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    flowerriddellk2

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    flowerriddellk2

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    渡米五年目の譲介の捏造もりもりな話です。モブがいっぱい出てきます。カプ話はないですが、譲テツの人が書いているので、その前提でご覧いただくのが安全です。

    失われた時を求めて(前編) 朝倉は上機嫌だった。天気は上々、明るい日の光がカフェの窓から差し込んでくる。カウンターからは時折、コーヒーミルの回る機械音がする。人気のコーヒーショップで、若い学生たちがカップを傾けて歓談していた。平和な朝だ。
     なにより、朝倉の気分を高揚させたのは、譲介からの誘いだった。彼がクエイドの奨学金を使って米国留学に踏み切ってから、5年目。大学卒業後にメディカルスクールに進学し、やっと本格的な医学の勉強を始めた。
     「もっと譲介は、自分に頼ってくれないものか」朝倉はずっとそう思い悩んでいた。本人の自立心は尊重するにしても、せっかくそばにいて「なにか助けになれないものか」と思っているのに、彼はつれない様子で「なんとかやっています」と答えるだけだった。
     留学直後の譲介には、痩せ細り、顔色が真っ青で倒れそうな頃もあった。その頃に、無理やり自分が介入して、面倒をみたこともある。だが、そのうち、周りに友人たちが集まるようになり、かれらに支えられて、立派に米国の生活に慣れていったらしい。今はひとりで医学の勉強に励んでいる。それは素晴らしいことではあるが、朝倉としては寂しいものだった。
     そんな譲介がやっと自分に「相談がある」と連絡をくれたのだ。朝倉はとっておきのお気に入りのカフェで彼を待つ。どんな無理難題でも助けになってやりたいと思っていた。
     しばらくすると、薄茶色の髪をなびかせた端正な顔立ちの青年がやってきた。慣れた様子でカフェの店員に挨拶し、こちらを見つけて軽く手を上げて挨拶する。
    「すみません、講義が長引きまして。お待たせしましたか?」
     爽やかな表情で譲介が挨拶する。「そんなことないさ」と笑って答えた。
     大人になった、と思う。心細げな若者が、いつの間にか米国流のタフなコミュニケーションにも慣れ、自信に満ちた穏やかな顔で微笑むようになった。社交辞令的なお互いの近況報告を済ませると、彼が真面目な顔をしていった。
    「相談したいことがあるんです。帰国して、自分の過去について調べたいと思っています」
     一瞬、言葉を失った。神代から、譲介の生い立ちについては簡単に聞いたし、クエイドのデータベースにもあらかたの情報は保存されている。彼の子ども時代が困難に満ちたものであり、荒れた生活をしていたことも知っている。
    「母親に会いたい、ということかい?」
    そう聞くと、譲介は首を横に振った。
    「結果的には、母親に会うことになるかしれませんが、それが目的ではないんです。ただ、自分の生育歴を知りたい。それが一番の目的です」
    「なぜ、今になって? と聞いてもいいのかな」
     彼は「自分のためですね。自分のこれからを見据えるために」と答えた。
    「今学期、精神医学の講義を取りました。非常に興味深かったですよ。自分の若い頃の精神構造が、まさに病的であったことを思いしらされました」
    「それは過去のことだろう? 今の君は……」
    「ええ、だからこそ、もう一度、向き合いたいんです。ライフストリーワークってご存知ですか?」
     朝倉は「最近、心理療法ではライフヒストリーではなく、ライフストーリーという言葉が使われるようになったのは、知ってはいるが」と答える。
    「そうですね、ライフヒストリーは、日本語に訳すと生育歴。そのひとの生まれ育ちの歴史のことです。ライフストーリーは、個人的な記憶をつなぎ合わせて、本人が語る、自分なりの物語です」
     彼はいたずらっぽく、「僕も自分の物語が欲しいと思いまして」と言った。



