天音の独白家に帰ると、ずっと独りだった。
机の上には千円札が1枚と、『これで好きな物食べて』というメモ書きがひとつ。
食べる気にもならなくて、いつも財布の中にしまってた。
両親は共働きで、夫婦仲も良くなかった。
だから深夜に帰ってきてはいつもいつも喧嘩ばかり。
僕は、それが嫌で布団にくるまってた。
イヤホンで音楽を聴いて、頭まで布団を被って。そうすれば、いつの間にか朝になっているから。
高校入学と同時に、家を出た。
両親は、引き止めもしなかった。
ずっと貯めてたお小遣いとイヤホンを持って、僕は一人暮らしを始めた。
幸い、僕は愛想が良かったし、大家さんにも事情を話せば家賃を安くして貰えた。
高校でのテストは、ほぼ満点だった。
けどやっぱり、僕は隠した。
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