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    とろみ

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    とろみのポイピクです。公開垢に載せない方がいいかな〜と独自に判断した絵をポイします

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    とろみ

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    風さんお誕生日おめでとう小説(めっちゃ短い)です〜〜〜間に合わなくてごめんなさい!風さんおめでとう!!
    ⚠️がっつりCPとかではないですが、風ヴェル要素あるので注意です

    #風
    #風ヴェル

    春嵐春がきた。といっても、あくまで暦の上での話で、体感としてはまだまだ冬の冷気がしつこく居座っており、春の訪問を引き延ばしている。春と冬の攻防はここ一週間ほど、三寒四温という形で続いているが、今はまだ冬の方が優勢に思える。冬の寒きを経ざれば春の暖かきを知らず、なんて言葉も東洋にはあると聞くが、春の暖かきを知る前に死ぬやつもいるだろう、などと見当違いの屁理屈を捏ねたくなるほど、この島国の冬はイタリア生まれには堪えるものがあった。

    「ピンクの花が咲けば春なんじゃないのか。全く暖かさを感じないが。」

    澄んだ空に揺れる紅梅を睨みつけながら、ヴェルデが文句を垂れる。血の気のない薄い唇から吐かれる息の白さが今日の寒さを一層際立たせていた。

    「あれは梅ですね。開花時期としては早春に当たりますので、暖かくなるのはもう少し先かと。」

    枝先で揺れる梅の花に手を伸ばしながら、風は淡々と答える。指先に触れられた花びら達が、恥じらうように遠慮がちに首を振った。

    「んなことは知っている。皮肉だ、愚か者め。」

    枯れ枝のような身体を折り曲げながら吐き捨てるヴェルデの顔色はいつも以上に白く、乾燥した目元だけが痛々しげに赤く染まっている。

    「そんな薄着でいたらそりゃ寒いでしょう。ほら、私のを貸してあげますから。カイロもありますよ。」

    「いらん。さすがに誕生日に借りをつくろうとは思わんよ。」

    着ていた上着を脱ごうとする風の手を軽く制すると、ヴェルデは所在無さげに足元の土を蹴った。その冷たくも温かい言葉に、風は目を瞠る。

    「覚えててくれたんですね。」

    ヴェルデは足元の土と睨めっこしながら、どうでも良さそうに言葉を返す。

    「私の記憶力を舐めるな。特に貴様の誕生日は数字的にも覚えやすいからな…。」

    「ふふ、ゾロ目な上に桃の節句ですからね。昔は男のくせにひな祭りが誕生日なんて、などと揶揄されたものですが。」

    理不尽ないじりですねと笑ってみせながら、風はふとそういえば雲雀恭弥の誕生日は端午の節句だったか、なんて思い出す。なるほど、彼らしいと言えば彼らしい…そう根拠なく納得していると、地面から顔を上げたヴェルデが意外そうに返した。

    「?貴様にピッタリの誕生日ではないか。」

    「…?そうですか?あぁ…穏やかなところが春っぽいと言われたことはありますが。」

    言葉の真意が掴めず適当に返すと、ヴェルデはその下がり眉をさらに寄せながら呆れた声で詰め寄った。

    「は?穏やか?バカめ、そんなわけあるか。春一番のような化け物じみた突風がお前の荒々しさとお似合いだと言っているんだ。」

    筋違いの解釈をされたことに顔を顰めながらそう吐き捨てると、ヴェルデはまた視線を足元に向ける。繰り返し靴で慣らされた土は、きれいに平らになっていた。

    「化け物って……それは確かに穏やかとは縁遠いですねぇ。」

    この男には私がそんな風に見えているのか。風は口元を抑えながら苦笑する。私から言わせればあなたも十分化け物…というか、アルコバレーノは全員化け物と言っても過言ではないが…と、喉まで出かかった言葉を飲み込みながら風はまたくつくつと笑った。

    「貴様が穏やか?ハッ、笑えない冗談だな。貴様は睫毛を揺らすようなそよ風などではない、満開の桜を全部散らす勢いで吹き荒れる春嵐だ。勘違いするな。」

    ヴェルデは顰めっ面を少しばかり緩めると、鼻先で揺れる梅の花をじっと睨みつけた。まるで花に喧嘩を売っているようなその様子に滑稽さを覚えながら、風もまた梅の花に視線を向ける。

    「ふふ…あなたがそう言うならそうなんでしょうね。えぇ…なんだかもっと好きになりましたよ、自分の誕生日が。」

    「そうか。」

    梅の花が風に揺れた。ふっと鼻先を掠めた優しい匂いが、春がそう遠くないことを教えてくれていた。
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