     譲介がライフストーリーワークを知ったのは、フラットメイトたちとの雑談からだった。みんな、厳しい子ども時代を乗り越えて、クエイドの奨学金を受けて大学で勉強している。
     ここにきて、譲介はとんでもない話をたくさん聞いた。内戦の起きた国で生まれ、父親は出兵して死亡、目の前で母親を爆撃で殺された者。両親がドラッグの依存症で、激しい虐待にあってきた者。DVを振るう父親を、母親が撃ち殺すところを見た者。自分が育ってきた環境はヤワで恵まれたものに思えたくらいだ。
     いつの間にか、譲介も子ども時代の話をするようになっていた。みんな、自分より過酷な経験をしているのに、誰もそれを矮小化しなかった。なかには涙を浮かべて聞いてくれた友人もいる。その寛容とやさしさに触れるうちに、自分もそうなりたいと思うようになった。
     それでも、残念ながら、精神状態が悪く、アパートメントを退去していく者も少なくなかった。自分も含めて、ここにいるのは胸に爆弾を抱えている仲間だった。
    「医者になるには、もっと自分と向き合うべきではないか」
     精神医学の講座を受けて、譲介はそう考え始めた。仲間に話すと、反応はさまざまだった。
    「もう、譲介は十分に落ち着いているのに、わざわざ過去を掘り返すのは危険じゃないか」
    「過去にこだわらず、もう未来に向かって歩いていくべきだ」
    「いや、自分は譲介の懸念はわかる。これから、もっとタフな状況になったときに耐えるための精神力を身につけるためには、過去と正面から向き合う必要があると思ってる」
    「だとすれば、セラピーに通うべきだ。自分一人では危ない」
     フラットメイトがかまびすしく話す中で、英国から留学してきているアミナが口を開いた。彼女は譲介と同じく、幼い頃に施設に引き取られ、両親の記憶が曖昧だった。
    「私は、施設のセラピストとライフストーリーワークをやったことがある」
     アミナいわく、英国ではよく知られた方法で、子どもとセラピストが共同で一冊の本を作る。自分の出自に関する書類を集め、写真や幼い頃を知る人の証言を記録する。もちろん、両親に関する正確な記録があるわけではないが、だんだんと自分の親のイメージができてくるのだと言う。
    「私も子どもだったから、細かいことは覚えてないんだけど。たしか、私が母親について知りたがったのがきっかけじゃないかな。知ったところで、ろくな女じゃなかったことはわかったんだけど」
     彼女は「まあ、子どもにとっては、母親は母親だからね」と笑って言った。
    「単に母親がどんな人だったのか知りたいだけ。それだけでも、ちゃんとセラピストが付き合ってくれたのは、嬉しかったかな。ほら、そういう気持ちを満たしてもらえると、人間に対する信頼につながるから」
     アミナの言葉は、譲介の胸にすとんと落ちた。「そうなんだよ」と考えるより前に口から言葉が出てきた。
    「知りたかったんだよ。でも、それはゆるされなかった。僕も寄り添ってもらいたい。その、今の自分じゃなく、心の中にいる、昔の自分に」
     誰かが「インナーチャイルドかあ」とつぶやいた。厳しい子ども時代を送った大人には、子どもの頃の自分が、いつまでも胸の中にいることがある。かれらは、満たされたかったという想いを抱えている。
    「それなら、わかる」
     フラットメイトたちは頷いて「譲介はそうしたほうがいい」と同意してくれた。



