頬を撫でる風が冷たい。
赤や黄色に染まった葉っぱが、くるくると落ちていく。
11月も中旬、本格的な冬がすぐそこまで迫っていた現世。
尸魂界も同様、寒さがやって来ていた。
朽木家にて。
現世の少年、死神代行・黒崎一護は、ここの当主兼六番隊隊長・朽木白哉にくっついたままじっとしている。
恋次辺りに見られでもしたら血反吐を吐いて倒れるところだが、今は2人きり。
時折吹く風に『寒い』と漏らして。
「其方では寒いだろうに」
手招きされた、白哉の膝の上。
母親の膝の上に座る子どもの様に、向き合って座って。
一護は白哉の背中に腕を回す。
「ふふっ……温かいな」
ぎゅうっと抱きついた相手の体温を感じる。
布団の中、炬燵の中とはまた違う、優しい温もりに目を細める。
自分の背中をぽんぽんとされれば、容易く夢の中へ落ちた。
「……暫くこうしていれば良い」
己の膝の上で眠りに落ちた少年を起こさぬ様、静かに羽織りを脱いで一護に掛ける。
冷たい風が吹いても大丈夫な様に。
目覚めさせられない様に。
風から護る様にして、白哉はそっと一護を抱き締めた。