待ち合わせ場所に立っているとふと、自分の吐いた息が白む事に気づく。辺りを見渡せば、陽が沈んで本来なら真っ暗になるはずの街中が眩しい程に明るく輝いて、もうそんな時期かと思う。そう思えるぐらいにはこの世界でも長い月日を過ごして馴染んだのだとも思う。
ザンブレク皇国の国教であるグエリゴール全教の祭がある時はいつもドミナントとして畏まった服を着て厳かな場に立っていた。だが、街中は大抵賑やかで露店も沢山あったと思う。自分がその場に向かう事は無かったが、部下が楽しそうにしていたのは覚えている。
「ディオン!」
聞き慣れた声に名前を呼ばれて顔を上げれば、やはりと言うべきかテランスがこちらへと駆け足でやってきた。
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