     そこまで聞いて朝倉は「わかった」と頷いた。そして優しく微笑んでいった。
    「一緒に日本に行こう」
     そう言われて譲介は「え」と戸惑った顔を見せた。それを見て「違うの?!」と聞き返してしまう。
    「この話の流れだと、私が和久井くんに寄り添って、過去に向き合うのかと思ったんだけど?! 俺の勘違いなの?!」
     彼のほっぺたが赤くなっている。「そうかあ、私は早合点して張り切っちゃったよ……」と恥ずかしそうに照れて頭をかいた。譲介は「なんか、すみません」と言いながら笑ってしまった。
     この人がずっと自分を心配してくれているのは知っている。それに甘えたくなくて、距離を置いてきた。日本の知り合い、特にK先生の知り合いに頼ったら、過去の自分に引き戻される気がして。でも、この人の存在が、最後のセーフティネットになっていて、何かあれば助けてくれるという無意識の依存になっているのも自覚している。
    「じゃあ、相談って……?」
     そう聞かれて、「それなんですが」と途端に口が重くなる。でも、朝倉に言うしかなかった。
    「ドクターTETSUの居場所はわかりますか? クエイドの力を使えば……」
     朝倉の大きな目がさらに見開かれた。「あの男か」と掠れた声で言う。
    「こんなときに頼るのは卑怯だとは思うんです。あんな闇医者の居場所を調べて欲しいなんて……でも、僕はほかに手段が思いつかない。彼が、いま、どこで何をしているのか……」
    「もちろん、調べることはできるよ。だけど……和久井君は、あの人に会いたいんだねえ……」
     困ったような顔をして、朝倉は「まあ、和久井君の親みたいなもんだもんなあ」と言った。譲介は前髪を軽く触って「朝倉さんから見ても、そうですか」と苦笑して言った。



