ソファーに並んで腰をかければ、当たり前のように腰に腕がまわる。そのくらいの接触には慣れたもので、引き寄せられるまま相手の胸に凭れて、そのままニュースを観ていると、しばらくして不埒な掌が腰を撫で始める。思わず漏れそうになった声を噛み殺して、不埒な動きをする手の主を見上げれば、こちらの視線に気づいて嬉しそうに相好をくずす、ゆっくりと近づいてくる意図を察して断る理由もないので瞳を閉じてやる。
触れた唇の熱さに眩暈がする。
相手の体温が心地よく、相手の匂いに安心を覚えるのは相手を好んでいるからなのだろう。唇が軽く重なっただけでは物足りない。
つい離れていった熱を目で追ってしまう。前髪を掻き分けられて現れた額に口付けがひとつ落とされる。
(そんなところではなく、口にすれば良いのに…)
自分から続きを求めるのは乗せられたようで口にするのはなんだか悔しくて、拗ねた気分で首に腕をまわす。ふわりと鼻腔を掠った相手の匂いに少し気分が上昇する。より強く薫るところを求めて首筋に顔を埋め、深く息を吸い込めば、肺いっぱいに拡がる匂いに反応して、腹の奥がじわりと熱くなった。ハーマンの手が髪を梳き、耳裏をなぞる。少しカサついた皮膚の感触が少し擽ったくて、またそれすらも愛おしくて、気持ちよさに思わず熱い吐息が溢れ落ちた。
首裏を撫でる掌に促されるまま顔をあげれば再び唇が重なる。
「…ハーマン、おまえ遠慮がなくなってきたな」
「お前がいったんだろ?俺相手に遠慮するなって」
「……それはそうだが」
確かに言った覚えがあるのでこれ以上詰める事も出来ない。
「一回ぐらいだったら翌日けろりとしているじゃないか。」
そんなに柔じゃないと言っていたのもシュバルツだ。実際に1、2回位だったら翌日なんの影響もなさそうだったことを記憶している。
「……こんなおれは嫌か?」
「…嫌じゃないから困ってるんだ。」
別にハーマンに不満があるわけではないのだ。ただ少し、当たり前のように時間さえあえばカラダを重ねていることに気づいてしまい、羞恥を覚えてしまっただけで、触れられるのは嫌ではない。
「………お前に求められるのは、その…悪くない」
「じゃあ、その…いいか?」
改めてお伺いをたてられると恥ずかしい。でかい図体が小さく見えるのがなんとも情けないのに可愛く思えて笑えてしまう。
「…なぁ、シュバルツ?」
言葉にするとどうも気恥ずかしくて、頷くことで肯定の意を返す。続きをしようと伸びてきた手を捕まえてその手首の内に吸い付く。
「………今日だけだからな、」
尻尾があったなら全力で振ってそうな大型犬の感激のボディープレスを身に受けて少し早まったかと後悔するのだった。