フィルムカメラこの頃、マホロアはよく写真を撮る。
聞けば、どこからか持ってきたフィルムカメラを修理して、暇があれば周囲のひとを記録に残しているそうだ。
「なんでデジカメ使わないんだよ」
「ワカンナイカナァ…味がある写真が撮れるんダヨォ」
おれが兼ねてから抱いていた疑問をぶつけると、マホロアはやれやれと言った雰囲気で両手を広げて見せた。本当に憎たらしいやつだ。
「カービィー!また写真送るカラ!」
ひとしきり写真を撮るとカービィに大きく手を振って、その場を後にした。
マホロアは知らないだろうが、印刷した写真のほとんどは俺の城で管理している。
マホロアからカービィの元に手紙で送られてくる写真を、カービィはなぜかおれの元へ持ってくるのだ。
✩.*˚
「カービィ!返してヨォー!」
マホロアのカメラに興味を示したカービィがワープスターの上からマホロアの写真を撮っている。それをマホロアが追って取り返そうと躍起になっている。
「フィルムもタダじゃ無いんだからネー!」
口には出さないが、あいつは写真に写るのか苦手なようだ。
カービィ、メタナイト、バンダナ、ランドの従業員、マルク、スージー、タランザ……ポップスターに住む者やポップスターの外からやってくる者をマホロアはカメラに収め続けた。
はじめは拙かった写真が段々と上達する様子を、おれは密かに楽しみにしていた。
色鮮やかな思い出がアルバムに増えていく。その中には稀に、カービィが撮ったしかめっ面のマホロアがいる。
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マホロアがいなくなってしばらく経った。マホロアを懐かしんだやつがおれの城へとアルバムを見に来る。中でもカービィは頻繁にやってきては、アルバムを眺めている。
写真は日焼けして、少し褪せた色になった。
写真の焼き増しを希望した者のために、マホロアの御用達だった写真屋に訪れる。
しかし焼き増しはできなかった。フィルムは廃棄済で、マホロアはデジタル化も希望しなかったそうだ。
店主のワドルディは思い出したかのようにこう言った。
「『ボクが撮った写真が何時までも残ってタラ、みんながボクのこと忘れられないと思うんダ』、マホロアさんはそんなことを言っていました」
バカだな。写真なんか残ってなくったって、お前のこと忘れるやつなんかひとりもいないのに。
記憶のマホロアは、まだ鮮やかな色彩の中で笑っている。