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    mitotte_kazu

    @mitotte_kazu

    自機ルガオスとエタバン相手のヴィエラとかよそよその話とかNPCよその話とか置いとく場所。
    リアクションとても嬉しいですありがとうございます

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    mitotte_kazu

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    ナマコさん(@namakomesi)から素敵なお題を頂いたので勝手なイメージで書き上げた🦍と🐇さんのお話

    #ディンエラ

    たなごころのうえ ヴィエラに呼び出されたのはいつもの喫茶店だった。定番となったメニューとドリンクを前に、他愛のない話に花を咲かせる。
    「そういえば、何の用事だったんだ?」
     どちらともなく話が途切れ珈琲で口を潤し、忘れない内にとルガディンが彼女に尋ねた。両手で持っていたカップを卓上に置き、悪戯っぽく彼女が口角を上げる。薄々嫌な予感がしてきたが特に予定もなかったので、温くなった珈琲をもう一口飲みつつ彼女の返答を待った。しなやかな指を絡めた手を顎の下に添え、卓上に肘を突いた彼女が歌うように呟く。
    「どうしよっかなぁ」
     悩んでいる表情すら様になっている彼女からカップの中に視線を向ける。考える猶予のためにもう少しゆっくり飲んだ方がいいかな、などと思いながら、彼も一度カップを卓上に置いた。

     特に目的もなく喫茶店付近を散策するかという結論に至った二人は、会計を終え店を出た。まずは近場の、と化粧品が充実したマーケットの一角に向かう。華やかな雰囲気と女性が多い客層にルガディンが一瞬たじろいだ。近くで待っていた方が邪魔にならないのでは、と思った瞬間ヴィエラに手を引かれる。反射的にそちらに目を向けると楽しそうに微笑みかけてきた彼女がすぐさま店頭の化粧品に目を奪われていた。複数の店を周りヘアオイルに化粧水、マッサージ用のクリームなどを眺める。効果がどうとか香りについてなど談笑しながら品定めをする時間は割と楽しかった。クリームを眺めていると試しにどうぞ、と店員に声をかけられる。よろしくお願いしま〜す、と和かに応じる彼女を見送ろうとすると、
    「よろしければ、ご一緒にどうぞ」
     マニュアルに記載されているのだろうか、彼に向き直った店員が彼女の横を手で示してきた。逡巡するも店員や彼女を待たせる訳にもいかず、大人しく応じる事にする。
     種族に応じた適量を手の甲に絞り出されたクリームを指先で塗り広げていく。ふわりと強すぎない程度に花や果実の様な香りが広がった。使用されている植物や成分について流暢に店員が説明をしてくれる。
    「‪クリーム自体はいつでも取り扱っているのですが、この香りは今だけの、期間限定なんですよ」
     季節に応じたフレーバーを用意するのは大変だろうが、やはり売り上げなどが違うのだろう。隣で手を鼻先に近付けて良い香り、と頬を緩めた彼女を横目に考えた。説明は定番のものや次回のフレーバーからハンドマッサージの方法に移る。単純にハンドクリームとしても使えるらしいが、少し緩めのテクスチャーで伸びの良さから手以外のマッサージにも使えるとのことだった。
    「特に冒険者の方は、戦闘などでお疲れだと思いますので……」
     これ一本で全身のマッサージが捗るらしく、お得な大容量ボトルもあるらしい。止まることを知らない店員のセールストークに圧倒されつつも、確かに滑らかでベタつきも少なく、良い品なのは確かな様だった。美白効果もあるんですよ、と付け足した店員がマッサージを終えた2人の手に視線を向ける。
    「お客様!透明感がすごく増してますね!」
     店員の褒め言葉にはにかんだ彼女がいいなぁ、と小さく呟いた。彼女も気に入ったようだしマッサージにも使えるから一つ買っておくか、と店員に声をかける。流れる様に大容量のボトルがお得だと勧められ、そう言われたらそちらを買った方がいいのかと困惑していると、
    「小さいのでお願いします。荷物が嵩張っちゃうので……」
     彼女が助け船を出してくれた。他人を傷つけない、自分には出来ない返答がさらりと出てくる彼女に思わず見惚れてしまった。めちゃくちゃ気に入った香りなんでいっぱい使いたいんですけど、と悔しそうに手を握っていた。
    「なくなったら、今度は違う香りのを買いに来ればいいだろう」
     悔しそうな彼女にそう声をかけてから、商品を手渡してきた店員にその際はまたお願いしますと伝えると和かに頷かれた。

     可愛らしいサイズとデザインの紙袋で包装され手渡されたクリームを、頬を緩めて見つめるヴィエラを眺めていた。大事に使うね、とはにかんだ彼女に遠慮なく使ってくれ、と返す。
    「定番の、柑橘系の香りのも気になったから」
    「無くなったらまた買いに行こうね」
     もっと上手い返答があるだろうにと思っている内に、意図を汲んだ彼女が微笑みかけてきた。叶わないなと苦笑して頷いて応えれば、彼女の視線は次の商品へと向けられる。艶出しかくすみ消しか彼にはわからないパウダー類を眺める彼女の手から可愛らしい紙袋を取り上げた。
    「手が空いてる方が見やすいだろう」
     引っ張られた感触にこちらを見てきた彼女へ、そう声をかけると一度目を瞬かせてからありがと、と微笑まれた。楽しそうに手の甲にパウダーを乗せその違いを真剣な表情で吟味する彼女の横顔と商品を交互に眺めながら付き添う。微かに輝きや白さが増したように見える彼女の手を見てとりあえずすごいものだと雑な認識をしていると、服の裾を引かれた。満足したのか服の裾から手を離した彼女が客足の増えてきた店を後にする。
    「良かったのか?」
     確認するとまだあるからねぇ、と返された。
    「見てると欲しくなっちゃう」
     唇を尖らせそう呟いた彼女にそれなら仕方ないかと納得する。

