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    byaku_ichi

    @byaku_ichi

    鰤の白一大好きな腐女子がいるところ。

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    byaku_ichi

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    俺だって女だし、恋したいし黒崎一護、現世・空座町に住む死神代行。性別は女……なのだが、その見た目と話し方から男と思われている。
    そんな一護が友人である死神・朽木ルキアに『恋をしたい』と言ったのは、今から一ヵ月程前の事。
    ルキアは一護が女性である事を知る者で、入浴を共にした仲だ。
    心を許した同性に恋の相談をするのは、何らおかしな事では無い。
    問題があるとするなら、相談した日から一ヵ月程は経過しているというのに、未だ一護には恋人がいないという事だろう。
    それには、一護が付けた条件が関係していた。
    一護が付けた条件は、自分は男として見られているので、女性として見てくれる人と付き合いたいというもの。
    理想が高い訳では無いので、一見簡単に満たせてしまいそうな条件だが、満たしている者が一人もいないのが現状だ。
    つまり、殆どの者が一護を『男』と認識している事になる。
    ルキアの幼馴染である阿散井恋次からの呼び出しと、十番隊隊長の日番谷冬獅郎から珍しくお茶の誘いがあった為尸魂界を訪れていた一護だが、内容を何となく察して憂鬱気味。
    今回も条件は満たしていないだろうと思い、心の中で溜息をついた。



    本日、一つ目の用事。
    恋次からの呼び出し。
    待ち合わせ場所は、六番隊隊舎の入口。
    約束の時間が近付いているのに恋次が現れない。
    彼も忙しい人なので、多少の遅刻は許容範囲だが。流石に二十分、三十分も待たされるのであれば連絡くらい入れて欲しいとも思う。
    次の予定があるのだから。
    漸く恋次が現れたのは、待ち合わせの時間を五分程過ぎた頃だった。

    「悪い、待ったか?」

    「・・・遅れるなら、連絡くらい寄越せよな で、要件は?」

    「せっかちだな・・・お前とは、ゆっくり話したいんだが」

    「この後予定入ってるから短めに」

    「そうかよ じゃあ、言うぜ」

    普通告白されるとなると緊張するものだが、一護は何も感じていない。
    期待なんかしていない。
    どうせ自分が望む言葉は出てこない。
    欲しいと願っても、くれないのだから。
    そう思いながら、恋次の言葉の続きを待つ。

    「俺は、お前が好きだ」

    「………」

    「俺と付き合ってほしい」

    「……俺が望んでる条件を、お前が満たしてたらな」

    「条件?」

    「ああ」

    別に難しい条件では無い。
    男勝りな自分を、女として見てほしいだけ。
    でも、殆どの者が同じ事を言う。

    「条件ってことは、同性である事ははあまり気にしてなさそうだな」

    「………」

    やっぱり、予想通りだった。
    自分は男では無く女だということに、気付いてはいなかったようだ。
    恋次とはそれなりに付き合いがある筈の仲だが、条件を満たしていない事実を知り、一護はがっかりするのだった。
    何時になったら、恋が出来るのだろう。
    もしかしたら、この先も出来ないのでは? 不安が過ぎる。
    だが、ここで条件を取り消す訳にもいかない。
    一護を愛する者が多過ぎるから。
    甘い考えかもしれないが、一人くらいは気付いてくれてると思いたい。

    「悪いな、恋次 お前は条件を満たしてなかったみたいだ 諦めてくれ」

    「は!? マジかよ……」

    「俺に相手が見つかるまでの間なら、リベンジ受けてやる」

    「その言葉、忘れるなよ!」

    そう言い残して恋次は去っていく。
    今回条件を満たせなかったんだ。
    また来た所で無駄だろう。
    半分諦めモードで、十番隊隊舎へと向かう。
    冬獅郎は賢く、事務仕事もこなせ、見た目もかっこいい男ではある。
    恋人になれるなら、羨む者もいるかもしれない様な相手。
    問題は人を見る目。
    自分を女として認識してくれているのか、果たして。
    どれだけ賢くて、仕事が出来るイケメンだったとしても。
    一護が望む条件を満たしていないなら、恋人に選ぶ事は出来ない。
    自分は女だ、男じゃない。
    頼むから、気付いていてほしい。
    心の中で手を合わせ、執務室のドアをノックする。

    「入れ」

    穏やかな声がする。騒がしい副隊長は、現在留守にしているようだ。

    「珍しいな、冬獅郎一人なんて」

    「アイツなら檜佐木達の所だ 真昼間から飲みに行きやがって・・・」

    十番隊の副隊長は松本乱菊。
    相変わらずの酒豪だと、一護は思う。
    だから、冬獅郎は自分を誘ってくれたのだろう。
    見方を変えれば、今が告白のチャンスでもある。
    乱菊がいたのでは、何を言われるかたまったものではない。

