「怪我なし!水よし!食糧よし!同行サーヴァントだめ!」
状況確認は大事だ。
同行サーヴァントとはぐれてしまったが、携行品は失っていないし体力は十分ある。
通信も阻害されてはいない。
管制室からのナビゲーションを受けられるなら、一時的な分断は大きな問題ではない。
「こちらから観測は出来てる。合流ポイントの座標を送るよ」
「了解。敵影は見当たらないけど、どうです?」
「近辺に魔物の気配はなし!小型の獣くらいさ。でも十分に気を付けて!」
幸い気温も天候も安定しているが、獣道しかないような山中の移動である。
そう離れてはいない合流ポイントまで、半日程度掛かりそうだ。
軽く頬を叩いて気合を入れる。
「ハイキング頑張りますか」
「慣れたもんだな」
「テスカトリポカと一緒だとほぼ毎回ですしね、そりゃあ慣れますよ」
「そりゃあ何より。頼もしいな」
「ふふーん、そうでしょそうでしょ……?」
いつの間にか肩に小さな黒猫のような何かが乗っている。
マスコットじみたそれが発する声はよく聞き慣れたもので。
「ワーッ!!?何これ!!!?えっもしかしてジャガー???テスカトリポカ……?」
「オレも流石に学んでね。レイシフト前に仕込んでおいたのさ。コンパスみたいなもんだ。本体のいる大まかな方向くらいはわかる」
テスカトリポカの試練を呼び込む性質故か、レイシフト時にはぐれるのは恒例行事のようにもなっていた。
合流に苦労した事も少なくはない。
それを少しは気にしていたらしい。
「べ、便利ぃ……」
「戦闘能力には期待するなよ?行くべき道を示すナビゲーションさ」
ニヤリと笑う姿に普段の彼が重なって見える。
「はは……お喋りなナビだなぁ」
「寂しくなくていいだろ?」