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    natsu_zemi

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    自宅探索者の過去をまとめたもの

    CoC探索者の過去的なsomethingCase.1 精神科医・桶川圭


    「父を救いたかった」
    「母を救いたかった」

    そう言葉を零す少年の齢は13歳。両親は家に押し入った強盗の手によって奪われ、彼が駆けつけた時にあった熱も気づけばとうに消えていた。

    桶川圭の家庭はごく一般的な家庭と言ってもいい。父は大手企業に務めるサラリーマン。母は専業主婦であり、圭も外で友人と泥だらけになるまで駆け回っては午後のチャイムで帰宅するヤンチャな少年であった。そんな彼が中学に上がってすぐの頃、彼が部活動で夜遅くに帰宅すると不思議と家の電気は消えていた。開けっ放しの鍵に嫌な気配を感じた圭は直ぐにリビングへと駆け込む。
    机の上には赤黒い液体のかかった圭の好物の回鍋肉。家族3人の食卓を囲んでいた椅子は無惨にも倒れていて、そのうちの一つは足が根元から折れている。床にもばら撒かれた赤黒い液体は転々と奥のシステムキッチンへと続いていた。
    「母さん!!」
    無惨に全身をズタズタに切り刻まれた圭の母は圭の声に僅かに応えた。
    「ぁ……け、ぃ……?」
    「母さん!!待ってて今救急車を!!!!」
    「…………」
    「……母さん?…母さん!!!!」
    震えてまともに番号が打てない携帯はまだ乾いていない血溜まりへと落ちてしまう。圭の手から母親の命がこぼれ落ちた。
    「ぁ……か、さん…?」
    叫びたかった。けれど、圭はそれ以上に確認しなければならないことがあった。……既に帰宅しているはずの父は?いてもたってもいられず、血まみれのスマホを引っ掴んでそのまま2階へと駆け上がる。
    「父……さん?」
    血に濡れて、苦戦したドアノブを推しひらけば、そこには母同様血まみれの父の姿があった。
    「ぁ……ああ……」
    父は既に冷たく、もう助かる見込みがないことは医学知識のない圭すら理解していた。
    この無知な手では何も成せない。その瞬間、圭は深い絶望に陥った。

    しばらくして近隣住民の通報によって圭は保護された。一時は彼が殺したのではないかと嫌疑をかけられたが、凶器が見当たらないこと、死亡推定時刻には部活にいたという証言から彼は無実であるとなり、親戚へと預けられることになった。それからは外で遊ぶことを控えて、取り憑かれるように学問に励み、奨学金を行使して国立大の医学部へと入った彼は、外科医を志すことになる。
    しかしその過程で知りあったある精神科医からカウンセリングさせて欲しいという申し出をされた。特に何の異常もない自分でも良ければと、了承したがそこで精神科医から過去の事件から心的外傷後ストレス障害を診断され、要治療と言い渡されることに。そこから彼が医学部を卒業するまでの間、彼は数年越しのメンタルケアが施されることになった。


    この精神科医との出会いが、桶川圭という誰も救えなかった子供が精神科医へと飛躍する大きなきっかけとなった。



    Case.2 探偵助手・外川恋歌


    彼は生まれ持っての美貌を有していた。男女問わずに引き寄せるその見た目は中学に至るまでの彼は特になんとも思っていなかったし、使い方によっては得になると考える程度には長所だと思っていた。それは同様に綺麗な顔立ちを持つ幼馴染の存在も大きかった。
    そんな彼がこの顔を隠して生きようとなるきっかけは高校一年の春。新しい環境へと移ってすぐに彼はひとつ上の女性の先輩に告白をされた。彼女は一目惚れと話していたが、恋歌は彼女のことを何一つ知らない、そんな彼が「ごめん。初対面の奴とは付き合えない」と返事をするのはそう遅くはなかった。

    次の日から鳴り止まない非通知の着信、下駄箱に入れられた気持ちの悪い手紙の数々、吐き気を催すほどの嫌悪感によって高校に行こうとするだけで吐き気を催してしまい、不登校になってしまった。

    この顔がなければこんな目に遭わないのに、この顔がなければ普通に高校に通えたのに。

    そんな考えがよぎった瞬間に恋歌の手にはカッターが握られていて、鏡の前に立っていた。このまま顔をボロボロにしてしまえば、なんて。

    結局、顔を傷つけることは出来なかった。何処までも外川恋歌という男は臆病でここぞと言うところで決断のできない人物である。
    そんな彼の精一杯の抵抗がパーカーとマスクだった。高校には事情を話してパーカーを着用する許可を得て、無愛想に振る舞うようになった。
    変に優しくしてしまえば、また勝手に期待されて面倒事に巻き込まれる。顔を見せれば、執拗に迫られる。そんなことなんてもうごめんだ。



    Case.3 弁護士・■■■■


    ××××、彼はいわゆるデキ婚夫婦の間に生まれた子供であった。
    ×は聡明で、両親の不倫をめぐって深夜に大喧嘩を始めても耳を塞いで目を瞑る策を早くに取り、自身が巻き込まれるのを回避し続けた。母親が不安定な時は極力家には帰らずに外で遊ぶように心がけ、父親に殴られないよう大人が声をかけてきても言いくるめて変な噂が広まらないようにしていた。
    そんな×だったが、ついに両親の離婚が決まり、双方が親権放棄を希望しだした。要らない子供の押しつけ合い。醜い大人同士の口論に、同席していた裁判官にも弁護士にも同情の目線を向けられた。
    結局、法律上の関係で×の親権は母親に委任されたが、すぐに母親は蒸発。×は齢14歳で孤独になってしまった。×はすぐに孤児院へと入れられ、高校入学までの2年間だけその施設で過ごすことになる。

    そこで新たに彼には天王寺惺という名前が与えられた。

    惺の頭の出来は両親譲りのためかそこまでいいとは言えなかった。しかし、過酷な家庭環境に置かれた彼の生存本能としてずる賢い生き方、考え方だけはその辺の子供より一人前に持っていた。

    彼は高校に入ってからとにかく苦手な勉強にも打ち込むようになった。
    ただ漠然と、人を救える職につきたいとか、安定した職につきたいとか、そういう考えは毛頭なかった。ただ当時の天王寺惺は何かしていなければ自分は両親を見つけ出して殺してしまうと本気でそう思っていただけである。

    弁護士になった今、彼の前には泣きじゃくる子供がいた。自身が弁護している顧客も、その相手も子供の目の前で子供の存在否定の言葉を吐いていた。
    「お言葉ですが__」
    彼自身の話を過去の顧客の話に着色したもの、として話してみれば彼らは顔を真っ青にした。


    あぁ、その顔……俺の親だった肉袋共で見てみたかったもんだ。
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