9月26日(2日目)9月26日(2日目)
3時、彼の在る空間へテレポーテーションし、完全に転移しないまま様子を観察してみる。この状態であれば、竜大公ほどの強大な吸血鬼でもない限り、私の存在がバレることはない。
無論彼も例外でなく、私が見ているとも知らずに、鉄格子を破り開こうと力を込めていた。希望を持って、それを実行する姿は美しい。そして、それが叶わなかった時の姿は一層美しいものだ。放っておくことにした。
8時、座ったまま眠っている。用意しておいたブランケットは使用していない。試しに空間に存在を確定させ、姿を現してみる。すると、直ぐに反応し目を見開いていた。常に気を張っているようだ。再びスッと姿を消すと、私の居た方向をしばらく睨みつけていた。
フードボウルはひっくり返され、灰色の床に紅が広がっている。採れたての処女の血液だというのに、勿体無い。
16時、既に起きていた。今度は能力を出そうと滑稽な動作を繰り返している。碌に眠れていないだろうに、無駄な足掻きを続けて、哀れで可愛らしい。
「おい。」
牢の外へ姿を現して観察していると、話しかけてきた。
「奴隷にするだのとほざいていたが、何もして来ないのか?」
不敵な笑みを浮かべて、彼は言った。私は誠実に答えた。
「今はその笑みを堪能していたいのですよ。いずれ見られなくなりますからね。」
彼は私の言葉を鼻で嗤い、また無駄な足掻きを始めた。
今日はその様をずっと観察していた。22時、疲労の見えてきた彼を労う為、新鮮な血液の入ったフードボウルを床に置いた。蹴飛ばされた。