『苦悩』人が立っている。
月明かりによる後光がその人物を差し、光の輪郭が人の形を縁取る。表情は読み取れないがその真っ暗な姿から赤い目が二つ光る。
嗚呼またか。
そう思うが、体は動かない。
黒い影は私に近づくと刀のような物を私に振りかざしそして、________。
***
目が覚める。まだ外は暗い。毎日毎日毎日毎日…いつになれば私は快眠できるのか。近衛兵を呼びつけ、新しい寝衣と茶を用意するよう命じる。
「情け無い」
そう呟くと視界の端で何かが横切った気がした。反射的に顔が其方へ向く。
そこには"赤い目を持つ黒い影"が窓の側に立っていた。
「またか」
私はいつも通り、黒い幻を見る。
「出ていけ」
忌々しいその影は私を見つめたまま動かない。
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