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    ある・R18

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    ある・R18

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    昔別垢であげてた14イシュ…に住むモブ達の平和なお話(万が一別垢の知り合いへ:私は気づいてないので他人のふりを続けてください)

    ##14
    ##平和

    父が酔っ払って帰ってきた。竜と戦っていた時はしがない一般兵だった父だが、今は酒場でコックともバーテンとも言えない名ばかりのマスターだ。そんな父が興奮しながら「英雄が作った包丁を手に入れた!」と真夜中に帰ってきたら、誰だって酔っ払いだと思うだろう。
    イシュガルドで英雄、と言えば竜詩戦争を終わらせ、世界を救ったあの人しかいない。だが「英雄が作った包丁」?「英雄が使った武器」、百歩譲っても「英雄が使った包丁」ならまだしも、「作った」とは。
    英雄の名前を騙って悪い事をする人がいるときく。大抵は即議長主導で即お縄になるので却って見た事はないが、それでも金になるからと未だにいるにはいるらしい。そんな奴らに騙されたか、それとも包丁界隈に英雄と呼ばれる人でもいるのだろうか。信用ならない酔っ払いから件の包丁を奪って箱を開ける。
    ──後者だったか。
    見ればわかる。一瞬息を呑むほど美しい。たかが包丁と侮っていた。この世にここまでの包丁があるなんて思いもしなかった。震える手で包丁を取って、じっくりと見る。結局のところ切ってみないと私には分からないが、それでも刃は十分研ぎ澄まされているように感じる。さて、包丁界隈の英雄とは一体どんな名なのかと銘を確認する。
    「は?」
    素っ頓狂な声が漏れた。だって、そんな、まさか、そこにはイシュガルドの、世界の英雄その人の名前が刻まれていた。いやいやいや、と綴りを確認して見るが一文字も違う事なくその人だった。
    どういう事かと包丁を持ったまま父に詰め寄ってしまい、さっきとはうってかわって真っ青な顔した父に窘められる。包丁をそっとしまった後、一息ついた父が話した内容は要約するとこうだ。
    自分が経営する酒場にたまたま寄った人が英雄であり、何故か取るに足らない父の料理を気に入ったそうだ。そのまま話が弾み、会計の際にこの新作の包丁を貰ったらしい。
    いや、意味がわからない。英雄と元一般兵で弾むような話とかないだろうし、結局のところなんで英雄がこれだけの包丁を作っているのかも分からない。
    「なんだ、知らないのか?あの方はあらゆる分野に精通していて……そうだ、お前がこの間見てた革細工のお店なんて英雄本人が店に品を卸す数少ないお店だぞ」
    「えっ!?革細工まで!?」
    聞けば、自分で素材も揃えて自分の装備も作り、料理も調薬もできるらしい。英雄とはなんなのか。
    「英雄の銘が入ってるってだけでなまくらでも売れるってのに、最高級品だしてくるもんだから本当に英雄が作った品を手にできるのはほんの一握りなんだ」
    箱にはいった包丁を見ながら拳を握って言う父につられて私も包丁を見る。たしかに、英雄関係無しに欲しくなる程の一級品に違いない。よくぞこれだけの品を格安で売るとかでもなく、タダでくれたものだ。包丁を見ていると横でしみじみと父が呟いた。

    「ドラゴンヘッドに派遣されて良かったと思う日が来るとはなぁ」
     
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