ミヤジ誕2024 主の部屋で、睡眠サポートを始める。今日、この日の事を思い出しながら、昨年の事も思い出し、こんな幸せな誕生日があと何回、自分に訪れるのだろうかと考えていた、そんな時。主の手がスルリとミヤジの手を撫でて、指を絡めた。
「主様…?」
そのまま手を唇に引き寄せる。
「ね、もっと祝いたいな…ミヤジが産まれてきてくれた事に感謝したい」
「もうたくさん祝ってもらったよ」
指先を舐めるようにキスして、主は少し不満気に言う。
「もっと…もっと、ミヤジと出逢えたことに、有り難うってしたいの」
ギュッと、ミヤジを握る手が強くなる。
「わがままくらい言ってよ…それとも、私、そんなに頼りないかな?甘えたりとか、して欲しい…恋人として…誕生日くらい」
困った。
「そんなお強請り…どこで覚えて来たんだい?」
物欲し気な顔にキスして、コツン、と額をくっつけた。
「なら…もし、許されるなら…抱き締めて寝たい…」
ゆっくりと、告げると、首に腕を回され、キスされる。ゆっくりと唇を舐めた舌は、少し悪戯っぽく微笑った。
「毎日そうしてくれればいいのに」
主は身体を寄せ、ポンポンと隣を叩く。
「それは駄目だよ…ベッドが狭くて主様がゆっくり眠れなくなってしまうからね」
「今でもムーに占領されてるから、あんまり変わらないよ」
クスクスと笑う主に、
「そういえば、ムーくんは…?」
「今夜は二人きりになりたいって言ったの。寒がりだから、誰かのベッドに潜り込んでそうだけど…誰の所に居るんだろうね?」
「どうかな…ベリアンやルカスは夜更かしだし…」
「やっぱバスティンのとこかな?ムーもいっぱい撫でて貰えて嬉しいだろうし」
二人で考えて、少し見つめ合い、笑いが溢れた。
「明日、一緒に答え合わせしよ?」
そう言って腕を伸ばす主の身体を抱き締める。
「そうだね…もしかしたら、テディくんがムーくんで暖を取っているかもしれないしね」
「ネコって暖かいもんね。ミヤジもムーで暖を取る方が良かった?」
「!そんなわけ、」
否定しようとして、主の言葉が悪戯だとわかる。口角が上がった頬をそっと撫でた。
「主様は私の心も暖めてくれるからね…主様が私の1番だよ」
甘い空気。自分がこんな事を口にする日が来るなんて、思いもしなかった。
「私以外が、ミヤジの一番になるなんて、許さないから」
胸元にぐりぐりと額を押し付け、主が言葉を紡ぐ。
「私以外なんて、許さない…絶対、わたし…」
「大丈夫だよ、主様。安心して欲しい。」
ポンポンと頭を撫でる。
「私は消えたり去ったりしないよ。絶対に、離さないから、大丈夫だ。」
主の依存が、嬉しかった。こんな事を喜んではいけないのに。主には自分しかいないのだと、その事実が、愛しくて愛しくてたまらない。
「絶対だからね…不安にさせないでね?」
「私はもう、主様以外、愛せない」
「うん…うん。私も…」
抱き着く力が強くなる。首筋に顔を埋めた。石鹸の香りが鼻をくすぐる。心地良い暖かさに胸が満たされた。ミヤジも、抱き寄せる力を強くする。
「愛してる…ミヤジだけ、ずっと、愛してる。」
ピッタリと寄せ合う身体が、心地良かった。離さないと、思った。離れないで欲しいと、願った。これからも二人に隙間なんて出来ないようにと、強く。
神に祈るのだろうか。悪魔と契約した分際で。なら、悪魔に願うのだろうか。取引以外は応じないだろうに。他者など、アテにならない。自分に契るしかないのだ。絶対に離さないと。楔を打つのだ。愛し敬い慈しみ、命に代えてでも大切にすると。そんな事を言ったら主は怒るだろう。そうだ、主の為にも、命を落とすわけにはいかない。強く、なりたい。そうミヤジは思う。何人足りとも及ばぬような、圧倒的な強さを、手に入れたい。全ての厄災から主を護り、溢れる程の愛を注ぎ、主が安心して隣に居られるような強さを。絶対に、手に入れてみせる。ウトウトと瞼を重そうに瞬きする主を見ながら、そう、決心する。
「おやすみ、主様…」
額にそっとキスをして、腕枕の位置を直す。
「うん…お誕生日、おめでと…来年も、一緒に祝おうね…?」
「ありがとう、主様」
「約束…」
ゆっくりと閉じられた瞼、少しして聞こえる静かな寝息。愛しくて幸せで苦しい。こんなに満たされていて良いのだろうか。あとから罰が当たるのではないだろうか。幸福感と不安が綯い交ぜになって、鼻の奥がツンとした。大丈夫だ、強くなれば良いだけの話だ。そう思って、ミヤジも瞳を閉じる。
聞こえる微かな寝息、鼻先を漂う香り、肌を包む体温。こんな時間が永遠に続くような気がして、安堵した心からゆっくりと眠りの中に落ちていった。
2024.12.04 END