    「他に行きたい所は?」
     人混みから外れた場所でルガディンがヴィエラに確認すると、顎に手を添えたヴィエラが少し考え込む。特にないかなぁ、と間伸びしてしばらく2人で見つめ合った。
    「ちょっと疲れちゃったし、カフェで一休みしてから帰る?」
     彼女に言われ、商品を眺め歩いている間には無自覚だった倦怠感に気付く。苦笑しながら頷き答えるとどこがいいかな、と真剣な表情の彼女は顎に手を添え近場の休憩所を思い出してくれていた。
    「パンケーキ、はこないだ別のとこで食べたし……あそこの期間限定のメニューはどうかな……」
     考えつつ呟いている彼女の前で出来ることなど何もなく、手持ち無沙汰に手の中の小包を握り直す。ぼんやりと眺めていた喧騒の中ですごいボリュームだったね、との呟きを拾った。気になったのでそちらに顔を向けると冒険者らしき二人組が苦笑しながらサンドイッチについて談笑していた。
    「中にベーコンとローストドードーは予想してなかった……!」
    「でもそれにフルーツソースが合ってたな。あれ何のフルーツだったんだ?」

     自然と耳に届く大きさになるぐらい興奮していて、相当な食べ応えを予想させられた。その具材だとクラブハウスサンドか、などと予想してながらルガディンは耳を傾ける。冒険者達の会話に出てきた店名らしき名称を探して見ると、マーケットを抜けた辺りで看板を見付けた。あそこだろうか、と店の前の立て看板を凝視していると、
    「ねぇディン。お腹空いてる?」
     隣のヴィエラに不意打ちのように尋ねられ、咄嗟に返答できずそっちは?と尋ね返してしまう。質問で返されて一度瞬かせた目を細めた彼女はにっこりと微笑んで、結構空いてるかも、と答えてきた。
    「前にモモディさんから教えてもらった、美味しいサンドイッチを出すお店がこの辺にあるらしくって、」
     もしやと思って店名を聞くと、手帳を取り出しメモしていた店名を教えてくれた。予想通りの展開に苦笑しながらあっちの方か?と件の店を指差すと、知ってたの?と目を丸くされる。
    「じゃあ、エスコートしてもらお」
     ディンが知ってるなんて珍しい、と意地悪く笑った彼女が手を差し出してきた。だろうなとまた苦笑して彼女のしなやかな手を柔らかく引く。
    「今知った」
     喧騒に紛れる程度の声で小さく付け足しながら、名も知らぬ冒険者達に心の中で礼を述べた。
     
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    mitotte_kazu

    PASTヴァレンティオンを満喫している🦍と🐇の短いお話
    贈呈 毎年恒例になりつつある、海都でのヴァレンティオンの催事場巡りに今回も付き合っていた。ヴィエラに付き添っていただけの当初に比べて多少慣れてきたルガディンも、露天を覗き見比べる余裕が出来てくる。
    「これは今年の新作か」
    「そう〜!去年から定番になったこっちも美味しいよ!」
     少しわかってきたと思っていたが、やはり彼女の知識量などには勝てない。真剣な顔で次の店の品定めをする彼女の手から、戦利品の入った紙袋を苦笑しながら受け取った。ありがと、と身軽になった身体で手早く会計をすませる彼女を遠巻きに眺めていた。
    「ここの好き」
     何軒目かを巡っていた時に彼女が呟いた店のチョコレートや包装に見覚えがあった。以前貰ったものだな、と何気なしに視界に入った価格を二度見して、目を剥いてしまう。横に書かれた説明を流し見て、ブランド物のククルビーンを手間暇かけて加工してウルダハで販売している有名店だとようやく把握できた。通りで高価で美味いはずだと1人納得している横で、また真剣な表情で陳列されている商品を吟味している彼女が頷いた。これとこれください、と慣れている彼女の指がチョコレートの上を滑っていく。彼女が選んだ商品が丁寧に包まれていくのを眺めながら、パッケージまで可愛いな、などと思った。
    805

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    mitotte_kazu

    PASTバレンタインなのでチョコ渡す🐇さんとチョコ食べる🦍の短い話
    片割 この海の街にもイベントの余波が来ているようで、浮ついた雰囲気が漂っていた。幸せそうな人を見るのは嫌いではないが、この空気の中独り歩くルガディンはどこか居た堪れなさを感じていた。
    それでもイベントのおかげで普段ならあまり手を出さないようなチョコレートが並んでいる店頭を眺めるのは楽しいものだった。買ったところで勿体なくて食べられないのは目に見えているし、貧相な自身の舌はどれを食べても美味しく感じるのだろう。折角だからと思いつつ平凡な板チョコレートを手に取る。と、掌からチョコレートが消えた。目線を掌から上げるとルガディンから取り上げたチョコレートを興味深そうに眺めるヴィエラがいた。

    「買うの?」
     握ったチョコレートをひらひら翳しながらヴィエラが首を傾げた。まぁ、とルガディンが頷くとふぅんと数回頷いた彼女がそれを棚に戻す。買うと言ってるのに、と棚のチョコレートに伸ばされた彼の手をヴィエラの手が掴んだ。ルガディンが何なんだと困惑している間に人気の少ない通りまで引っ張り出される。されるがままだったルガディンの離された掌にちょこんと小箱が載せられた。どこか見覚えのあるデザインの小箱をしばらく眺めてから、目の前のヴィエラに視線を向ける。にんまりと意味深に笑った彼女が覚えてる?と首を傾げた。ルガディンが数回頷いて開けても良いか了承を得ると、勿論、と微笑まれた。
    903

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