花道がアメリカに発つ日。洋平は自分の車で花道を成田空港まで送っていくことにした。定員オーバーになるため他三名は乗らなかった。極狭のトランクには入らなかった特大のキャリーバッグを後部座席に押し込む。
軽自動車の助手席は花道には狭かった。シートを限界まで下げても足は窮屈そうに折りたたまれているし、肩が少し背もたれからはみ出る。シートベルトが苦しいという文句がおかしくて、笑いながら洋平も運転席に乗り込んだ。
洋平は免許を取って半年も経たなかったが、危なげなく車を走らせていく。
「すげえな洋平、運転もう慣れっこか」
「まあな。花道は免許取るとしたら……アメリカで取れるんかね」
「わかんねー!」
しばらく他愛のないことを話していたが、やがて花道は助手席で眠りこけていた。昨晩は時差ボケ対策と称して夜通し連中と騒いでいたから眠くなるのも当然だろう。カーステレオのボリュームを下げた。
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