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    村人A

    @villager_fenval

    只今、ディスガイア4の執事閣下にどハマり中。
    小説やら色々流します。

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    村人A

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    フロジェイ小説2本目
    今回はアズールにジェイドがコロンを貰うお話。
    短編なのでサクッと読めます。
    ウツボたちの行動に、アズールも多分頭悩ませてる。

    #フロジェイ
    Floyd/Jade

    纏う香りは貴方の匂いに「ジェイド。これを」
    「…急に呼び出したかと思えば…何です、これ?」
    「コロンです」
    「コロン…?」

    VIPルームに呼び出されたジェイドは、自分の手の中にある小瓶を不思議そうに見た。
    アズールから渡されたそれは、どうやらコロンだそうだ。

    「僕のがなくなったついでに、お前のも頼んだんです。これも身だしなみのひとつ。お前用に調香してもらった特別製です。使いなさい」
    「お気持ちはありがたいのですが…フロイドが苦手かもしれないので」
    「…ルークさんの件ですか?あれはただ匂いが強かったか合わなかっただけでしょう。実際、僕だってコロンを付けていますが、フロイドに臭いとは言われたことがありませんよ」
    「…確かに」
    「折角頼んだし、物は試しです。使ってみなさい」

    華やかな瓶に入ったそれを、ジェイドは少し持ち上げて振る。
    瓶は薄い青で、まるで自分が付けているピアスのような色合いだった。

    「…ところでアズール、対価は?」
    「要りません。……日頃の感謝ということで、受け取りなさい」
    「アズールが素直に感謝なんて…明日は槍が降りますかね」
    「揶揄うな。要件はそれだけです。帰る前にすみませんでした、お疲れ様です」
    「はい。アズールも程々に」
    「分かっていますよ。ほら、早く帰りなさい」

    書類から目を離さず、手で払うような動作をするアズールに、ジェイドは仕方がないという顔をして軽くため息をついた。
    これ以上は言っても無駄だと察し、「失礼します」と言って部屋を出る。

    (…フロイドは、もう少し遅くなりますかね)

    今日は片割れと上がりの時間が違う。
    ジェイドは再び手の中の小瓶を見た。フロイドが帰ってくる前に少しだけ試してみよう、と足を少しだけ早める。
    部屋に戻ると、シワにならないようにジャケットとストールをハンガーにかける。シャツの手首を少し捲って、コロンを開けた。
    手首に少しだけ、プシュ、と振りかける。

    (…これは)

    鼻に突き刺さる訳ではなく、柔らかないい香りが鼻腔に入ってくる。

    (そういえば、僕用に調香したものだと言ってましたかね)

    手首に鼻を近付けて、くんくんと匂いを嗅いでみても嫌な感じはひとつもなかった。

    「これなら、フロイドも気に入ってくれそうですかね」

    そんな独り言の後、カツカツと足音が部屋へと近付いてくると、ドアが勢い良く開く。

    「ジェイド〜!ただいまぁ」
    「おかえりなさい、フロイド。もう少しドアは静かに開けてくださると助かります」
    「え〜、面倒……ん?ジェイド、何か匂い違う?」

    目ざとく気付いたらしく、フロイドはジェイドに近付き、首元を嗅ぐ。

    「フフ。さすがフロイドですね。正解はこれです」
    「…?何この瓶?」
    「コロンだそうです。アズールが、自分のを頼むついでに僕用に調香してもらったから付けなさい、と。どうです?」
    「ん〜……ウミネコくんとは違うし、確かにジェイドっぽい、柔らかくていい匂いする」
    「でしょう?コロンにも色々あるんですね」
    「でもさ」
    「でも?」
    「別のヤツから貰った匂いって…それ、マーキングじゃないの」

    フロイドが、どこかむくれた様子でそう言う。
    その言葉に、ジェイドは思わず吹き出した。

    「ぷっ……あはは…っ!」
    「何がおかしいんだよ」
    「あなた…相手はアズールですよ?ふ、ふふ」
    「アズールでもなんでも、ヤなものはヤなの」
    「そんなに拗ねないで、フロイド。ただの身だしなみですよ、そんなに深い意味なんてないですから」

    むくれた頬を撫でながら、優しい声色で微笑んで言うが、納得はいかないらしい。

    「…やっぱダメ。これ付けないで」
    「おやおや、困りましたね。折角頂いたので、付けるつもりだったんですが」
    「だって、オレ以外の匂い付けてるのがイヤだ」

    フロイドはジェイドの手の中から瓶を取り上げると、拗ねてる様子で握りこんだ。
    ジェイドは少し考え込んだ後、「フロイド」と優しい声色で語りかける。

    「……なに」
    「例え僕がそれを付けていたとしても──」

    耳元で、ある言葉を囁きかける。
    口を離し、ニコリと笑うと、フロイドの顔が赤らむ。

    「…それは、そういうことでいいよね」
    「ええ、もちろん」
    「………ならこれ、使っていいよ」
    「ありがとうございます」

    瓶を返すと、「汗かいたから風呂入ってくる」と言い残して部屋を出ていってしまう。
    出ていく前に、「次から!約束だから!」と付け加えた。

    「ふふ…っ…照れてるのか、がっついてるのか、よく分かりませんねぇ」

    どちらにせよかわいらしい、とジェイドはひとり笑う。

    「…少し、早まりましたかね。でもまぁ、折角のコロンが無駄になるよりマシですよね、アズール」

    今ここに居ないアズールに問いかけ、ジェイドはコロンをテーブルの上に置く。
    部屋のドアに、ふふ、と笑いかける声だけが響いた。

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    あれから数日。
    ラウンジの仕事に入っていたジェイドに、アズールが近寄る。

