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    kurui_usagi39

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    kurui_usagi39

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    🌊箱のリクエストで書いたヤト空です。売られる🌤️くんと他の人間には手を挙げることも許したくなかった🧋さんのおはなし。
    長くなりそうだったのでだいぶ端折りました。いつか完全版も書く、かも…

    「金銭で貴方を独占出来るのなら、とっくに」「さぁご覧ください皆様、この見事な金の髪と瞳!年頃も若く可愛らしい顔立ち、なんと愛玩のしがいがあるのでしょう!」

    連れてこられる前に無理矢理解かれた髪を触られた不快感と、ひしひしと感じる数多のねっとりとした視線の気色悪さに鳥肌が立つ。
    何処かの芝居小屋を利用しているらしいオークション会場の舞台上で、空は"商品"として紹介されていた。
    正直に言えば今すぐ暴れて司会の男も空を押さえる男たちも客席で歓談する"参加者"たちも全員今すぐのしてやりたいが、それをすると予め決めていた作戦が失敗しかねない。
    他の"商品"───稲妻の地で拐かしに遭った者たちの安全を確保する為にも、今は我慢の時だ。
    あれこれと空のセールスポイントを語っていた司会が、ついにこの時が来たと興奮気味に参加者たちへ競りの開始を宣言する。
    空の値段を決める、競りだ。

    「さぁ皆様奮ってご参加を!まずは五十万から!」

    「五千万」

    客席からの第一声で、会場がシンと静まった。
    それはそうだろう、人と競り合って安値で買おうという意思が全く無い値段が初手で提示されたのだから。
    司会が喜びより困惑の勝った様子で『ほ、他の方、お声上げありませんか…』と呼びかけるが、流れるは沈黙ばかり。
    その横で、空もまた困惑の真っ只中にいた。
    あまりに聞き覚えのある声に驚き薄暗い客席に目を凝らして声の主を見つけると、思わず名前を呼びそうになってしまう。

    「(なんでここに綾人さんが…!?)」

    空"たち"の作戦に、綾人は関わっていないはず。
    ラフながらも気品を感じる着流し姿の綾人は、涼やかな笑みを浮かべて空を見つめるばかりだった。




    鎖国令の解かれた稲妻。
    外国の人や物が大手を振って入ってくるようになったことで、悪どい事を考える不埒ものも増えたのだと空の知人───九条裟羅が義憤も顕に語ったのが、事の始まり。
    彼女曰く、近頃鳴神島において拐かし事件が未遂も含め何件か報告されていたらしい。
    狙われるのは決まって美しく珍しい髪と瞳、とりわけ金髪を持つ者…つまり、外国人だ。
    外界との交流によって華やかなる稲妻の文化がさらに花開こうというこの時期に斯様な事件が頻発するような事態となれば、例え門戸を開いていても人も物も稲妻に寄り付かなくなる。
    早急に対処すべきで問題ある、と三奉行間でも話し合われ、天領奉行は全力で犯人を追っているのだが…いかんせん狙われるのは外国人。
    警備は強化しているが危ないからと稲妻を訪れた外国人全員に見張りをつける訳にもいかず、また犯人は巧妙に天領奉行の目を盗んで犯行に及んでおり、未遂で済んだ被害者からも犯人特定に繋がるような情報は聞き出せず、彼女は手をこまねいていた。
    そしてその話を聞いた空は、迷うことなく『俺が囮になろうか』と提案したのだ。
    狙われやすいのは金髪の外国人、条件は満たしている。
    空ならばわざと連れ去られて犯人の根城を特定し、他の被害者を救い出す、なんて事も出来うるかもしれない。
    空の提案に裟羅は最初こそ反対したが、具体的な作戦を伝えると、深く考え込んだ。
    小柄で小回りのきくパイモンに少し離れた場所で身を隠していてもらい、空が拐かされたらその後を追って根城を見つけ、天領奉行へ知らせる。
    あとは空が内から、裟羅が兵士を率いて外から攻め、壊滅させる…という手筈だった。

    「旅人は強いし、オイラもかくれんぼは大得意!この作戦なら成功間違いなしだ!」

    「ということで、俺たちに任せてみない?」

    「…本来ならば、稲妻の人間が解決すべき事件だが…恥を承知で、頼めるだろうか。無論私も天領奉行も、全力で事に当たろう」

    頭を下げようとする裟羅を止め、連携の打ち合わせをしてから空は装いも少し変えて一人ふらふらと稲妻を歩いた。
    やがて視線を感じるようになり、あえて人気の無い場所へ移動して、狙い通り拐かしに遭い、囚われた先で人身売買オークションの話を聞いたことでそのオークションの場を叩く作戦に変更、こっそりとパイモンを通じてそれを裟羅にも伝え…そして、あのオークションが始まったのだった。



    「本当に驚いた、まさか綾人さんが来るなんて」

    「オイラもびっくりしたんだぞ、裟羅と話してたら急に綾人が来て『私にも助力させてください』なんて言い出すし!」

    「今回の話を聞き、実際に中へ入って確認する役が必要だろうと思いまして。奉行の人間は連中に警戒されやすいでしょうが、表舞台に立つことがあまりない私なら面も割れていない可能性が高いですし」

    「…どこから話を聞いたやら」

    「ふふ」

    神里屋敷への帰り道の途中、空とパイモン、そして綾人はそれぞれあの場へ至った経緯を話していた。
    空のじとりとした視線に微笑みだけが返ってきたあたり、裟羅や天領奉行の人間から聞いたのではないのだろう。
    あの競りの後、空の身柄と引き換えに提示しただけの金銭の用意と契約書へサインを、という取引の場で天領奉行の兵士たちが踏み込み、犯人たちは尽く捕らえられた。
    全てが終わり空たちが現場を離れる時にも裟羅は綾人に対して感謝以外特に何も言わなかったので、彼女が気にしないなら空もとやかく言うつもりはない。
    それにしたって今回の件は社奉行には無関係…とまではいかないだろうが、少なくとも管轄外の事件だったはず。
    いくら自分が適任だと考えたにしろ、色々と忙しい身でどうしてわざわざ出張ってきたのか。
    空がその理由を考えていると、綾人はそれを見通したかのようにくすりと笑って手を伸ばしてきた。
    解いたままになっている空の髪を指先で梳きながら、囁くようにそうっと語る。

    「貴方が心配だった、では不足ですか?」

    俺の実力が信頼出来なかったの、などと文句を言うつもりが、あまりに優しい顔で、優しい声でそう言われたものだから、空はぐっと言葉に詰まった。
    『ほっぺが赤いな』というパイモンのからかいを『夕焼けのせいだよ』と躱しつつ、見えてきた屋敷を指さし強引に話題を変える。
    夕焼けは沈み、茜空は夜空へと姿を変え始めていた。

    「ほら、もう着くよ!」

    「なぁなぁ〜オイラも旅人も今回結構頑張ったし、晩ご飯くらいご馳走になってもいいんじゃないか?」

    「えぇ。天領奉行から近日中に謝礼があるとは思いますが、それとは別に社奉行からも謝礼としておもてなしさせてください。…こら、空さんは私に買われた身で何処へ行こうと言うのです。仕置を所望なら今夜にでもたっぷりと───」

    「買ってないじゃん!!!!お金も払ってなければ契約書にサインもしてない未遂じゃん!!!!」

    「おや残念、バレましたか」

    「いちゃつくのも程々にしといて早く屋敷に入ろうぜ!ごっちそう!ごっちそう!」

    「いちゃついてない!!!!」
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