「くすり…薬……抑制剤は、どこだ…薬を飲んでから効果が出るまで1時間かかる、早く飲まなければ……、」
レヴナントはごくごく稀に、何かの薬を飲みたがる時がある。虚ろな表情でさ迷って、薬はどこだって唸るんだ。
「君は機械だから薬は飲めないし、飲む必要もない筈だ。どこか痛むの?ダメージを受けてるなら修理室に行った方がいい。歩行に支障をきたしているなら僕が連れていくよ。」
飲めもしない薬を探して時間を費やすくらいなら、すぐ修理室に行くべきだ。でもレヴナントは修理室に行くのが大嫌いだから、きっと機嫌を悪くしちゃう。あとで謝らなきゃね。
「黙れ!!お前が…………いや、違う、あぁそうだ。お前の言うとおりだ」
前言撤回だ。今日のレヴは本当に調子が悪いみたい。そして彼の調子が本当に悪い時は、大抵が「機体の損傷」ではなく「プログラムのバグ」が原因なんだ。
それなら、行先は修理室じゃなくて、僕の部屋だ!
レヴナントがプログラムのバグで調子が悪い時、いつも僕が彼の内部データに接続して異常を緩和してるんだ。僕はこの接続が好きさ!普段は絶対に見せてくれないレヴナントの色んな声や気持ち、みんなの知らないレヴナントを独り占めできるんだ。知らないを知るって楽しいね!
「僕の部屋に行こう。接続干渉用のコードがある、内部原因を調べてあげるよ。」
レヴナントはなんだかフラフラとしておぼつかない足取りで、一言二言声を発した。よく聞き取れなかったけれど、多分拒否ではないと思う。怒られるかなと思いつつ腕を足に回して横抱きに抱えたけれど、レヴナントの2mを超す機体が大人しく僕の腕の中にすっぽりと収まった。すごいや、本当に調子が悪そう!なんだか機体温度も高い気がするし、排気が上手くできていないのかも。すぐに連れて行くからね。
「ここで待ってて。すぐコードを取ってくるよ。」
レヴナントを横抱きにしたまま駆けていたらすれ違った人たちがギョッとした顔でこちらを見ながら通り過ぎて行ったけれど、特に何かを言われる訳でもなく無事僕の部屋にたどり着いた。レヴナントをスリープ充電用のベッドに降ろして、コードを取りに向かう。確か右奥の棚の一番上に入れてあったはずだ。