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    rettannprpr

    @rettannprpr

    ツイッターでつぶやいてるジャンルのらくがき投げます


    腐要素
    自分設定、捏造設定
    露出度高め
    二次キャラ同士の接近(男女問わず)
    女装男装
    男体/女体化(着衣)

    以上の要素が苦手な方は自衛のほどよろしくおねがいします

    ネタバレも有り

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    rettannprpr

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    ぽいぴくの小説ってどんな感じだろ
    ……とドキュメントに置きっぱなしの文章を形にしてみました。

    アルドがダルニスが作る簡素だが旨いトーストを作るという話をしたら、ギルドナが興味を持ってダルニスの家に上がり込む話です。

    後半ヴァレスが出ます。

    塩を少々 何なのだろう、この状況は。
     眼前に広がる情景に、ダルニスはそう思わざるを得なかった。

     自分の家のダイニングテーブルに我が物顔で座る昔からの友人と、青い肌に朱い二角を冠した魔獣の男が遠慮も無く座している。
     その様子は、この家の主ダルニスにはとても奇妙なものに映った。

     事の発端は友人であるアルドが何気なく、時を駆ける旅の途中で仲間になった魔獣の男に、友人の家に泊まりに行った翌朝に出されるトーストが旨いと話をしたことだ。

     その魔獣はことさらそのトーストという食べ物に興味を持ち、是非食べてみたいからその友人の家へ連れて行け、と詰め寄ったという。アルドの方にも断る理由は無いから連れてきた、ということだった。

     人間とは相争う種族であるはずの魔獣とも親しい友人関係を築き、こうして何くれともなく人の家に連れてくるのはいかにもアルドらしいとダルニスは思ったが、それだけ信用されていると思って良いのだろうかと少し嬉しくなった。


     人間と魔獣は敵対関係にある。
     アルドとダルニスが住む緑豊かな村と呼ばれるバルオキーの北に位置する月影の森という、常に薄暗く危険な魔物がはびこるが貴重な資源が採れるという地を巡って互いに争った過去もある。
    だから、特にバルオキーの人間は魔獣に対して怖れと敵意を持つものが多い。

     少し前に世界自体が天変地異の危機にさらされたことで人間と魔獣の和平を唱える者も増えたが、まだその二つの種族が共存しているというには程遠い。
    一部例外があるものの、下手に人間の住む土地に魔獣が姿を現せば混乱は必至だった。

     だが、アルドは敢えて新しく友達を連れて行くよ、といった軽い気持ちで魔獣を連れてダルニスの家に上がり込んだ。
     ダルニスは村に育つものとして染みついた魔獣に対する抵抗感はあるものの、バルオキーの人間には珍しく、ひそかに人間と魔獣の共存を願う者であることを知っていたからだ。


     ダルニスは歓談を始める二人を尻目に台所と食材の貯蔵庫を慌ただしく料理の準備を始めた。
     いつもアルドが泊まりに来ると、決まってこのトーストを出していた。

     ダルニスの家は代々猟師を営んでいるので、狩り取った獲物を村の者に分けたお返しを頂くことが多い。そして、ダルニス自身も警備隊の仕事の報酬もあるので、生活に困らない程度の食材は手に入る。

     まずは、パンを焼くのが趣味のお姉さんに昨日頂いた食パン一斤を3つに切り分ける。
     アルドの分と、連れてきた魔獣の分、そして自分の分。分厚いトーストになるが、魔獣の恵まれた体格ならば平らげてしまえるであろう。

     そういえば、人間用の味付けは魔獣の口に合うだろうか。
    「心配ない。俺はアルドと同じものが食べたいのだ」
    ダルニスの考えに答えるように、その魔獣は口を開いた。

    まだ何も言ってないと驚いてダルニスがその通りの良い声のする方に顔を向けると、その魔獣の男は大したことはないといった体で涼しげな表情を浮かべている。

     アルドが連れてきた魔獣の男。
     ダルニスは自分やアルドと同じくらいの年格好、端正な顔立ちに屈強な体躯。
     アルドと共に壮大な旅をしているという。
     素直にうらやましい。

