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    白名雨葉

    @shiroame1208

    うちの子大好き人間です!
    あの、腐とか書いたりするのでこちらも出来るだけワンク置いたりしますが自衛してください……!

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    白名雨葉

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    ♠過去(前半)

    失敗作「失敗作」


    そう告げられたのはもう何年前の事だろうか。



    其れは実験体になった我々にとって死を意味している言葉だ。


    産まれて、物心が芽生えた時から周りには白衣を着た研究員達。
    毎日の知能テストと体力テスト……。

    息が詰まり苦しくなり吐瀉物を吐いたとしても辞める事の無い訓練のいう名の実験に耐え、体内で蜈蚣が這いずり周るかの様な酷い痛みにも耐えた。

    そう耐えたのだ。

    だが結果は研究員達にとっては宜しくなかった様で“失敗作”と云う刻印を押された。



    「非常に残念だ」
    「君には期待していたのだがね」


    勝手に期待され、勝手に失望される。


    研究員達は見向きもしなくなった。



    彼等が作りたかったのは最高峰の指揮官だ。

    大戦が予期される時期。
    其処で必要とされるのはどうやら人々を引っ張る指揮官だと云う持論が挙げられたのだ。

    其れを証明するべく我々は作られた。



    はぁ、全くもって無意味だ。


    何故なら結局どれだけ知能を詰め込もうとも其の知識の使い方を理解出来ぬ人間が国の上に立ち、無能である限り、その他どれだけそこそこ頭の善い物が居たとして潰れてしまうのは目に見えてるからだ。

    この理論の場合下に付く者も同じである。
    一人が優秀であろうとも皆が皆優秀で有る訳では無いので少しのきっかけで崩れてしまう。

    其れに問題は他にも有る。
    人間という物は脆い。余りにも脆い。
    どんなに屈強な精神を持とうとも鉄の塊の兵器の前では複数居る虫も当然。
    心臓を破裂され頭を撃ち抜かれれば死ぬ。屈強な精神を持たぬ者なら腕が吹き飛ばされるだけで死ぬ。

    誰だってそうだ。恐らく自分も其のどちらかだと思う。


    ___改めて思うとそんな事を考える自分が“失敗作”と云われるのも無理は無いのかもしれない。




    とある日。戦争が始まり其れと同時にとある研究員が現れた。
    彼は異能力を研究していたらしく、異能力を使った人体改造を発表した。

    国は其れを賞賛した。勝戦を一度経験した国。
    彼等は勝てれば善い。何がなんでも勝ちたい。だが比較的楽な方法で己の欲を満たしたい。その為ならば非人道的な事だろうが何だろうが手を出し始めたのだ。


    嗚呼、実に下らない。


    最初の研究対象は自分と同じく研究施設で育った恐らく同年代の最高峰の指揮官否、莫迦達の為の最高峰のラブドールに成る筈の五体満足有る失敗作達だった。


    各々寝る場所と机、後は用を足すだけの物が有る個室に隔離される。
    他の失敗作達との会話等は無く寝て何時もの知識を詰め込むだけの作業をし時間が流れて行く。



    数日が経ち

    「1512080211番」

    長ったらしい番号を呼ばれ、複数人が囲む台に寝かされる。

    「実験116回目の記録を始める」


    そう告げると銀色に鋭く輝いたメスが自分の腹部を滑る。麻酔を投与されてるとはいえ意識が何故かあった。痛みは無い。
    暫くして何奴の異能だろうか、発動したのが判った。
    其れを皮切りに次々と異能が同時に発動される。


    「ッ……ガッ」


    酷く鈍い痛みが、触れられていない筈の脳に流れる。
    然して視界がバチバチと白黒と点滅し目を閉じても開いても同じ景色が流れる。
    身体が勝手に暴れ様と藻掻くが冷たく無機質な鉄が身体を押さえ付ける。


    「……ッ、糞たれ………ッ」


    一度も発した事の無い、前に研究員が云っていた暴言が零れた。











    何時間否、実際には数分なのかもしれないだが自分にとっては何日も此痛みに耐えたかの様だった。


    「成功だ」


    そうたった一言だけ未だ痛む脳に放たれた言葉。
    其れと同時に休む事も許されぬかの如く早々に次の部屋へと通される。


    ふらふらとした足取りで着いた部屋に居たのは同じく成功したのであろう疲弊している女と男各々二人ずつ。


    休む様に云われ数日身体を休める。
    その期間検査をし何人減った。
    時間を置いて“また失敗した”実験体が居たからだ。


    六日だろうか?此処には日が通らないので研究員の記録しているであろう筆記音から日にちを推測する。


    その間に起こった事は筋肉量の増加。
    凡ゆる兵器への耐性を持ちどんなに硬い鉄をも破壊出来る力を持った。

    自分は其処でも一番下を保ち続けた。

    そんな元々人では無かった自分達だが一番の変化は顔にあった。
    頬の筋肉の硬直に寄り自分達は常に笑顔しか出来なくなったのだ。
    手術の際に涙腺が焼けたのだろうか、欠伸をした時の涙さえ出なかった。


