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    きしみ

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    きしみ

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    🍊夢 生徒夢主 観念的な話

    落ちないリンゴ 放課のチャイムが鳴った。ざわざわとする教室の中、教卓の担任が
    「今月中に提出だからな! 忘れないように!」
     と声を張り上げた。私は前の席から回ってきたプリントを一枚取り、後ろの席に回した。
    『第一回進路希望調査票』と書かれたその紙を、私はぼんやりと見つめた。

     帰り道、エントランスホールの膨大な蔵書を眺める。そのページすべてに文字や絵がひしめいている様を想像するが、上手くいかない。手に取らないうちは全て張りぼてで、私が手に取った瞬間にページに文字が浮かび上がり、彼らは本のふりをする、そんな気がする。
     出口へ向かう。もやもやとした大理石の床が視界の上から下へ流れていくのを見るともなく見ていると、床の色が鮮やかなオレンジとくすんだ青緑のタイルに切り替わった。立ち止まり、吹き抜けの天井を見上げると、数羽のヤヤコマが飛び交うのが見えたが、まるで天井画のように平面的で、遠い。
     出口を抜けて外へ出ると、私はいつもある想像をする。私が背を向けた途端、あの大きな校舎も、受付の人も、膨大な蔵書も跡形もなく消え去ってしまう。そして私が振り向けば、また何事もなかったかのように景色が描画されて——校舎が現れるのだ。実を言えば、こっちが私にとっての現実だった。世界の、全てのものがずっと存在し続けている様を、私は想像することができなかった。
     蒸すような気温に急かされて、足早に寮の自室へと向かう。まだ終わっていない課題があった。
     自室のドアを開けると、外気とさほど変わらないむっとした空気に満ちていた。静かで薄暗い部屋。私は冷房をつけ、汗が引くまでの間、灯りも点けずに玄関に立ち尽くしていた。
     
     ある日、ホームルームが終わると、私は美術室へ向かった。課題の絵を提出しにいくのだ。去年の教室は美術室の一つ下の階で、たまにハッサク先生の号泣する声が授業中に聞こえてきた。でも今年の教室は少し遠い。
     廊下を歩いていると、向かいから来た生徒たちに名前を呼ばれた。一番先頭にいた子が、どこへ行くのかとか、手に持った絵に興味を示したりだとか、次々私に質問をしてきた。口ぶりからして、去年のクラスメイト達のようだった。
     私は黙って立っていた。先頭の子のせわしく動く手ばかりが目に入った。質問が私に向けられていることは頭では分かっていた。なのに、まるで見えない鉄の壁がそこにあるように、私と皆は遠く隔てられていた。何かを言ったって届かない、こちらからあちらに働きかけることはできない、そんな仕切りが確かにあった。私は何も発することができなかった。

    「は、つまんな」
     先頭の子はやがて吐き捨てるように言った。皆を引き連れて私の横を過ぎていく。そして私が皆を背にすると、皆は跡形もなく消えてしまった。
     私はふたたび廊下を歩きだした。

     今学年から美術の授業をとることにした。
    「美しさに正解はない」
     ハッサク先生が言っていた。だから都合がよかった。何かを描いて提出しさえすれば、感動屋の先生が何かしら見出してくれるだろう。
     しかし、最初の制作課題は授業時間内に提出することができなかった。ハッサク先生が私たちに提示したのは、「好きなもの」というテーマだった。これには悩まされた。なんせ、趣味も特技も何もないのだ。私は授業の間、とりあえず何かしようと画用紙に線を描いては消し、描いては消しを繰り返して、ただ真っ白な画面を汚しただけだった。
     ハッサク先生の教育方針は私と合わないことが多かった。数字で表されない漠然とした評価は苦手だったし、答えのない問いを考えることも好きではなかった。それに、先生にとっても、私のような子供らしくない子供はきっと扱いに困るだろう。

