いたちごっこ、友情ごっこ 人材投資会社クアドリオンは、生まれや育ちでハンデを背負った人々に対して金利を高く取らず「応援」という形で人材投資をする為に設立された。
設立したのはほんのつい最近で、人員は代表取締役と新入社員、二人だけの片生い会社である。
そんな会社が、これから投資対象候補に選んだ二名を初めて事務所に招き、投資をするにあたって面談形式で説明会を行おうとしていた時だった。
「友一先輩、良いんですか。言わなくて」
代表取締役、紫宮京はこの会社唯一の社員が二人掛け用ソファーに座っていたところへ並んで座った。
このソファーに対して、机を挟んだ反対側に来客用の一人掛けソファーが二台並んでいる。「面談はまだなんだしそっちに座れよ」と部下としては横柄な態度でぼやかれたが、京は特に気にせず話を続ける。
彼が何をしようとしているか、改めて自覚させる為に、説明的に。
「……天智君と沢良宜さんの金利の一部を二人に内緒で自分が負担するだなんて。これを二人に知られたらどうするんですか」
美笠天智と沢良宜志法、この二人が人材投資会社クアドリオンの投資対象お客様第一号二号である。
天智は高校中退後、弁護士を目指しながら伝手のある町工場の社長に雇われて働いている技術職の青年で、志法は金銭的な理由で諦めた医大の代わりに看護学校に通いつつ医学を勉強している医者志望者である。
二人が投資対象候補者に選ばれた共通点は、返金能力の高い職業に就く可能性が高いこと(将来的に返金する意欲がある旨を今回の面談で改めて確認する)。
そして、その職に就く為に金銭的な問題を抱えていること。
その共通点が生まれたきっかけは。
「だって、俺のせいで、二人は夢を叶えられてないんだから」
二人は、この会社唯一の社員、片切友一と『友達』だった。
友一が会社に入社前、二年間意識を失う大怪我を負った。その大怪我は意識を取り戻す可能性は低いとされ、二年で目覚めたのは奇跡に近いと後に医者から伝えられた。
延命したところで目覚めるのか、または意識を失ったまま生涯を終えてしまうのか、それがいつになるかも分からない。患者の延命期限はまるで見通しがつかない、莫大な費用が掛かる、とも告げられた。そんな行く先の分からない状態であり身寄りのいない友一には本来延命措置は施されないものだったが、結果的に『四人分』の延命費用が費やされた。支払った四人の内の二人が天智と志法だ。
このおかげで、今でも友一は生きている。
四人には、自分達が払いたくて払っただけだから友一は費用のことを気にしなくて良い、と言われた。
その言葉で、友一が簡単に納得出来る訳が無かった。
命の恩人にただ恩返しをしたい、という発想は京にも理解し難くはない。本当は二人だけではなく四人全員に全額耳を揃えて返したい筈だ。
前から協力者として彼ら五人の仲間(チーム)に自ら押し入った時から、いや、もっと友一と初めて出会った時から、彼らの事情を(最初は作戦として情報を流される形で)聞かされてから、彼らのことを知った。見てきた。
友一以外の四人は、友達の友一のことを理解っていなかった。部外者で新参な自分の方がよっぽど片切友一の理解者だった。だって「僕は天才だから」。友一の考えてることは理解るし、どこに行っても足手まといにならない超有能だし、トモダチゲーム内だけで使える才能じゃなくて、お金持ちになるっていう夢だってあっという間に叶えられるから、こうして利益を度外視した会社を自ら立ち上げたり、才能を活かす場所が限られた友一を社員に採用することだって出来る。
だけど。延命費用を払う決断に至るまで、四人が悩み抜いた様子を間近で見ていた天才には、気を遣われる側の不器用な馬鹿達の気持ちだって理解出来る。
──友達は、『わからない』けど友一先輩に死んで欲しくないってだけで、友一先輩を生かしたんだよ。
だからさ、友一先輩、─────────。
……なんで、こんな穴だらけで、繊細で、触っただけですぐにでも崩れ持ちそうなグループを繋ぎ止めるのに必死になっちゃうのさ。皆も……僕も。
かつて彼らのチームに入る時に決めた、こちらが損しかない不相応な条件以上に彼らに協力してるなと改めて京は思う。
でも、仲良しの橋渡しに利用されるだけでも構わない。
その理由は、天才の紫宮京にだってわからない。
差し込めなくなって困ったシーンおまけ
①新入社員
「も〜、この人達は……お・金・持・ちの僕が奢るから今度五人でご飯でも食べて来てくださいよ」
「サンキュー社長♡ 遠慮無く頂いておくな」
「友一先輩何で僕には全然遠慮しないの!? 僕上司なんですけど!!」
理由:社長っていなくても会社って設立出来るらしく て、京君は社長なの…?
②メンヘラLINE
「天智君も沢良宜さんも忙しいだろうからそれぞれの日程で面談に来ていいよ、ってLINE送ったんだけど返信……えーと、『志法ちゃんとは 必ず一緒に行く予定だ』……はぁ? あと……『志法ちゃんが』『騙されないように』『毎回契約を確認させてもらう』って。この人間不信男め」
「お前、信用されてないんだな……」
〈ピロン♪〉
「わっ!……『友一は契約を確認しているのか?』」
「してるし、大丈夫だよ……天智」
〈ピロン♪〉〈ピロン♪〉
「『なら』『問題なさそうだが』……!? えっ? 送ってないのに返事した!? てか今更だけど通知うるさくなるからまとめて一回で送りなよ! 何この送り方!」
「フッ、アイツは結構こまめに連絡するタイプだからな」
「だからって小刻みにしなくていいでしょ! まあ沢良宜さんは丸め込……ゲホゲホッ、何言っても疑わずに信じてくれそうだけど、天智君は法学も経営学も齧ってるから指摘されそうだし。寧ろアドバイス貰った方がいいかもね」
理由:なんか匂わせ感がエグい為
病室組LINE友達になってたらいいね👍願望
天智さんの小刻みLINEは私が個人的に好きなアニオリ(1話)要素
③Cグループ絶対に飲み会に行け
「ウエーーイ!! 本職ボーイが音頭を取るぜーー!はーーい、KーP!! はい飲ーんで飲んで飲んで!! あーげてあげてさげてあげて!! どすこいワッショイピーポーピーポーーー!!」
「心木スマン……重い、降りてくれ……」
「エヘヘ、ゆういち……♡ ゆういちのナカあったかいね♡ ……むにゃむにゃ」
「ゆとり、いい加減にしなさい…ってキャアアア!? 天智さんはなんで裸なの!?」
「はは……服を着てると血が騒ぎ出すんだ、服を着てる方が違和感があるんだ……! おい、友一」チュー
「…っんんん!?!?!?」
「……っ、ふぅ。飲み会の作法は知らんが、とりあえず男同士でキスするらしいということを今思い出してな」
「キャーーーーー変態!!!!」ゴッ!!
「イッデェ!!!! 何で俺ェ!?」
「おお……こんどまんがのねたに……するね……むにゃ」
理由:放送事故