ホワイトクリスマス「雪か…」
窓の外を見ればちらほら舞い降りる白い物。
やけに寒いと思ったら雪が降っていた。珈琲を片手に窓際に立てば、ガラスをすり抜けて冬の匂いがするような気がした。
今日はいつも以上にデスクワークが多くて外に出ていなかったため気づかなかった。雪は大分前から降っていたらしくうっすらと積もり、大地をまだらに白く染めている。
(もう冬だな…)
ぼんやり思いながら薫りは殆どない苦いだけの珈琲を口に含む。朝珈琲メーカーにセットしたままの珈琲はお世辞にも旨くはないがインスタントよりはマシだろう。どうせ飲むのは自分だけ
この様子だと雪は積もるだろう。明日の演習前にゾイドたちの雪下ろしをする時間を考慮しないといけないかもしれない。
明日の演習は共和国軍との合同演習。GFも合流する予定だ。メールを開けばバン達からもうすぐ到着すると連絡が入っていた。もしかしたらもう着いているかもしれない。バン達が積もった雪にはしゃぐ姿が容易に想像できる。
「ニューヘリックにも雪は降るのだろうか…」
夕方にも共和国軍の方々も到着するだろう。雪に慣れていないのなら明日の演習は帝国に有利かもしれないと思えば頬が弛んでしまう。
演習とはいえやはり勝ちたい。
一昨日事前打ち合わせで連絡をしたときハーマンも手加減はしないと笑っていたなと思い出す。
そう言えば一昨日の時点では今日は雨の予定だった。だがこの寒さだと明日も雪だろう。だけどいつもなら億劫な雪も今日は何故か嫌ではなかった。むしろこのまま明後日まで降ればいいのにとさえ思ってしまう。
カレンダーを見れば今日は23日。
「ホワイトクリスマスか…」
津々と降り積もる雪。ハーマンと恋人となり数年が経ったが考えてみればクリスマスを一緒に過ごすのは初めてだ。そんな日がホワイトクリスマスだなんて素敵なんだろう、柄にもないことを考えてしまう。
だけど顔に似合わずロマンチストな奴のこと、きっと自分よりも喜んでくれそうだ。ハーマンの喜ぶ顔を想像したらなんだか胸が温かくなってそんな自分にまた笑った。
広く拓けた地平線の向こう、共和国の方角は雲を裂いて青空が見える。姿もみえない相手をおもい、少し冷めてしまったカップに口付ければ時間が経った珈琲すら美味く感じる。
隣に居てくれるそれだけで特別な日はきっともっと特別な日になる