     美術室のドアは開いていた。私は近くの壁を軽くノックして、入室した。
    「失礼します。先日の課題を提出しに来ました」
     壁に生徒の絵を貼り付けていた先生はこちらを向くと、明るい声で言った。
    「完成しましたか。もうすぐ美術部の生徒さんたちが来ますから、あちらで拝見しますですよ」
     そう言って先生は私を美術室の隣の部屋へ案内した。先生が開けたドアの隙間からほこりと油の混ざった匂いがして、先生からたまに香るのはこれかと合点がいった。
     部屋の中は物が多いが散らかってはおらず、ほこり臭いと言っても、座るよう促されたパイプ椅子や低いテーブルは綺麗に掃除されていた。

    「遅くなってすみません」
     私は筒状に丸めていた絵から輪ゴムを外し、広げてテーブルに置いたが、絵はひとりでにくるんと丸まった。反りを直そうと絵を持ち上げ、逆向きに丸めた。先生は慌てたようにテーブルの端に積まれたいくつかの本や文具などを手に取り、絵の四隅にそっと置いた。広げられた絵を見ると、私が逆に丸めた際にいくつか折れ皺が付いたようだった。
    「まだ提出期限前ですから、大丈夫ですよ。制作は大変でしたか?」
    「いえ……」
     正直言って、描画自体はちっとも大変じゃなかった。
    好きなものが思いつかなかった私は、苦し紛れに果物の盛り合わせを描いた。奥歯のような輪郭に、ビックリマークのようなハイライトを描いたリンゴ。他の果物も例に漏れず、何も考えずに記号的に描いただけの絵だ。
     ハッサク先生はそんな絵を見つめて、
    「豪華な盛り合わせですね。フルーツを食べるのがお好きなのでしょうか?」
     と明るい声で言った。
    「ええ、まあ……」
     私は適当に答えた。思っていた通り、描けば先生の方で何かしら見出してくれる。
    しかし先生は、少し黙って顎に手を当てると、
    「絵を描くことは楽しいですか?」
     と尋ねてきた。
    「え?まあ、そうですね」
     出し抜けに質問され戸惑いつつも、また適当に答えた。
    「そうなのですね。では、どういう絵が描きたいですか?」
     答えられなかった。私が美術の授業をとったのは、単位のためでしかなかった。何か描きさえすればそれで済むだろうと、高を括っていたのだ。
    「例えばこちら、リンゴらしくよく描けておりますよ。このリンゴらしさというのは、漫画の絵のような、要素を抽出してデフォルメした『らしさ』ですよね。よくイラストを観察している方の表現だと思ったのですが、そういった表現がお好きなのでしょうか」
     先生はそう続けた。しかし私は答えられなかった。さっきとは違い「はい」か「いいえ」を言えば終わる質問なのに、喉が塞がったように、言葉が出てこなかった。
    「……少し、難しい質問でしたでしょうか? 美術の授業は始まったばかりですから、今すぐに好きな表現が分からなくとも、大丈夫ですからね。沢山の表現に触れていけば、あなたの気に入るものがあるはずです」
     先生は私の絵の講評を終えると、絵の裏側にスタンプを捺した。
    「次の課題も楽しみにしておりますよ」
    「はい。ありがとうございました」
     椅子から立ち上がろうとしたとき、足元に立てかけていた鞄が倒れて、中身が床に滑り出た。
    「おっと……。大丈夫ですか」
     先生と一緒になって床にしゃがみこみ、落ちたものをかき集めた。まだ角がぴんとした教科書。無難な点数の小テスト。その中に紛れた進路希望調査票を、先生は見たようだった。
    「もう進路希望調査ですか。ずいぶん早いのですね」
    「そうですね。一学期が始まったばかりなのに」
    「どうですか。何がしたいとか、ありますですか」
     私は視線を落とした。何一つ書き込まれていない調査票は、鞄の中で揉まれてくしゃくしゃになっていた。
    「特に何もです」
    「まだまだ、分かりませんですね。いや何、まだ時間はたくさんありますから、美術と同じく、沢山のものに触れていってくださいですよ! そうすれば、きっとあなたの好きなことが見つかります」
    「そうですね、そうします」
    「ですから、焦らなくとも大丈夫ですよ。あなたには、たくさんの可能性がありますね」
     私は胸の辺りがざわざわとするのを感じた。
    「……でも私、趣味も特技もなにもないんです。だから……」
     だから、なんなのだろう。私はなぜこんなことを言っているのだろう。
    「そうなのですね。ですが、もしかしたらまだ出会っていないだけかもしれませんよ」
     先生はきらきら光る目をこちらに向ける。
    「この学園生活を通して、それを探してみるのはどうでしょう。もちろん、学校の外にだって、多くの選択肢がありますです」
     先生は拾った教科書を差し出しながら言った。