    「…ちゃんと付けてるんですね」
    「日頃の感謝と銘打って頂いたものですし」
    「フロイドは嫌がらなかったんですか」
    「嫌がってましたよ。貴方の行動を…マーキングだ、なんて言って…フフッ」
    「せめて笑いを堪えろ。…マーキング?僕が誰に…馬鹿馬鹿しい」
    「おや、そこまで拒否されると、さすがの僕でも傷付きますね」
    「口先だけで物を言うのをやめなさい」

    ハァ、と深い溜息をアズールがつく。
    その横でジェイドは真意の読めぬ顔でクスクス笑う。

    「約束で、コロンを使う許可を貰いました」
    「約束?」
    「ええ」

    ジェイドは人差し指を口に当て、ニコッと妖しく微笑んだ。
    そのまま、フロイドへ言った言葉を繰り返す。

    『たとえ僕がそれを付けていたとしても──貴方が夜に、その匂いを上書きしたらいいだけなのでは?』

    「……お前、それって」
    「ええ。コロンを付けた日はセッ──」
    「やめろ生々しい!そういう事情は聞きたくないです。…というか、僕があげた物まで当て馬にされるとは思いもしませんでしたが」
    「でも僕、この匂い、気に入ってるんです。だから、付けたいっていうワガママなんですよね。交換条件…対価、ですね」
    「はいはい。終わった後にお前たちが部屋で何をしようが勝手ですが、仕事の手は抜くなよ」
    「ええ、もちろん」
    「ねぇ、何話してんの?」

    後ろから現れたフロイドに、ふたり共が見る。

    「別に、大した話じゃありませんよ」
    「ふぅん?ま、いいやぁ」
    「ご機嫌ですね、フロイド」
    「ん〜?何でだと思う?」
    「ふふ、何ででしょうね?」

    「──いいから!働け!!!」

    その日のラウンジには、支配人の過去で一番大きな声が響き渡ったという。

    その裏の事情を、寮生たちは、知る由もない。

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    DOODLEディスガイア4に今更ハマりました。フェンリッヒとヴァルバトーゼ閣下(フェンヴァル?執事閣下?界隈ではどう呼称しているのでしょうか)に気持ちが爆発したため、書き散らしました。【悪魔に愛はあるのか】


    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

    LastQed

    CAN’T MAKE十字架、聖水、日の光……挙げればきりのない吸血鬼の弱点の話。おまけ程度のヴァルアル要素があります。【吸血鬼様の弱点】



    「吸血鬼って弱点多過ぎない?」
    「ぶち殺すぞ小娘」

    爽やかな朝。こともなげに物騒な会話が繰り広げられる、此処は地獄。魔界の地の底、一画だ。灼熱の溶岩に埋めつくされたこの場所にも朝は降るもので、時空ゲートからはささやかに朝の日が射し込んでいる。

    「十字架、聖水、日の光辺りは定番よね。っていうか聖水って何なのかしら」
    「デスコも、ラスボスとして弱点対策は怠れないのデス!」
    「聞こえなかったか。もう一度言う、ぶち殺すぞアホ共」

    吸血鬼の主人を敬愛する狼男、フェンリッヒがすごみ、指の関節を鳴らしてようやくフーカ、デスコの両名は静かになった。デスコは怯え、涙目で姉の後ろに隠れている。あやしい触手はしなしなと元気がない。ラスボスを名乗るにはまだ修行が足りていないようだ。

    「プリニーもどきの分際で何様だお前は。ヴァル様への不敬罪で追放するぞ」

    地獄にすら居られないとなると、一体何処を彷徨うことになるんだろうなあ?ニタリ笑う狼男の顔には苛立ちの色が滲んでいる。しかし最早馴れたものと、少女は臆せず言い返した。

    「違うってば!むしろ逆よ、逆!私ですら知ってる吸血鬼の弱 3923

    LastQed

    DOODLE【10/4】ヴァルバトーゼ閣下🦇お誕生日おめでとうございます!仲間たちが見たのはルージュの魔法か、それとも。
    104【104】



     人間の一生は短い。百回も歳を重ねれば、その生涯は終焉を迎える。そして魂は転生し、再び廻る。
     一方、悪魔の一生もそう長くはない。いや、人間と比較すれば寿命そのものは圧倒的に長いはずであるのだが、無秩序混沌を極める魔界においてはうっかり殺されたり、死んでしまうことは珍しくない。暗黒まんじゅうを喉に詰まらせ死んでしまうなんていうのが良い例だ。
     悪魔と言えど一年でも二年でも長く生存するというのはやはりめでたいことではある。それだけの強さを持っているか……魔界で生き残る上で最重要とも言える悪運を持っていることの証明に他ならないのだから。

     それ故に、小さい子どもよりむしろ、大人になってからこそ盛大に誕生日パーティーを開く悪魔が魔界には一定数いる。付き合いのある各界魔王たちを豪奢な誕生会にてもてなし、「祝いの品」を贈らせる。贈答品や態度が気に食わなければ首を刎ねるか刎ねられるかの決闘が繰り広げられ……言わば己が力の誇示のため、魔界の大人たちのお誕生会は絢爛豪華に催されるのだ。
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