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    🍶🤡シャンバギ ホワイトデー小話 バギー♀先天性
    まだ幼い見習い達の話ほのぼのしっとり甘い可愛い感じ
    テーマは「like」と「love」
    🍶→→→←←←🤡だけど、意味合いが違う
    前のBD(バギーの秘密の贈り物)とは少し違う軸です

    #シャンバギ
    ShanBuggy

    すきと“好き”バレンタインからほぼひと月が過ぎ、シャンクスは妙にそわそわしていた。バギーから貰った手作りチョコの味が忘れられず、それ以上に、あの日のバギーの照れた顔が何故か頭から離れない。

    「おれも、バギーに何かお返しないとな」

    船員たちに相談を持ちかけると、意外にもロジャー海賊団の大人たちはニヤニヤしながら反応した。それぞれが華やかなリボンや包装紙に包まれた箱や袋を、どうだとばかりにシャンクスの前に掲げる。

    「え、え、ズリいよ!いつの間に!」

    シャンクスは大きな目をさらに丸くした。大人たちがバギーにホワイトデーのお返しをちゃんと用意してるなんて知らなかったのだ。自分は何も持っていない。

    「おれ、何も用意出来てねェ!」

    焦って叫ぶが、ギャバンには「何か食い物でも渡しとけ」と適当に肩を叩かれ、レイリーに「気持ちがこもってりゃ何でもいいだろ」と笑われただけだった。

    バギーに何か特別なものを贈りたい。バギーが喜ぶ顔を想像するだけで胸がワクワクする。とはいえ、自分の手先はバギーほど器用じゃない。菓子作りなんて無理だ。それに買い物に出るにも島に寄港する予定はまだ先。結局、シャンクスは悩んだ末、バギーに何かあげたいという気持ちだけで突っ走ることにした。

    その夜、見習い部屋には可愛らしい歌声が響いていた。青い髪を梳かしながら、バギーが海賊の歌を口ずさむ。大人たちから何を貰えるかが楽しみなようで、シャンクスのこともチラリと見て、「お前も、何かくれんだろ?変なもんじゃねェよな?」とワクワクを隠せないようだ。

    「おう!楽しみにしてろよ!」

    ポケットに忍ばせた製作途中の贈り物を握り緊め、ニカリと笑って見せる。大人たちに負けたくなくて頭の中はぐるぐるしていた。
    前日ともなると、二人とも興奮を抑えきれず、布団に潜り込んた後もなかなか眠気はやってこない。寝返りを打つ度、見習い部屋には布が擦れる音が響いていた。



    「おい、バギー!起きろ!ホワイトデーだぞ!」

    いつの間にか眠りに落ちていたバギーは、まだ日も登りきらないうちから、シャンクスに肩を揺すられ無理矢理起こされた。

    「うるせェ……何だよ、朝っぱらから……」

    目をこすりながら不機嫌そうに顔を上げると、シャンクスの手に握られた物が目に入った。それは、クシャリとした紙と、小さな貝殻に紐が巻き付いた何か。

    「なんだそれ?ゴミか?」
    「ゴミじゃねェよ!おれが作ったんだ、バギーにやるよ。バレンタインのお返しだ!」

    シャンクスが得意げに差し出したそれを、バギーは胡散臭そうな目でじっと見つめる。
    ――よく見るとそれは、雑に折られた手紙と、小さな貝殻に麻紐が結ばれた手作り感満載のペンダント。紙を開くと、そこには殴り書きのような字でこう書かれていた。
    『バギーのチョコ すっげェうまかった おれ すっげェうれしかった ありがとう
    バギーだいすき! シャンクスより』

    「……は?何だこれ、……変なの!変!」

    ――バギー大好き、大好き。

    バギーは変と言いながらも、顔がみるみる赤くなっていく。シャンクスの字は下手くそで、貝殻の紐は雑に結ばれ、正直「贈り物」と呼ぶには微妙な出来。それでも、バギーはずっとドキドキしていた。本当は嬉しかったが、どうしても恥ずかしさが勝ち、何度も変だと繰り返す。

    「変じゃねェよ!おれ、ちゃんと気持ち込めたんだぞ!バギーのチョコだって手作りだっただろ、凄く嬉しかったから、おれだって頑張ったんだ!」
    「あれは義理だってんだ!す、すきとか書くかよ普通!」
    「ほんとのことだ!バギーだっておれのこと好きじゃんか!チョコがハートだった、だからおれも――」
    「うるせえ!」

