おやすみなさい。 布団を持ち上げて、体を滑り込ませる。シーツのひんやりした感触に、きゅっと全身を縮こめた。やがて布団に体温が馴染んで、羽化したむしが翅を広げるように体を弛緩させていく。
目を閉じながら、今日あったことを思い返す。
人気のない廊下。遠くにポケモンや生徒の声が聞こえる。窓枠に手をかけ、腕を突っ張るようにして伸び上がる。それから上体を窓の外に傾けてー……。
「危ない!」
後ろから声が飛んできた。足を廊下の床にぺたんと付けて、振り返る。金色の瞳と目が合った。
「ハッサク先生」
先生は大股でずんずんとこちらに向かってきた。先生が右手に抱えた紙袋ががさがさと音を立てた。怒られるだろうか。
「身を乗り出しては危ないですよ。何をしているのですか」しかし先生は困ったように眉を寄せて、私に問いかけた。
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