     フラットメイトたちの話には続きがあった。大学に、ロゼッタという女性教授がいるという話になった。ライフストーリーワークを専門に研究しているらしい。
    「とりあえず、ロゼッタに相談してみてはどうか」
     そう言われて、彼女にメールを出した。自分自身でもライフストーリーワークについて書いた論文を取り寄せてみたが、基本的には施設のスタッフやセラピストが子どもたちを相手に行うワークらしい。成人向けのプログラムもあるが、自分がそれに適応になるのかわからなかった。ロゼッタからは、すぐに返信があり、オフィスで話すことになった。
     彼女の部屋は、医学部の教授とは様子が違った。社会福祉学で、チャイルドケアを専門としていると言う。明るい色のテーブルや椅子が揃えられ、子どもたちの絵が壁に貼られている。東洋や南米、アフリカの可愛らしいお守りや置物が並んでいた。
     ロゼッタは金髪碧眼のいわゆる白人女性そのものの容姿だ。小柄で五十をまわっているが、子どものようなクリクリした瞳で「あなたがジョースケね、ようこそ」と迎え入れてくれた。
    「クエイド奨学生とは何度か会ったことがあるし、どういう目的かはだいたい想像がつくけど……そういう話でいい?」
     そう聞かれて「たぶん」と曖昧に笑ってしまった。こんなふうに、日本風のもじもじした態度を取るのは久しぶりだ。椅子に座ると自然と手をお腹の辺りで重ねてしまう。緊張してる自分に、今更ながら苦笑いする。
    「セラピールームみたいですね」
    「ああ、心理セラピーの経験者? いやよね、セラピーって。私も大嫌い」
     ニコッとして言うロゼッタに、「嫌いなんですか」と笑って返してしまった。
    「あんなもの、好きな人はいないと思う。全然楽しくないしね。ま、私のやってるワークも楽しくはないんだけど」
     コーヒーをカップに注いで「あなたも飲む?」と聞かれたので、「お願いします」と答えた。あっというまに打ち解けた雰囲気を作るロゼッタに、「プロだねえ」と心の中で感嘆した。自分が、防衛本能が強く、相手を警戒して観察する癖があることは知っている。それもお見通しだろう。
    「メールには、ライフストーリーワークを個人としてやりたいと書いてたけど、私はあんまり勧めない。あれは、事情があって施設に入所した子どもたちのための、応急的な処置だから。専門家としては、成人が過去に向き合うならば、心理セラピーが適切だと思う。教書的にはあなたにそう言うことになるんだけど」
     彼女の目がこちらをみて「クエイド奨学生でメディカルスクール在籍。十分なステイタスだと思う。なにか、セラピーが必要な問題行動でもしている? ドラッグとか?」と聞いた。
     じっと見られて「そういうわけではないんです」とぎこちなく笑った。
    「僕は三歳のときに施設に預けられました。両親を知らずに育ち、大人になりました。それでも、一度、父にも母にも会っています」
     ロゼッタが話を促すようにこちらを見るので、「要するに親についてもっと知りたいんですよ」と続けた。
    「なぜ、母親は僕を手放したのか。本当は何があったのか。そのとき、どういう気持ちで、今は何を思っているのか知りたい。それで、ライフストーリーワークを知って……」
     彼女はコーヒーのカップを口につけて、一口飲んだ。「なるほどね」とつぶやく。
    「あなたの話には整合性がある。ロジックとしては、ライフストーリーワークをしたいというのは、もっともだと思う。でも、そのモチベーションは何?」
     青い目がこちらを見透かすように眺める。譲介は「医師として働いていくために、心理的な問題を解決したいと思って」と答える。
    「私から見て、あなたは十分に精神的に安定しているように見える」
    「それは、表面上はそうです。そう振る舞っているから……」
    「表面上で十分だと思うけど。それに……あなたは、お母さんを恨んでる?」
     率直な問いに、譲介は黙ってしまった。改めて「恨み」という言葉を出されると、戸惑った。親についてよく知らないという欠損感はあるが、それ以上ではない。
    「僕には親はいないという、寂しさはあると思います」
    「それは喪失でしょう。愛するもの、愛すべきものを失って、寂しいと思うのは健康な人間の反応です。でも、ときに、親と離れて育った子どもたちは、強烈に『自分は捨てられた』という感情を抱き、恨みを募らせる」
    「わかります。でも、僕は捨てられたわけではないので……」
     そう言うと、彼女が「ふうん」と頷く。
    「捨てられたわけがない、という確信はどこから来るの?」
    「それは、そう言われたからで……」
     考える前に言うと、頭にパッとその人の顔が浮かんだ。長い前髪に、こちらを睨みつけるような目。口元を歪ませた笑い。
     ドクターTETSU。譲介を施設から家に引き取り、勝手に医者にしようとした。母親に引き合わせるかと思えば、名乗ることも許さず、そのまま生き別れにさせられた。なのに、一方的に母親の過去を語り「おめぇは捨てられたわけじゃなかったんだ」と断言した。
     いま思い返せばメチャクチャな話だった。当時は若かったので、真田の言葉をそのまま受け取って、涙まで流して信じ込んだ。救われたとも思った。
     でも、あんまりにも一方的だった。
    「あの、ある人に、捨てられたわけではない、と言われたから信じてました。でも、今気づいたんですけど、それは本当かどうかわかりません」
     話しながら、舌打ちしたい気持ちになった。いま、ロゼッタと話すまで、「自分は母親に捨てられたわけではない」と洗脳されていた。あの人の言うことを真に受けていることに、今まで気づかなかった。
    「とにかく、いい加減な人でメチャクチャで、僕のことを振り回した人なんです。だいたい、母親以前に、僕を捨てて置いて行ったのは、あの人だとも言える。だから、そんな言葉を信じていた僕も僕で……」
     早口でそう言うと、ロゼッタは苦笑して「あなたの問題は、ご両親じゃなくてその人みたいね」と言った。
    「いやいやいや、あの人のことはもういいです。あとは、もう死に目に会えればそれでいいっていうか、逆に死ぬまで会わなくてもいいっていうか……」
    「あなた、さっきと別人みたいよ。そっちのほうがいいと思うけど」
     彼女は「お題目より本質が大事なんだから」と言い、カラカラと笑った。
    「その人とは話したいことがあるの?」
     譲介は「どうでしょうねえ」とため息をつく。たしかに真田の話になると動転するのは本当のことだ。五年も会っていない。どこで何をしているのか。まだ生きているのかすらわからない。
    「僕を施設から引き取って、高校時代に世話をしてくれた人です。衣食住を与えてくれて、安全で暴力のない生活の仕方を教えてくれた。感謝はしてる。でも、あの人は善人じゃない。とにかく、ちゃんとしてないんです。悪です」
    「その悪人が、あなたの母親は、あなたを捨てていないと教えてくれたというわけ?」
    「そ、そうです。だから、悪人なので嘘かもしれない」
     そう言って、自分もメチャクチャだと思った。真田の話をしていると頭がぐちゃぐちゃになる。
    「嘘じゃなくても……僕は、捨てられたわけじゃないとか、そういうふうに一方的に言われたかったんじゃない。えーと、ライフストーリーワークをやった人が言ってたんです。セラピストが寄り添ってくれたって。僕も、そうやって……」
    「その人に自分に寄り添ってほしい? 過去に向き合うために?」
     ロゼッタがまっすぐにこちらを見ている。譲介は子どものようにコクンと頷いた。
    「そう、ですね。母親について、あの人が勝手に僕に教え込むんじゃなくて、一緒に知って行きたかった。もう過去形だけど……」
    「いま、できることなら、その人と一緒に、過去について考えたい?」
    「もし……そんなことは不可能だけど、どこにいるかも知らないし。でも、できたとしたら……」
     そう口にすると、目の奥が痛くなって涙が勝手に溢れてきた。動揺して「え」と目元を手で拭う。
    「みんな、親というと血縁関係のことを思い浮かべるけど、親以上に親みたいな存在になる人が、人生に現れることはある。あなたの場合もそうなのかもね」
     ロゼッタは「会えるといいね」と言って、ポケットからハンカチを出して渡してくれた。



