夏の日差し対策会議魏延は銀屏に弱い
それは蜀の人間ならばもはや誰でも知っている事実だった
実際、彼は銀屏のためならばどんな無茶でも大体のことはやってのける
うさぎの人形が欲しいとあれば一緒に二人三脚のレースに出るし、飴が欲しいとあれば清河郡の甘味処の飴を全て買い尽くす勢いで購入する
魏延に何か願いをしたければ銀屏を通せ
そんなふうに一部の将軍たちから言われるほどだった
だが、そんな魏延が唯一銀屏のお願いをすぐに聞かなかった出来事がある
それが『海に行きたい』というものだった
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今から数ヶ月ほど前
まだ梅雨も明けておらず、しとしととした雨が屋敷の紫陽花に振りかぶっていた頃
魏延と銀屏は今年の夏の計画を立てていた
実際のところは、毎年見にいっている祭りに今年も行きたいだの、夏限定の甘味が出るらしいだのと、銀屏が他愛もない話をしているだけなのだが魏延の中ではそれら全てに都合をつけていくつもりなので予定と言って過言はないだろう
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