     ダルニスはアルドとは長年の付き合いだ。その自分がアルドの隣に立つことはできず、この魔獣の青年がアルドと親しくしている。

    アルドと同じものを食べたい、か。

     ダルニスはそう考えるうちに、少しだけ、ほんとうに少しだけ、魔獣の方の塩加減を多くしていた。
     すぐに気づいて、しまったと呟くさまを
     ギルドナは料理の良い手際と共に見ていた。

    「あんな塩少々の妬き方なら可愛いものだ」
    「なんか言ったか?」
    「いいや、何でもない」

     本人が気づいていないのにわざわざ知らせてやることもあるまい。
     ギルドナは一息ついてアルドの友人という面白い男を見つめていた。

     アルドより、少しだけ塩気が多いトーストは
    (さすが、アルドが言うだけあって旨い)
     そして、付け合わせのレタスは新鮮で歯ごたえがよく、卵焼きのほのかな甘みとトロトロ具合は絶品。

    「ダルニスの料理はうまいだろ!な!」
    「……ふん」
     ギルドナはしかし、アルドの前で破顔するのが気恥ずかしく、努めて仏頂面を保っていた。



    しかし、話は続く。

    「ここがアルドの友達という人間のお宅ですか!」
     甲高い声と共に勢いよくドアを開ける音に驚いて、ダルニスは適当な長さの棒切れを片手に声の主の元へ急いだ。すぐに目に入った者にダルニスは息を呑んだ。

    「私、魔王ギルドナ様の一の従者であるヴァレスと申します」
     ダルニスは、眼鏡をかけた優男然とした魔獣を見咎め、手持ちの棒で剣の構えを取った。

    故あって弓使いに転向したが、かつて得物にしていた剣を振るう動きも体が覚えているはずだ。もしこの魔獣が向かってくるようなら撃退するしかない。

     だが、ダルニスが睨みつけていたその魔獣は緩やかに目を閉じてため息をついた。
    「やれやれ。教えを乞おうとする者への出迎えがそれですか…」
    人間とは野蛮な生き物です、などと呟くヴァレスと名乗った魔獣の男に、いきなりドアを乱暴に開けるのとどちらが野蛮だ。
    とダルニスは毒づきたくなった。

    「俺に何の用だ」
    「ですから、お前に教えを乞おうとしているのです」
     慇懃な口調とは裏腹に敵意と害意を隠さないヴァレスに、ダルニスは警戒を解かない。ヴァレスはため息をついた。

     人間などという力もなく、その癖不快な小狡さを持つ薄汚い生き物に何故頭を垂れねばならんのか。

     魔を統べる王と敬愛するギルドナ様を門前払いしなかった事は評価するが、何も聞かずにこのように敵意を見せるとは分別のつかぬ男だ。いっそ獣化して痛めつけて言うことを聞かせてやろうか。

     しかし、ここまで人間に対する悪意を隠すこともしないヴァレスに、対話を止めないダルニスはよく堪えていると言える。

    「俺に何を教えてもらおうというのだ」
    「お前は先日、ギルドナ様に料理を出したとか。忌々しいことにそれが高貴な舌のギルドナ様のお気に召したそうだ」

     意外だった。
     確かにダルニスは先日友人のアルドが連れてきたギルドナにトーストを作ったが、彼は特に顔色一つ変えることもなく淡々と食べていた。

    「そう美味しそうに食べているようには見えなかったが」
    「そうですか?ギルドナ様は焼き加減も塩加減もとても良いと言っていましたが」
    「それなら良かった」

     アルドと同じものが食べたいという希望は叶えられなかったが、気分を悪くしていない様なら良かった。
     ダルニスがそう胸を撫で下ろすと、ヴァレスは一段と険しい表情で眼鏡の位置を直す仕草で訝った様子を見せた。

    「まさか」
     そして放たれるヴァレスの呟きに、ダルニスは身構えた。
     はっきりとした敵意を感じたからだ。
     ぴりぴりとした空気がダルニスの警戒を最大限に引き出した。
     握った棒切れに力が籠もる。

     しかし次にヴァレスが放った言葉は、その警戒が徒労に終わるものだった。

    「人間風情がギルドナ様の好意を得られたとでも思っているのですか?」
     ダルニスの顔が見る見る引きつっていった……。


     
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