    最終的に残ったのは自分を含め一人は自分より筋肉の付いた男もう一人は容姿の綺麗な方の女の三人だった。


    《成功だ。おめでとう。君達は最高峰の指揮官こそには成れ無かった“失敗作”だが、屈強な身体を手に入れ我々の国に光を灯してくれる最高峰の“兵士”達だ》


    ゆっくりとした拍手と研究員の淡々とした祝福の声が天井に設置された機械から流れる。


    《君達には早速だが前線に一刻も早く行ってもらう。各指揮官の指示に従い給え》


    開かれた扉から小太りの男、細身の男、長身の一番若い男の各々三人の軍服を着た男達が此方に向かって歩く。



    小太りの男は女を、細身の男は筋肉質な男を選んだ。
    余った自分に長身の男が真っ直ぐと歩み寄り笑いかける。


    「では私は君だ」


    壺菫の様な瞳が私の瞳と会う。

    「ははは、鴎外殿。済まないね。其れでは前線頑張り給え…其処の“失敗作”君もね」
    「私もお先に失礼します」


    小太りの男と細身の男は二人を連れ出て行く。


    「いえいえ、此方こそ彼の様な優秀そうな子を残して頂き有難う御座います」


    優秀……?


    「お世辞は有難いですが生憎自分は“失敗作”です。其れに実験品に対してその様な気遣いは要らないと思います」
    「おや?君喋れたんだね」
    「………ずっと見ていた筈なのに其の事も知らなかったんですか?」
    「ふふふ」


    白々しく笑う長身の男。此男は一体なんなんだろうか。
    とても得体が知れぬ男は行こうかと云い先導する。自分は其れに着いて行った。






    暫くし研究所から離れ初めての外を踏み締めた自分は何だ、こんな物かと落胆した。


    「初めての外はどうだい?」
    「特に何とも思いません。自分は唯の兵士として作られました。なので高揚するといった感情は要らないと判断しました」
    「ふふ、そうかい。だが他の場所例えば今から行く戦場等なら君の考えも少しは変わるかもしれないよ」
    「そうですか。其れは楽しみです」


    道中で女中の様な服を着た少女に出会う。


    「お待ちしておりました、御主人様」
    「待たせたね、エリスちゃん」
    「………」


    少女の水色の瞳と目が合う。
    人間離れした様な其の瞳と表情は彼女も作られた何かだと云う事が解る。


    「彼女はエリスちゃん。君は直ぐに解るだろうね。彼女は私の異能力体だ」
    「…」


    異能力体。つまり此女中服は男の趣味なのだと解る。
    彼はきっと本で読んだ幼女趣味を持った人間なのだろう。


    「宜しくお願い致します」
    「はい、此方こそ宜しくお願いします」

    お互いに握手はせずお辞儀をする。

    「そう云えば私が名乗っていなかったね」


    国防軍第336歩兵師団、其処の一等軍医副 森 鴎外と名乗った。
    軍医。自分の働く所は前線だとしても医療になるのだとわかる。忙しいが比較的安全だ。
    矢張り自分の行いは間違ってはなかった。


