「眠れないの」
「…うん」
「なんか怖い夢見たなら話してごらん」
「見てない…」
「じゃあ子守唄歌うから横なりなよ」
「余計にやなんだけど」
「……怖い夢はさ、口から外に出すと溶けてなくなるんだって」
「…………」
「……………」
「………どこまで走っても真っ暗なとこにいてさ」
「うん」
「あの夜はなんでもなかったのに、誰かに名前呼んでほしくて…」
「うん」
「"そういえばもう誰も名前呼ぶ人なんていないな"って、そう思ったら、足元の地面が急に消えて、どこまでも落ちて…」
「……怖かった」
「………うん」
「よしじゃあこれで怖いの消ーえた」
「ちょっといきなり手叩かないでよ」
「でもさっきより怖くないだろ」
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