     そう話すと、朝倉は目を潤ませていた。
    「私は、出来る限りの協力をするよ。必ずドクターTETSUを探し出して、会わせてあげよう」
     譲介からすると、感動するポイントのない話だったが、彼にとっては感涙ものだったらしい。予想以上の反応に戸惑ってしまう。
    「ありがとうございます。とにかく、まだ死んでないといいんですけどね」
    「わかってる、もし、彼になにかあっても、私が君を支えるから!」
     朝倉は咄嗟に縁起でもないことを言い、譲介は苦笑した。
    「朝倉先生みたいな人が、僕の身元引受人だったら良かったんですけどね」
    「どうだろうね。当時の和久井君は、私のようなタイプなら、おとなしく家に引き取られたりしないんじゃないかな。家から脱走しそうだ」
     思わぬ言葉が返ってきたが、「たしかに」とも思う。「水清ければ魚棲まず」とも言う。当時の自分にとっては、朝倉のようにキラキラした陽の人間は受け入れられなかったかもしれない。あの、社会から逸脱した闇医者だったから、自分はフラフラとついていった。
    「あの人、ほんとに死んでないといいんですけど」
     譲介は、もう一度、そう言った。

    (後編につづく?)

    *テツは生きてるし、後編が書ければ登場します。
    *「ライフストーリーワーク」は実在する子ども支援のプログラムです。しかしながら、素人がにわか知識で、作品に会わせてメソッドを改変して書いていますので、ご了承ください。
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    flowerriddellk2

    DOODLE渡米5年後の譲介とテツの再会の続きです。カプ描写はないですが譲テツの人が書いているので閲覧注意です。捏造もりもり、モブが出ます。
    失われた時を求めて(中編その2) 日中の気温はどんどん上がる。外はよく晴れ、蝉の鳴く声が響き渡っていた。ぎらぎらと輝く太陽が、真田の世話をしている庭を照らしている。
     譲介はいまだに受け入れ難い。いくら闘病生活で気が弱ったとはいえ、ドクターTETSUが、庭いじりをして余生を暮らすなんてありえない。
     手元の細かな字で書かれたノートに目を落とす。神代が診療所のカルテを全て電子化しているのに対して、真田は変わらず手書きだった。若い時から全ての治療記録をノートに書き留めている。譲介は高校生の頃、彼の大量のノートを読み込み、頭に叩き込んだ。いまおもえば、非倫理的行為も含む記録で、若者に読ませていいものではない。ひどい医者だと思う。
     一番新しいノートを渡された。一人の少年の記録がつけられている。あさひ学園の小学校五年生の男の子、ユウト。半年ほど前に盲腸で手術をしていた。本人が痛みを隠していたため発見が遅れ、相当ひどい状態だったらしい。そこにある文字を譲介は見つめてはため息をつく。
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