     その時私は、幼い絵や校庭の子供を見る先生を思い出していた。あの時の目と、今私を見つめる眼差しは似ている気がした。

    「い……、嫌なんですよ。可能性があるとかなんとか。だってそんなの、全部きれいごとじゃないですか!」

     気がつくと、私は声を張り上げていた。

    「できることも、やりたいこともないんです、私には。先生なんかには、人に教えられるくらい好きで得意なことがあった人には分からないでしょうけど……!」
     自分の声が他人のもののように準備室に響く。喉がじんじんと痛む。

     やがて声はキャンバスや画用紙の束に吸い取られ、きん、と鋭い静けさが室内に満ちた。まずいことになったと思った。こんなことを言っては大問題になる。取り返しのつかない状況に指先が冷えていく。

    「すみませんでした」
     沈黙を破ったのはハッサク先生の方だった。
     私は焦った。先生の方に謝られるとは思わなかったからだ。私から謝るべきだった。顔が熱くなっていくのを感じる。喚き散らして先生に当たって、あまつさえ先生に謝らせるなんて、まるで子供ではないか。
    「そんなにも焦っていたのですね。それなのに呑気に小生の考えを並べ立てて、申し訳ありません」
    「違います、あの、すみません」
    「ずっとこの体勢でいるのもなんですから、こちらに掛けてください」
     先生は、パイプ椅子ではなく大きな出窓を指し示した。窓枠の下辺がベンチになっている。
     私は一刻も早くここを去りたかったが、どうすることもできず、促されるまま腰掛けた。ずっと床にしゃがみこんだままだったから、足首の血流が解放されて、床に足を付けているのになんだか足元がふわふわする。

    「そんなに将来について悩んでいたのですね」
    「ち、違うんです。私は……」
     分からなかった。なぜ自分がかっとなって、あのようなことを言ったのか。
     先生は私の言葉の続きを待っている。話すべき言葉を探して目線を彷徨わせるうちに、息が荒くなっていく。いつのまにか私はしゃくりあげて泣いていた。
    「嫌でなければ使ってください」
     膝に置かれたそれは、緑と茶色のチェック柄のハンカチだった。私はハンカチを握りしめ、呼吸を落ち着かせようとした。身体とはうらはらに、思考はやけに冷静だった。先生のハンカチを汚さないようにしないと。ああ、でももう皺になってしまった。私は今何をしているんだろう……。
    「自分のことを自分で決めるのは、大変なことです。今の皆さんは特に選択肢がたくさんありますから、突然その中から選び取ることを求められて、途方に暮れてしまうかもしれませんですね」
     先生は私が落ち着くのを待つように、穏やかに喋りかけてきた。
    「いっそすべきことが決まっていたら、楽なのかもしれませんね。ですが小生は、いろいろなものを見て回って、自分で選び取ることに意味があると思うのです。例え最後に元の場所に戻ったとしても、……すみませんですよ、またあなたの苦手な話かもしれませんですね」
    「違うんです、あの、私が選べること、何も無いって思うんです」
     ようやく私は声を発することができた。声は小さく震えていたが、先生は聞き取ったようだった。
    「そうなのですか。それは、なぜでしょう。分かりますか」
    「みんなと私の間に……壁のようなものがあって。私にしか見えない壁。あっちからこっちには言葉が通るんです。でも、こっちからは何もできないんです」
     私は誰にも言ったことがない鉄の壁の存在を先生に話した。
    「こっちから外に何をしても、何も変わらないって思うんです。だから私にできることって何もないんです」
    「そうなのですか……。小生の話をしてもよろしいですか」
     先生はそう言うと、自分の過去について話し始めた。

