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    uno_nkrn

    絵とか字とか、だいたいニキ燐

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    uno_nkrn

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    似たようなニキ燐ばかり書いてる気もするんですけどヘキなので許されたい。

    ニキ燐【おひとりさま、ひとつまで】それは、いつもと変わりない普段通りのやり取りなわけで。

    週一の掃除という名目で帰っているニキのアパートで、座布団に座りパラパラとお目当てのページを探すために雑誌をめくる。先日、Crazy:Bで受けた仕事の写真の出来を確認して欲しいと副所長に渡された物な訳だが流石ES専属のカメラマンなだけはあってどの写真もよく撮れている。出来を確認するために見る、というよりかは普通に雑誌を読むようにページをめくっていくと雑誌の中のニキと目が合った。いつものヘラヘラした態度は鳴りを潜め真剣な顔をしたニキは誰だってギャップにやられちまいそうになるくらい格好いい。
    ……まァ今現在、ホンモノのニキきゅんはその雑誌とは打って変わっていつも通りキャンキャンうるせェわけなんだけど。

    「ちょっと燐音くん!!僕のお財布の中にあったお金はどこへやったんすか!!」
    「ニキきゅんごめ〜ん♡燐音くんさァ……ニキきゅんに借りてたお金を倍にして返してやろうと思ってたんだけどォ〜〜、てへ♡スっちゃったァ♡」
    「はあああああ!?あんた、ちょ、いい加減にしてくださいよ!?これでいったい何回目っすかあ!?」
    「ごめんごめん〜〜!俺っち誠心誠意を込めてカラダで返すしなんでもニキくんの言うこと聞いちゃうからァ……許して♡」

    きゃる〜ん。そんな効果音が響きそうなくらいわざとらしく、言うなればぶりっ子のするようなポーズをするして上目遣いでニキを見上げる。
    泣き落としならぬ甘え落としでなんとか許してもらえねェかなァ〜なんて、そんな期待は最初から抱いてなんていない。だってこれはいつも通りのやり取りなわけなモンで、どうせこの後にニキは「燐音くんの誠心誠意なんて信用ならないっす!!願い下げっす!!」とか言って俺っちの誠心誠意を込めた健気な謝罪をスルーするンだよなァ。わかってるわかってる。つまんねェの、せっかくニキきゅん愛しの燐音くんがカラダで返すと言っているのに。サービスしてやってもいいのになァ、なんて勿体無い奴。
    とか、まあいつも通りあれやこれや心の中で悪態をついていると隣からでっけェため息の音。うるさ。キッと俺を睨んだニキは口を開いてさっきのでっけェため息に負けないくらい大きな声で叫んだ。

    「言ったっすね!?じゃあカラダで返してもらうっす!!」



    ——そんな会話をしたのが数時間前
    俺たちは今、アパート近くのスーパーのタイムセールに来ている。ニキが真っ先に足を運んだ商品棚に置かれている“お一人様1パックまで!”と書かれた看板の卵の値段はこれでちゃんと採算が取れているのだろうかと不思議に思うほどに安い。
    あの後、俺の手を引いて「ほら!早く立って立って!!」と急かすニキにマジで今から俺を抱く気なのか、とか、“準備”はそりゃあわざわざアパートに帰って来てる訳だしィ?明日はオフだから実はコッソリしてあるけど心の準備が——、とかぐるぐると考えたのは一瞬で。外に出て、見慣れた道を歩き上機嫌で「今日の夜ご飯は何にしようかな〜〜」なんて言いながら鼻歌を歌うニキを見て、ああ成る程な、これは間違いなく俺にやらしい意味で“カラダで返させる”ためラブホとかに向かうために外に出た——というわけではなく食絡みで、スーパーに向かうために外に出たんだなと悟った。そりゃそうだ。だってニキだもんなァ。