    シャンクスが立ち上がって大声で言い返すと、バギーは叫んでクマのぬいぐるみを投げつける。痛えと喚く声が聞こえたが、かまわず部屋から飛び出した。

    甲板の柱に凭れ,涼しい潮風を浴びる。熱かった頬の火照りが引き、頭も次第に冷静になっていく。

    「……ったく、下手っぴ過ぎて何の形かも分かりやしねェ、こんなんでおれが喜ぶと思うなよ」

    ツンケンとした言葉とは裏腹に、歪なフォルムの貝殻の紐を首にかける。小さな貝殻は、シャンクスがどこかの浜辺で拾ってきたものだろう。特別なものじゃない。だが、よく磨いたのか、貝殻の表面は虹色、パールのようで、胸元で動くたびに朝日を浴びてキラキラと輝く。バギーはその煌めきにうっとりと目を細めた。
    脳裏に浮かんだのは、レイリーさんに相談したあの日のことだった。

    『バギーの『好き』は、ただの仲間や友達って言葉で片付けられるもんじゃない。けど、シャンクスはまだそれに気づいてないんだろうな……。』

    ――女の子は早いな。
    胸の病気だと思って泣きながら相談したら言われた言葉。優しく撫でられた頭がとてもくすぐったかった。
    シャンクスの好きとおれの好きは、きっと違う。同い年でも早熟な自分と違ってあいつはまだまだガキだ。オーロの大人達への好きと、チョコレートへの好きと、変わらないだろう。

    「好きとか、簡単に言うなよ……」


    バギーが甲板から見習い部屋へ戻ると、シャンクスはクマのぬいぐるみを抱えて壁に凭れ、何もない空間を眺めていた。バギーが声をかけた途端ぱっと振り向く。

    「かわいい!」

    バギーの胸元で揺れる貝殻のペンダントを見とめると。シャンクスの口元には陽だまりのような優しい笑みが広がった。

    「似合ってるな、バギー!」

    折角冷ました頬がまた熱くなる。きっと鼻程に真っ赤だろう。

    「まぁ、……悪くねェよ。ちょっとだけな」

    指先で貝殻を玩び小さな声で呟いたバギーに、シャンクスは満面の笑みを浮かべた。

    「ほんとか!?やったぁ、バギーが喜んでくれた!」
    「よ、喜んでねェ!悪くねェって言ってんだ!」

    バギーが慌てて否定するも、シャンクスはすでにデレデレと緩みきった顔でバギーに飛びつく。その様子を窓越しに見ていたレイリーとギャバンは、顔を見合わせてニヤリと笑った。

    「まぁ、あいつららしいな」
    「だな。あの貝殻、ハートだってよ」

    下手くそだな。大人達が声を抑えて笑う中、バギーはシャンクスとじゃれ合いながら、首にかけた貝殻をそっと握りしめた。

    夜も更ける頃、見習い部屋でバギーは一人、ベッドに寝転がりクシャクシャの手紙をぼんやり眺めていた。
    ――毎夜、シャンクスが小さな何かをゴシゴシと磨いている後ろ姿。ランプを小さく灯し、一生懸命磨くその背中が微かに震え、細かい作業に集中している様子に周囲の空気さえも静まり返る。ふと向ける横顔は真剣そのもの。時々違うなと唸り独り言をつぶやきながら、何度も手を止めてはまた磨きをかけて。布団の陰で息を潜め、シャンクスが何をしているのかを不思議に思いながらも、バギーはその磨く音を子守歌に静かに眼を閉じた。

    思い出しただけで、バギーの口元が緩んで小さく笑いが漏れる。
    貝殻にはナイフで削ったらしい粗い穴が空いていて、紐の結び目はでかくて歪で、笑えるほどの出来栄え。……だが、不器用ながらもシャンクスは一生懸命作ったのだろう。見るたびに増える手指の絆創膏はこの為だったのかと、バギーは胸がジンと熱くなった。

    「バカシャンクス……」

    呟きながら、ベッドの下から取りだした小さな宝箱を開く。そこにはキラキラしたガラス玉や珍しい形の石が詰まっている。バギーは手紙と貝殻のペンダントを中に仕舞い、宝箱の蓋をそっと閉じる。その箱ごと抱き締めると、胸にぽかぽかとした温かさが広がった。
    シャンクスの、何も隠していない素直な言葉が、ふっと、バギーの心にジワリと染み入る。けれど少しだけ、胸が締めつけられるような感覚。

    「早く、大人になりてェな……」

    ぽつりと呟いた言葉は夜の波音に消えていく。

    その夜、バギーは隣の布団に潜り込み、久しぶりにぐっすりと眠った。

    終わり



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