    「子どもの頃の小生には、期待されていた役割がありました。簡単に言うと、家業、家に伝わる仕事ですね。それを、継ぐことを求められていました。生まれた時からそうでしたから、小生もそれを疑問に思うことはありませんでした」
     先生の声は変わらず穏やかだったが、手は落ち着きなく組み替えられていた。
    「他の選択肢は目に入らなかった。あなたの言うように、壁のようなものですね。それが小生の周りにあって、その向こうに手を伸ばそうとは思いもしませんでした。ですが、求められることをこなす日々のうち、心のどこかがざわざわとするのを感じていました。いえ、今思うとそうだった、ということですね。当時はそのざわざわに気が付いてすらいませんでした。ですが……」
     先生は組んでいた手をぎゅっと握った。
    「ある時、その壁にひびが入ったのです」
     先生はわざと明るい声を出して言った。
    「知っておりますか、ギターに穴がある理由。ボディの中で発生した振動を外に出すためなのですよ。音の入り口ではなくてね」
    「……つまり、小生の壁に生じた割れ目から、知らず知らず抑えていたざわざわが大きく聞こえだしたのです。それから小生は、自分の気持ちが少しずつ分かるようになりました」
     私はそのざわざわに心当たりがあった。先生に焦らなくてもいいと、可能性があると言われた時に、それを感じたのだ。
    「あなたの壁にも、もしかしたらひびが入り始めているのかもしれませんですね」

     私はその時、あの分厚い鉄の壁から光が差し込むのが見えた気がした。

    「先生、どうして好きなものをテーマにしたんですか、美術の課題……」
     ここまで悩まされたテーマの理由を、私は聞いてみたくなった。
    「小生、最初の制作課題は毎回このテーマにしておりますです。作品には、言葉なき言葉が詰まっていると小生は思います。歌なんかは歌詞があって分かりやすいですけれども、絵も同じです。それと小生は一つ一つ、向き合いたかったのです。……まあつまり、皆さんとお話しがしたかったのですよ」
     私はあの絵に何も込めなかった。あの時は、先生に聞いてほしいことなど何一つなかった。
    「ですが、目の前のあなたの気持ちに気付くことができませんでしたね」
     先生は眉を下げて言った。
    「い、いえ、違うんです。先生に話したいこととかなくって。あ、えっと……」
     自分がまた失礼なことを言っているのに気付いて、しどろもどろになった。
    「ははは!正直に仰いますね」
     それくらい素直でいいかもしれませんです。先生はそう言って笑った。
    「小生は、皆さんに自分のことを知ってほしいのです。好きなもの、そして嫌なものもです」
    「嫌なものも、ですか?」
    「はい。……小生はよく『正解はない』と言いますね。あなたはきっと、それもきれいごとだと感じているのではないですか」
    「……はい」
     幼い思考を見透かされているようで、いたたまれなかった。ここまで分かっていて、なぜこの人は私と向き合うのだろう。私に言葉を寄越すのだろう。
    「ですが、『正解はない』というのは、楽しいことばかりではありませんね。明確な答えのないものに向き合うというのは、自分の価値観や感性と向き合うことですから」
     先生は真面目な声をしていたが、ふっと声音を緩めて言った。
    「自分を信じる必要がある、ということですよ」
    「自分を……」
    「そうです。壁の向こうに声が届くのを信じることです。実際、今日あなたの声は小生にしっかり届きましたね」
     先生は朗らかに言った。

