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    mitotte_kazu

    @mitotte_kazu

    自機ルガオスとエタバン相手のヴィエラとかよそよその話とかNPCよその話とか置いとく場所。
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    ドマで七夕を楽しむ🦍と🐇さんの他愛無い短いお話

    #ディンエラ

    七夕 ドマ町人地に訪れたルガディンはエーテライトの横に設置された巨大な植物を見上げていた。彼の身長を僅かに超えるほどの大きさのそれには、色とりどりの紙飾りや何か書かれた用紙が提げられていた。
    「冒険者さんも良ければどうぞ」
     す、と差し出されたものを会釈しながら反射的に受け取ってしまう。ヒューランの掌程度の大きさの長方形の紙で、よく見ると提がった用紙と同じものだった。首を傾げて眺めていると、ドマの町人はあぁ!と自身の額を軽く叩いた。
    「七夕をご存知ないかぁ!」
     お時間は大丈夫かな?と上目遣いで見つめてくる町人に頷くと、それなら、と微笑みかけられる。こほん、とわざとらしく咳払いをして背筋を伸ばした。
    「昔々、仕事熱心なチョコボ引きの好青年と、織物が上手な娘がおりました」
     昔話かと耳を傾ける。二人はその内良い仲になるも、お互いに夢中になるあまり仕事が疎かになったという。そんな二人を容赦なく引き離すもお互い好いた相手に会えない悲しみに嘆いているのを哀れに思った神が、年に一度二人の逢瀬を許したのだという。
    「それが、今日、七夕という日なのだそうです」
     めでたしめでたし、と話を締めた町人が両手を合わせた。気付けば周囲に集っていた子供達に混じって拍手して称賛を伝える。
    「そんな訳で、よければ冒険者さんもお願い事など」
     英雄殿も、といつの間にか隣に立っていたヴィエラが差し出された用紙を受け取った。見慣れた細い腕と端正な顔立ちを交互に眺めている彼を他所に、ありがとー、と彼女はにこやかに会釈をする。
    「さ、行こっか」
     あっちで書けるみたい、と手を引かれ、彼は大人しく従った。

     何にしよっかな、と顎に指を添え考え込むヴィエラを横目に、ルガディンはさらさらと筆を走らせた。何にしたの?と覗き込んだ彼女が見やすいよう彼は用紙の向きを変える。
    「『ここにある皆の願いが叶うように』?」
     読み上げられた願い事に彼は頷き、人目につきづらい植物の高いところに結んだ。良い事書くじゃん、と笑った彼女に苦笑する。私も書くぞぅと筆に墨を含ませ、彼女は用紙に向き直った。
    「あ」
     ぼたり、と墨が落ちた用紙をしばらく眺め、彼を見つめてくる。微かに萎れた彼女の耳にまた苦笑して頷いた彼が、先程の町人に声をかけに行った。快く新しい用紙を差し出してくれた町人に礼を伝え、彼女の元に戻る。汚れた方と交換して、改めて願い事に向き直る彼女に目を細めた。真剣な横顔から手元の用紙へと視線を移し、彼はまた筆に手を伸ばす。
    「はいコレ」
     自分の分も提げてほしいと言わんばかりに差し出された用紙を受け取り、書かれた内容を見ないように注意しながら高い位置へと結んだ。
    「ん?」
     それに紛れて彼がもう一つ、見覚えのあるシミがついた用紙を吊るしたのを彼女は見逃さなかった。何か言いたげに顔を覗き込んでくる彼女に折れた彼が、小さな溜息と共に取り外した用紙を渡してくる。
    「『永く一緒にいられますように』」
      シミよりも小さな字で書かれた彼の願いを読み上げた彼女はにんまりと頬を緩めた。後でこっそり提げておけば良かった、いやそもそも吊るす必要はなかったと閉眼した彼にねぇ、と声をかける。
    「願う相手が違くない?」
     にまにまと意地悪く弧を描く唇が続ける。
    「てか、無茶して先に逝きそうになるのはディンの方だからね?」
     そこんとこわかってる?と釘を刺してきた彼女に、彼は一瞬丸めた目を細める。善処する、と返したら彼にしないやつだ、と彼女は唇を尖らせた。
    「いいもん、ディンが無茶して早死にしたら皆にコレ見せつけてやるから」
    「長生きするからやめてくれ」
     それだけは勘弁してくれと力なく肩を落とした彼に、どうしよっかなぁ、と彼女は楽しそうに笑った。
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    mitotte_kazu

    PASTヴァレンティオンを満喫している🦍と🐇の短いお話
    贈呈 毎年恒例になりつつある、海都でのヴァレンティオンの催事場巡りに今回も付き合っていた。ヴィエラに付き添っていただけの当初に比べて多少慣れてきたルガディンも、露天を覗き見比べる余裕が出来てくる。
    「これは今年の新作か」
    「そう〜!去年から定番になったこっちも美味しいよ!」
     少しわかってきたと思っていたが、やはり彼女の知識量などには勝てない。真剣な顔で次の店の品定めをする彼女の手から、戦利品の入った紙袋を苦笑しながら受け取った。ありがと、と身軽になった身体で手早く会計をすませる彼女を遠巻きに眺めていた。
    「ここの好き」
     何軒目かを巡っていた時に彼女が呟いた店のチョコレートや包装に見覚えがあった。以前貰ったものだな、と何気なしに視界に入った価格を二度見して、目を剥いてしまう。横に書かれた説明を流し見て、ブランド物のククルビーンを手間暇かけて加工してウルダハで販売している有名店だとようやく把握できた。通りで高価で美味いはずだと1人納得している横で、また真剣な表情で陳列されている商品を吟味している彼女が頷いた。これとこれください、と慣れている彼女の指がチョコレートの上を滑っていく。彼女が選んだ商品が丁寧に包まれていくのを眺めながら、パッケージまで可愛いな、などと思った。
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