    「この後、予定は?」

    「ねえよ」

    「そうか なら、茶を淹れよう」

    「ああ、貰う」

    冬獅郎はお茶と菓子を一護に出し、正面のソファーに腰掛ける。
    先程まで仕事だったのだろう、お茶を飲むと一息ついた。

    「…さて、黒崎」

    「んだよ」

    「松本が戻ってくると色々面倒だからな 早いとこ、要件を済ませたい」

    「要件って何? 告白?」

    「……まぁ、そうだな」

    言わなくたって分かる。
    自分が呼び出されるのは告白の時くらいだと。
    でもいつも望む言葉はもらえない。

    「お前が好きだ」

    「……俺が望む条件を満たしてたら、考えてやらないこともねえけど」

    「条件?」

    「ああ」

    一護はお茶を啜り、冬獅郎からの答えを待つ。
    もちろん、期待などしていない。
    出てきた言葉は案の定だった。

    「やっぱり、異性じゃなきゃ嫌……って奴か?」

    「まぁ……」

    そうだけど、そうじゃない。やっぱりダメなんだと心の中で落ち込む。

    「……そうか、残念だ」

    「……そうだな」

    それはこっちのセリフだ。
    口に出すことはしない。
    恋次もダメ、冬獅郎もダメ。
    なら自分は誰となら付き合えるのだろうか。
    悩みだけが降り積もった。

    「お茶、ご馳走様」

    「ああ、また来い」

    今回もダメだったかと落胆し、十番隊隊舎を後にした。



    帰るにはまだ早い。
    夕日が傾き始めた頃、少し瀞霊廷内を歩く。
    トボトボと歩いていると、後ろから声を掛けられた。

    「其の姿……黒崎一護か」

    「……あっ、白哉」

    声の主は朽木白哉。
    ルキアの義理の兄であり、恋次の上司である。
    そろそろ日が落ちるので、趣味でもしに来たのだろう。
    この男が自分に声を掛けるなんて珍しい。
    明日は槍が降るかもしれない。
    そのレベルである。

    「どうした、らしく無い」

    「……俺だって、悩みの1つや2つくらいあるんだよ」

    「ふむ」

    このお貴族様は悩みがなさそうで羨ましい限りだ。顔立ちは整っているし、隊長としての実力も兼ね揃えている。
    世の女性たちが放ってはおかないだろう。
    男に見られてしまう自分とは大違いだ。
    一度は結婚だってしている。
    その奥様は、五十年程前に病で亡くなったそうだが……。

    「あーあ、恋したいなぁ」

    「………」

    「いいよな、あんたは 相手選びたい放題なんだろ?」

    「……彼の様な女共より、兄の方が良い」

    「………は?」

    唐突な発言である。
    どういうことだろうか。
    他の女性より、自分の方が良い?
    意味が分からない。
    男勝りで、女として見てもらえない自分に魅力など有りはしないのに。
    白哉は一護の頬に手を添えて、その瞳を見つめる。いつも以上に優しい表情で。
    一護の心を掴むのは容易かった。

    「えっと……///」

    「私に触れられるのは嫌か?」

    「そんなことはねえけど……」

    「ならば良いな」

    「………///」

    あまりにも自然なその動作に、思わずドキドキしてしまう。
    やはり貴族だ、女性のエスコートやら扱いやらは慣れているのだろうと一護は思った。
    顔が近づいてきて、耳元で囁かれる愛の言葉。
    これ以上されたら心臓が壊れてしまうのではないか。
    そう思って白哉に静止の声を掛ける。

    「ま、待ってくれ……!」

    「……何だ」

    「あんたは条件満たしてるのか?」

    「条件、だと?」

    「そ」

    不服そうな顔をして一護の言葉を聞く白哉。
    付き合う為に必要なことなのか。
    愛する一護が言うのだから、仕方なく黙って聞くことにしている。

    「……どうせ、誰も気付かないから」

    「成程、そういう事か 兄の望みは言わずとも分かる」

    「………」

    「然し、誰も気付かぬとはどういう事だ 私以外にも、兄に好意を寄せる者が居たという事か?」

    「まぁ……」

    言ったらいけないような気がしたが、言わなかったら言わなかったで自分の身が危険な予感がしたので、渋々話すことに。
    今日は遠回しに告白したいからと言われ、やって来たようなものだ。
    昼間恋次と冬獅郎に呼ばれ、告白されてきた。
    しかし条件を満たしてなかった為にふったことも告げる。
    それを聞いた白哉の口元に、笑みが浮かぶ。

    「失礼な者達だ 兄を『男』と認識しているのだろう?」

    「そうなんだよ……って、え?」

    「どうした」

    「なんで……!? いつから気付いてたんだ…?」

    「初めて出会った時から」

    「えぇっ!?」

    何で言わなかったんだ! と突っ込めば、言えば本気で戦えなくなるから、と返された。
    白哉は一護が女性だと分かっていながら、一護が本気で戦えるようにあえて言わなかったのだと告げた。
    いつしか自分は、綺麗な心を持った真っ直ぐな瞳の少女に惹かれていたのだ。

    「あぅ……///」

    「で、兄の答えは?」

    「……いいよ そのかわり、ちゃんと大切にしてくれよな……///」

    「当然だ」

    もう少ししたら、学生時代も終わりを迎えるだろう。
    そんな頃に出来た優しい恋人は。
    ちゃんと自分のことを見ていてくれる……そんな人だった。
    今日告白をくれた恋次や冬獅郎、前々から好きだと言ってくれている者たちには申し訳無いが、今この瞬間から一護は白哉だけの人となった。
    ようやく見つけられたのだ。
    この先、きっと多くの困難が2人を待ち受けているだろうけど。
    一緒なら大丈夫、必ず乗り越えてみせると心に誓う。
    一護は、まだ生があるものの死神に嫁いでも大丈夫なのだろうかと一瞬疑問を抱いたが、深く考えないことにするのだった。
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