     この壁をいつか無くせるのだろうか。私は生身で世界と向き合うのだろうか。わずかに不安があった。

     私たちは立ち上がり、部屋の出口へ向かった。
    「ああ、それと、壁は完全に無くならなくたっていいと小生は思いますです。自分が出られるだけの隙間があれば」
     先生はドアを開けながら、私の不安を見抜いてか、そう言った
    「たまに入って身を守ることもできますしね」
    「先生の壁は、まだありますか」
    「……どうなのでしょう。長いこと気にせずにいましたから。消えてしまったか、気にならないくらい馴染んだか……。あなたもいつか、そうなりますです」

     私と先生は一緒に廊下へ出た。隣の美術室にはもう部員が来始めて騒がしかった。
    「……あの、今日はすみませんでした」
     私は頭を下げ、再び謝った。頭に血が流れ込んでくるように感じて、また顔が熱くなった。
    「いいえ、大丈夫ですよ」
     いつもの柔らかい声で先生は言った。それでも私の気が済まないでいると、先生が唐突に言った。
    「それより、小生あなたのことをもっと知りたいですよ。そうだ、小生とゲームをしませんか?」
    「ゲーム、ですか?」
    「はい。これからあなたはしっかり前を向いてお家に帰ります。その間に見つけたもの、気づいたことを、明日小生に教えてください。ちょっとしたことでかまいませんよ。……どうでしょうか」
     私は自分のことを知りたいと思った。
     先生は静かに私の返答を待っていた。
    「……やります」
     私が返答すると、先生は弾んだ声で言った。
    「そうですかそうですか!では、明日またお会いしましょうね。きっとですよ」

     私は先生の言いつけ通り、視線を高く保って帰路を歩いた。
     テーブルシティの西門を抜け、あてもなく進む。まっすぐ寮へ帰る気になれなかった。それに、先生に明日教えるものを、まだ見つけられていなかった。
     ピンク色の光を浴びて、ピクニックセットを片付ける人。巨大な物見塔。野生のポケモン達。全てが視界の端を通り過ぎて、背後の無へと消えていく。やはり全てが平面的で、遠かった。
     ……しかし、渾然一体とした平面的な世界から、ハッサク先生が一人の人間として厚みを持って飛び出してきたことで、私の世界観は揺らいでいた。

     セルクルタウンへ差し掛かっていた。私はまだ何も見つけられていなかった。視線が落ちていく。白い土塊の地面。
     その時、足元の薄い影がぬっと前方へ伸びた。そして、けたたましいクラクションに背中を叩かれた。
     驚いて道の端に逃げると、黄色いトラックが私をすれすれに通り抜けていった。
     私は心臓をばくばくさせたまま、その場に立ち尽くした。トラックは荷台の木箱をごとごと鳴らしながらセルクルタウンへ向かっていった。澄んだ空気の中、遠ざかるテールライトが、いつまでも赤く滲んでいた。
     その時、私の中にはある閃きがあった。
     背後の観測できない領域、前方の未だ見えない領域、すべてがクラクションに刺し貫かれて、今見えるものと同様に、ただ事実として世界はあり続けるのだと気付いたのだ。

     私は今日あったことを思い返した。私が酷いことを言ったあの時の先生。すぐに表情を戻してしまったけど、ほんの一瞬、目をわずかに見開いて顔を強張らせていた。私はあの顔をどこかで見たことがあった。
     そうだ。今日廊下で話しかけてきたあの子も、黙り込む私を見て同じ顔をしていた。あれは、傷ついた顔だ。
     それに気付いた時、私が感じたのは、不思議な高揚感であった。私は先生やあの子を傷つけた。
     もしかして私は、世界というものに影響を与えることができるのではないか?

     突如として、世界に立体感が生じた。

     物見塔やオリーブ畑、野生のポケモン達。全てが質量を持ってこちらに迫り来るようだった。私は目に映るもの全てに圧倒されていた。

     私はその感覚をうまく説明することができなかった。それでも、私はこのことを誰かと話したくてたまらなくなったのだ。虫が良すぎるだろうか。あれほどひどいことを言ったのに。いや、だからこそ、戻らなければ。
    「先生!」
     もつれる足の裏に、大きな石の感触が伝わって痛かった。空はもうずいぶんと暗くなっていた。私は学校へ走り出した。
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