黄金時間 何かと鋏は使いよう、と同じことで、どんな道具であろうと人であろうと、使い方一つで無限に可能性を秘めている。僅かながらの知恵で工夫を凝らし、己自身の研鑽を積んできた隠し刀にとって、進歩とは文字通り一歩一歩進む地道なものだった。人間はいきなり跳べたりはしない。全身の筋肉を鍛え、どこへ向かえば良いのか判断するための知識が必要だ。
ところが世界は広いもので、進歩が駆け足どころか悠々と遥か遠くへと飛躍することもある。阿鼻機流はその最たる例だ。滑空の理屈は解れども、鳥のように飛ぶ発想は到底抱けない。思いつけること自体が一種の才能と言えるだろう。郷里の行き詰まった――ある種、一つの技術を突き詰めることに徹していた――社会から出た隠し刀は、長屋にやってきたその天賦の才能の持ち主を笑顔で出迎えた。
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