ハーマンの湿布「ハーマンどうしたんだ、それ」
それと言われてバンに指を指された首筋には掌より少し小さい湿布が一枚貼られている。
「いや、あぁ…ちょっと寝違えてな。」
思わず掌でその場所を隠すように覆えば、少し触れただけだと言うのにズキズキと更に痛みを増していく。じっとりとこちらへ注がれる視線が痛い。バンではなく、シュバルツの
言えない、シュバルツに噛まれたなんて言おうものならどんな目にあうのか想像は容易い。
「ふぅん、痛そうだなー」
「まぁな。まァ、すぐに治るだろうさ。ゾイドに乗る分には支障はないしな。」
「ま、お大事に!」
聞いておきながらさして興味がなかったのか、バンは納得してくれたようで去っていった。
「…痛むか?」
バンが離れたのを確認してシュバルツが寄って来る。そっと首筋に掌を添えてこちらを労わるように見上げてくる優しい視線につい頬が緩んでしまう。
「あぁ、大丈夫。痛くないさ。」
嘘、血が滲むほど強く噛まれたそこは実はかなり痛い。湿布に添塗された薬液が正直な話滲みて痛みを増強させるがシュバルツの自分を心配する顔に癒されるのも事実。
優しいシュバルツの態度に愛されてるなとだらしなく眉が下がる。すっと伏せられる瞳、頬を弛ませて、そんなに気に病むことはないぞとシュバルツへ触れようと手を伸ばせば、掴まれた手、ゆっくりと瞼があがり、現れたのはギラリと鋭く光るエメラルドグリーン。
「…言ったら分かってるな?」
凄む顔が、整っているだけにかなり迫力がある。掴まれた腕からミシッと骨の軋む音が鳴る。
「分かってる。言わないから」
納得したのか去っていく背中に痛む首を擦る。不機嫌な恋人の態度に渇いた笑いが漏れるのは仕方ない。昨夜の自分が悪かったのだし。
まだ身体の調子が戻らないのだろう、歩き方がぎこちない。昨日は少しハッスルし過ぎてしまった。
ベッドの上、シュバルツの恥態を思い出して鼻の下を伸ばしていると、気配を察したのか振り向いたシュバルツにきつく睨まれた。
(わかってるな?)
口パクで言われた一言に降参と了承の意で手を挙げて応えれば今度こそ安心したのか去っていった。
この痛みがちょっと、いやかなり嬉しいなんてそれは秘密だけど