雨粒おちた 曇った朝だった。春の曇りは嫌に空気が生ぬるくって重たい。ため息をついて制服に袖を通す私の動きは、それはゆるゆると緩慢に見えただろう。
「ほら、遅刻するよ。さっさとしなさい」
しびれを切らしたように母が言った。せかせかと家を歩き回る母は玄関のドアを開け、空を見上げた。雨が降りそうだよ。そう言うと、着替えを終えて追いついた私に傘を差しだした。
外へ出ると、今にも雫がこぼれおちそうな空模様だった。制服のシャツが湿った空気を含んでいる。学校へは緩やかな坂や階段が続く。毎日こうして歩いているのに、息が切れた。
学校に着くころ、雲の切れ間から太陽が見えだした。
教室に荷物を置いて、グラウンドへ向かう。今日は一限目からグラウンドで授業があった。ゲートを抜けると、視界がぱっと明るくなった。柔らかい、それでいて鼻がツンとするような日差しの中、私は目が慣れないまま当てずっぽうに数歩歩いた。
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