シンクレアの部屋は彼の礼儀正しさを反映するかのようにすっきりと片付いていた。私が適当な椅子を持ってきてベッドの傍に腰を下ろすと、ベッドに横たわっているシンクレアが恐縮するように体を縮める。
「あの……すみません、付き合わせて。ご迷惑じゃないですか……?」
〈いや、構わないよ〉
足が痛くて眠れないのだと、シンクレアがそう訴えて私を訪ねてきたのは夜更けのことだった。外傷はなさそうに見えたが、内側が傷ついているのかもしれない。そう思って時計を回してみたものの、シンクレアの痛みが治まることはなく、私の能力が欠落してしまったのかと焦りながらファウストに診てもらえば、少し遅い成長痛との診断だった。
イサンの船酔いに関してもそうだったが、本人の体質から生じる苦痛に関しては、私の時計は意味を成さない。回せばその瞬間だけは楽になるものの、結局は原因を取り除くことができないのでまた新たに苦痛が生まれてしまう。私にはどうしようもないし、責任があるわけでもないのだが、彼らの苦痛を治癒ことができないというのはどうも申し訳なく感じてしまう。
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