    「今日は卵の特売があるって近所の人に聞いてて〜〜!いやあ良かったっす!!一家族1パックとかじゃなくお一人様1パックで♪晩ご飯は何にしましょうか?無事に2パック買えた事ですし、せっかくなんで卵料理で燐音くんの好きなもの作りますよ〜〜!オムライスとか!」
    「わあい俺っちオムライス大好きィ〜〜」
    「……なんですか?その雑な反応………」
    「別にィ〜〜なんでもないですゥ〜〜」

    どう足掻いたって俺が食べ物には勝てないのは分かっている。分かってはいるのだが、いつだって自分だけが期待をしている。それについて普段なら、ハイハイいつも通りですねェ〜と軽く流せるのだが今日はなんとなくそれが面白くなかった。
    俺のおかげで1パック分増えた卵とその他諸々をお気に入りのエコバックに詰め込んで、スーパーの外に出て、それじゃあさっさと家に帰りましょうかと右手を差し出すニキ。

    「……?」
    「んぃ?どうしたんすか?」
    「………」
    「うわ重っ!?ちょっと!!なんで無言で荷物持たせてくるんですかあ!?そっちは燐音くんの分の荷物っすよ!!」
    「手ぇ出すから、持ちてェのかと思って」
    「いや違いますけど!?ただ手繋いで帰りたいなあ〜〜って」
    「はァ?」
    「だって今日、めっちゃんこ寒いじゃないですかあ。手袋持ってくるのも忘れちゃったし丁度いいかなって思って」
    「丁度いいワケねェだろ。俺っちは手袋じゃねえっつうの」
    「えっ何言ってるんすか当たり前じゃないですか」
    「……おまえが言ったんだろ。丁度いいから、寒いから手袋代わりにしたいって」
    「ええ〜〜?言ってなく無いっすか?僕はちゃんと燐音くんと手が繋ぎたいなって言ったんですけど。……丁度いいっていうのはあんたと手を繋ぐ口実ができるからですよ」

    ってことで、はい。燐音くんの分の荷物ちゃんと持ってくださいね。とか何とか言って俺の右手にエコバッグを引っ掛ける。呆気に取られてる俺の左手をニキの右手がするりと捉えて、指を絡めて、ぎゅっと握って——
    ぶわり、左手から与えられた熱がそのまま身体中に巡ったかのように全身があつい。固まってる俺の顔を覗き込んだニキが「いちごみたいに真っ赤でかわいいっすね。燐音くん」とか無邪気に笑う。そういうことはいちいち言わなくても良いンだよ。
    右手にはエコバッグ。左手にはニキの手。馬鹿みたいに真っ赤な自分の顔を隠したくても両手は塞がっていてその役目を果たすことはできなかった。ここで自身の左手を握っているそれを振り払うという選択肢を持たないところが、つくづく俺は本当にこいつに甘い。

    「……今は誰もいねェからいいけど、ひと気を感じたらすぐに手ぇ離すからな」
    「ちゃんと分かってますよ〜〜」

    無事にお目当ての卵を2パック買えたおかげかニキの機嫌は凄ぶる良い。繋いだ手は暖かくて、どうか誰も来てくれるなと小さく心の中で願う。
    結局、幸いにも誰ともすれ違うことなかったのでそのままアパートに着くまでの間ずっと手は繋がれたままだった。

    「たっだいまあ〜〜!!いい感じの時間に帰れてよかったっす〜〜!んじゃ!夜ご飯のオムライス早速作るんで!ちゃんといい子で待っててくださいね!!」
    「ただいまァ。ヘイヘイ、分かってますよォ〜〜。燐音きゅん、ちゃあんといい子で待ってまァ〜す」

    そんな会話をしながら、買った物を冷蔵庫へと詰め込んで今日はおとなしく座ってニキがオムライスを作り上げるのを待つ。テレビをつけて待ち時間を潰しても良かったがアパートに帰っても変わらず、上機嫌のままのニキがCrazy:Bの歌を歌うものだからそれを聴いていたくてリモコンへと伸ばしていた手を下ろした。

