全能ではあるが万能ではない。
戦略を間違えればカルデアへの強制退去を喰らう事もある。
正気を疑う申し出を契約者がしてきたのは、何度目かの強制退去を経験した時の事だった。
「あん?本気で言ってるのか?」
「冗談でこんな事言わないでしょう」
自分の存在全てを捧げるから、この戦いの最後まで自分の傍にいて欲しいだと!
勝利すら願わない。
戦神のこのオレに、戦の加護を願わないとは。
「神に身を捧げるその意味をわかっているんだよな?」
「……言った通りマスターとして支障が出ない分ではあるけど、それ以外はあなたの好きにしてくれてかまわない」
服の裾を掴む指が震えている。
元より最後まで付き合う気だ。
こんな捧げものがなくたって。
だが、差し出されたものを快く受け取るのが神ってもんだ。
「受領した」
ああ、本当に愚かな選択だ。
非合理がすぎる。
そんな顔をするな。
気が済むまで傍にいてやるから。