私も煎じておくよ ありがとう公式 やはり公式を信じて幻覚を煎じながら生きていくしかない あとお揃いだったんですかブレスレット? なに?
    星間交信記録・Record 1

    朝、とはいっても星にとっての朝は彼女が起きたその瞬間をさす。特に用も無かったため昨夜はゲームで夜更かしをしてしまい、当然ながら時刻は昼下がりだ。寝ようと思えば無限に寝ることができそうだと思いながら開いたばかりの目を閉じようとして――ふと、じゃあ何故自分はいま目を覚ましたのかと顔を起こす。

    震えている端末。今日は当然アラームなどかけていないため、着信に他ならない。眠気を振り切るように手を伸ばしてどうにか掴んだ瞬間にバイブレーションはぴたりと止んでしまったが、微睡みながら顔認証で表示した通知にはなのかの名前がある。

    「なの……」

    そういえば昨日、「明日はベロブルグの行政区でうんたらかんたら……」駄目だ思い出せない。なのかが何かを買いに行くと言っていた記憶はあるが、十中八九電話はこの件だろう。それもビデオ通話の通知だ。服か、それとも食べ物か。何にせよ折り返しの電話を入れようと画面をタップした拍子に誤って通知欄をクリアしてしまった。
    7835

    recommended works