    「君名前は?」
    「有りません。物心と云う物を持つ前から彼処に居たので。代わりと云っては何ですが長ったらしい番号なら有ります」


    耳飾りに着いた番号を見せる。


    「……ふむ」


    森様は少しばかり考える素振りをする。


    「君はルイだ」
    「…?いいえ、自分は…「君の名前だよ」」


    「此から君の名前はルイだ。誰かに名前を聞かれたらそう応えると佳い。其れに番号寄り短くて呼び易いからね」
    「ルイ……」


    ルイ。

    たった二文字の言葉。
    其れが自分の名前。
    番号から安直に文字った訳でも無い名前。
    少し気に入った様な気がした。


    「畏まりました」
    「気に入ってくれた様で何よりだよ。じゃあルイ。戦場へ行こうか」




    ____________


    戦場と云うのはとても血生臭い。
    研究室とは違う余り嗅いだことの無い匂いが漂っていた。


    「此処が君の職場だよ」


    通された部屋には片足が無く蛆が湧いている者、顔面に包帯を巻き恐らく眼球破裂をしている者、肺が潰れているのか息が今にも耐えそうな死にかけな者達だらけだった。

    誰も助かる者は居ない。



    「アンタ、其処どきな!」


    後ろから甲高い子供の声がし振り返る。
    女物の看護服を着ている。


    「嗚呼、済みません」


    一言謝り道を開けるとふんと鼻を鳴らし彼女は異能力を使用した。
    蝶が瞬いた後兵士の傷が完全に治っている。
    つまり此は…


    「不死の兵士………」


    傷の治った兵士達は少女に感謝をし泣く者も現れた。
    感謝……本当にその様に生易しい物だろうか。
    いいや、両方にとって………


    「森様。善く佳い性格をしていると云われませんか?」
    「いいや、今君に初めて云われたよ。褒め言葉として受け取ろう」


    兵士を送り出した後少女が話しかけてくる。


    「新入りかい?」
    「はい、初めまして。ルイと申します」
    「妾は晶子、与謝野 晶子。此処では先輩だからね!」
    「えぇ、与謝野様宜しくお願いします」
    「うぅ……“様”なンてよしてくれよ。別の云い方は無いのかい?………先輩とかほら色々な云い方あるだろう?」


    背中をゾクゾクと震わせ別の云い方を提案される。恐らく其方の方が好ましいのだろう。


    「では、与謝野先輩でも宜しいでしょうか。」
    「!、あ、アンタが其れが佳いってンなら仕方ないからね」


    少し嬉しそうな顔をする。
    横に居る森様から何やらドス黒い何かを向けられている様な気がするがきっと幼女趣味を拗らせただけだと判断し無視をする。


    「其れで、森様自分は何を遂行するのでしょうか。簡易的な処置は回って居るのでしょう」
    「……話が速くて助かるよ。君には先程の彼等の様に負傷した兵士を戦場から出来るだけ速く、多く運んで欲しい」


    森様が与謝野先輩に目線を送る。


    「彼女の異能力は素晴らしくてね。瀕死で重症の患者を治せる。君も知識として知っているだろう?治癒能力を持った異能力者だ」


    稀少価値の高い治癒能力を持った異能力者。
    その分発動条件も厳しい。彼女はきっと森様が説明した通り瀕死の重症しか治せないのだろう。



    「そうですか、其れは素晴らしいですね」
    「ふふふ、だろう?だから君には戦地に向かい出来るだけ多くの兵士達を速く運んで欲しい」
    「………畏まりました」


    ある程度の装備着替えを済ませる。
    部屋を出ると最後の装備を届けに来た与謝野先輩と出会う。
    戦場迄の道を教えると云い案内をしてくれる。


    「此処からが戦場さ」
    「有難う御座います」


    念の為にヘルメットを受け取る。それ以外の装備……と云っても唯の長靴に兵士が着るような服それだけだ。
    余りにも重装備過ぎると遅くなる其れに物資不足なのだそうだ。

    本当に、余りにも無駄な争いだ。
    だが……負ける事は許されないのだろう。


    「……そんな軽装備だが……ルイ、アンタも何か異能力を持ってンのかい?」
    「いいえ、与謝野先輩や森様の様な異能力は持ち合わせて降りません。無異能力者です」
    「な……!?じゃあアンタは今から死にに行くようなもんじゃないか!」
    「いいえ、死にません」
    「………妾が治すから?」
    「いいえ」
    「じゃあ、何が……何がアンタを護ってくれるってンだい、其の薄い布切れとほんの少し頑丈な帽子だけで」


    下を向きスカートの裾を握る。
    ………心が、精神が崩れてきているのだろう。



    「大丈夫です。必ず兵士様方をお連れしましょう。勿論自分は無傷で」


    戦場へと続く扉から与謝野先輩を遠ざける。


    「では準備を宜しくお願いします」
    「待っ…………」



    扉を開くと少し遠くに投下された爆弾の爆発音が轟く。
    耳がピリピリと痛む。

    扉を固く閉め走る。


    爆薬でボコボコになった道とは呼べぬ地面を蹴る。
    横から銃弾が飛んでくるが中らない。


    轟音が耳にこびり付く。


    「はっ……!」


    思わず声が漏れる。
    これが、これが戦争。
    記述で読んだ事より遥かに悲惨だ。
    頭が潰れ、誰か判らぬ死体が彼方此方と有る。
    鉄と血、後腐敗臭の様な匂いがする。
    此は文字だけでは判らない知識。


    ある程度死体や負傷兵達を拾って基地に戻る。


    「ルイ!」
    「お待たせしました、治療をお願いします」


    返り血でベトベトになった衣服をある程度整え患者を寝かせる。


    「ルイ、アンタ怪我は」
    「有りません。此は患者達の血です。御心配有難う御座います」


    次の患者を拾いにまた戦場の扉へと向かう。


    「待ちな……!」


    静止する。


    「如何なさいましたか?」
    「なァ……何で………何でアンタは………無傷何だ………明らかに足を撃たれている」



    指された足を見ると服に穴が空いていた。先程迄は無かった物だ。
    気付かなかった。

    拾う事に集中していたからだろうか……?
    或いは致命傷を避けたかったからだろうか


    「其れに………」



    または




    「何でアンタはそんなに楽しそうに笑うンだ………」




    失敗作だからだろうか
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