構ってほしいラスが一仕事終えて部屋に戻ると、読書をしているリオンの姿があった。ただいまと声をかけると、リオンは顔を上げておかえりと言ってまた視線を本に戻す。ピシッと背筋を伸ばして本をめくる姿も美しい。
リオンが夢中になって読んでいる本は、薔薇の剣士。それもラスが書かれている巻だ。特にラスと薔薇の剣士が剣を交え友となるシーンがお気に入りらしく、何度もページを戻して読み返している。自分が書かれているところを読んでくれるのは嬉しいが、リオンの美しい朱色の瞳がこちらを向かないのは面白くない。構ってほしい。
「リオン。」
「ん?」
リオンの隣に腰掛け、チラリとこちらを向いたタイミングで眉をハの字にして寂しそうな顔をする。
「本の中の俺の方がいいのかい?」
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