    「はいどうぞ、オムライスできましたよ〜!!燐音くん、今日は何だか珍しく大人しかったですねえ。いつもだったら鬱陶しいぐらい料理中にベタベタしてくるのに」
    「なんだよ、あァ、もしかして構って欲しかったんでちゅかァ?ニキきゅんは相変わらず俺っちのことがだァいちゅきだなァ……♡」
    「ただ珍しいなって思っただけですけど!?」
    「素直になれってェ♡本当は俺っちに構って貰いたかったんだろォ……?俺っちはちゃあんとニキきゅんの気持ちを分かってんよ……♡」
    「これ以上無いくらい素直に言ってます!!んもう、アホなこと言ってないで冷めちゃう前に早く食べましょ」

    いただきます。きちんと手を合わせてからオムライスをスプーンで掬い口に運ぶ。とろとろとした卵が乗ったオムライスは4年前から変わらずずっと俺の好物で。うん、美味しいと思わず顔がほころんだ。ふと顔を上げるとニキと目が合う。美味しいかを問われて、勿論ニキきゅんの飯は世界一うめェよと返した。
    ごちそうさまでした。スプーンを置いてから再び手を合わせる。お粗末様でした〜と皿を回収して流しに向かったニキは手早く片付けを始めた。普段と変わらない風景。くあ、と一つ欠伸が出る。今日はもうさっさと寝てしまおうか、明日はオフだから早く寝てしまうのはやや勿体ない気もするがパートナーが乗り気じゃねェのなら意味はないし。

    「風呂行ってくる〜」
    「はあい、あっ燐音くん“準備”してくれるのはありがたいんすけどあんまし慣らしすぎないで欲しいっす!!下拵えは料理人の基本だし僕の楽しみなんで!!」
    「…………は?」
    「どうしたんですかポカンとした顔して……。今日、言ってましたよね?“誠心誠意を込めてカラダで返す“って」
    「や、言ったけどォ……」
    「僕の言うこともなんでも聞いてくれるって言ってたのもちゃんと覚えてるっすよ!!ってわけであんまし慣らしすぎないで欲しいんですけど……」

    お願いしますね〜と呑気に笑うニキとは違ってこちらは大混乱だし内心困惑もしていた。
    だってカラダで返すって言ったその分は既に卵1パック分で終わったと思っていたわけで。

    「た……」
    「た……?」
    「卵1パック分で終わりだと思ってたンだよ、カラダで返すの」

    正直にそうやって告げれば今度はニキの方がポカンとした顔をする。

    「いやいやいや!!そんなわけ無くないっすか!?そもそも卵1パック分だと全然割に合わないお金消えてるんですけど!?それに好きな子にカラダで返すとか言われてそんな期待しないでいる男なんているわけないじゃないっすかあ!!」

    もしかして今日一日ずっとドキドキしてたの僕だけですか!?とか。燐音くんばっかりいっつも余裕があってズルいっす!!とか。キャンキャンあれやこれや吠えるニキを見て今日一日の俺たちの気持ちがお揃いだったことを知って思わず笑ってしまう。

    「もう!!何笑ってるんですかあ!!……やっぱり燐音くんばっかり余裕でズルい」
    「ふふっごめんって……」
    「…………今日は絶対にその余裕を崩してやる」
    「ええ~~♡こわァい♡俺っちニキちゃんに何されちゃうんだろォ~~♡」

    おちゃらけた様子の俺に、更にむすっ……と頬を膨らませるニキ。崩す余裕なんて最初からねェのになァ、躍起になっちゃってかわいいの。でも、今くらいは俺に余裕があるって勘違いしていてほしい。どうせ数分後にはわけが分からなくなるくらいぐずぐずにされて——最初から持ち合わせていない余裕なんてすぐに消え去ってしまうのだから。
    じゃあ俺っちは今度こそ風呂行くわ~~とか言って、今度は俺が上機嫌になって鼻歌を歌いながらニキを後にした。
    ——今日はちゃんと本人の希望通り“準備”だけしておいてやろう。だって今日の俺はニキの言うことはなんでも聞いちゃうのだから
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