ムルヒス【Nヒスが黒インナー姿で居眠りしていたのを発見したNムル】呟き浄化活動後での出来事。
数日掛かった異端狩りが終わった大槌ムルソーは、小槌中槌それぞれに待機の指示を送りながら彼を探している途中だった。
何かと難癖をつけられては、中槌大槌の誰かから教育という名の”暴行”を受けたり睡眠時間を削られていたりと、可愛がってもらっているとは言い難い扱いばかり受けているのを知っているからこそ、自分の目が届く位置にいて欲しいのが本音である。
自分が知らないところで壊されてしまっては困る。例の水が効かない可能性が生まれてしまうからだ。
しかし、異端を浄化する任務に参加する以上、小槌のヒースクリフがこちらに付きっきりでいられるとは限らないのはムルソーも承知していた。
しばらく歩き続けていると、瓦礫の陰に隠れるようにヒースクリフが腰掛けているのをようやく発見した。
「…小槌よ」
静かに呼びかけてみるも、反応はない。
いつもの教育か、と屈んで顔を覗き込んでみると、ただの居眠りな模様。
相変わらず赤黒い汚れに青痣が目立つが珍しく表情に怯えの色は無く、心から気持ちよさそうに眠っている。
念の為に周囲を見渡して他に金槌がいないことを確認したムルソーは改めてヒースクリフの寝顔を観察しようとして、あることに更に気づく。
……何故、胸甲を脱いでいるんだ。
足元に転がる胸甲の存在を認識してから視線を上へ移す。
白い粥に似た経験缶詰しか食わせてくれない影響で入社したての頃と比べると確実に痩せてしまっているだろう。
それでも金槌を振るうのに必要な筋肉は衰えていないどころが、そこらの小槌と比べると上腕筋に胸筋が大きく発達している方だと今でも目撃情報が流れてくる。中には邪な目で見てるとも言いたげな口ぶりで囁く中槌もいたほどだ。
その証拠に、鎧の下に着るインナーとして支給されているノースリーブのタートルネックは彼の発達した胸筋に引っ張られて谷間のラインまで細かく確認できてしまっている。
ムルソーは思わず唸った。
女性ほどの柔らかさはないとはいえ、あの金槌たちに囲まれた環境でしていい格好ではない、と。